「本と旅には支出惜しまず」お金に強い子供の育て方
ファイナンシャルプランナー 清水香さん

日経マネー連載
2020/5/14 2:00
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独立系ファイナンシャルプランナー(FP)が集う「生活設計塾クルー」の取締役を務める清水香さん。これまで多くの相談者のお金にまつわる悩みを聞き、解決を手助けしてきた。生活設計やマネープランニングの知識を豊富に持つ清水さん流のお金教育は、どういうものなのか。

清水香(しみず・かおり)学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。日々、相談業務に取り組む。『どんな災害でもお金とくらしを守る』(小学館クリエイティブ)など著書多数。執筆・講演なども幅広く展開し、TV出演も多数。FP&社会福祉士事務所Office Shimizu代表。

清水香(しみず・かおり)学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。日々、相談業務に取り組む。『どんな災害でもお金とくらしを守る』(小学館クリエイティブ)など著書多数。執筆・講演なども幅広く展開し、TV出演も多数。FP&社会福祉士事務所Office Shimizu代表。

――大学生の息子さんがいらっしゃるそうですね。

この春から大学2年生です。息子が幼かった頃は「育て上げなければ」という気持ちが強く必死でしたが、子供が大きくなりだいぶ気が楽になりました。学費を払うのも残り約3年です。

――教育にはどのくらいお金をかけてきましたか。

あまりお金をかけてこなかったと思います。息子は小学校から高校まで公立校に通わせましたし、塾にもほとんど行かせていません。

ただ、本は惜しみなく買ってあげると決めています。我が家では本に関してだけ、おねだりの上限なし。大学生になった今でもそうです。せっかく買ってあげたのに「積ん読」になることも多いですけれど、それでも「読書を応援する」という子育てポリシーは貫くつもりです。

■FPの母流、お小遣い制度

――お小遣いはあげていますか。

大学生になった時から、あげていません。それまでのお小遣いは基本給+労働対価のスタイルで、社会の仕組みを一足先に経験させました。

高校生の時の基本給は1万円。労働対価はお手伝い量に応じて渡します。例えばごみ出しをすれば100円、といった具合です。夕飯作りの賃金は500円と割高でした。理由は、料理は息子には難しいことだから。難易度の高い仕事にはそれだけ付加価値が付くのだよ、ということです。

――FPならではのお小遣い制度ですね。

せっかく親が職業柄お金の知識を持っているので、ある程度は生かしたいなと思っています。お金にまつわる新しい制度ができたら息子に説明しますし、クーリングオフの方法を教えたことも。数多くの金銭トラブルを見ているので、「お金の貸し借りは絶対にするな」とも言っています。とはいえ、たまに友人同士で貸し借りをしているようですが。

ただ、親として気を付けているのが、「知識」は与えるけれど「価値観」は押し付けないということ。「親の持っている価値観は絶対じゃない」と常に伝えてきました。

■旅には一生ものの価値がある

――子供は、親とは違う価値観を持ってもいいのだと。

多様な価値観を体験させるため、旅行にはお金を使いました。海外は8カ国以上は訪れたと思います。

9年前、小笠原諸島に1週間滞在したのも貴重な経験でした。父島に物資が運ばれてくるのは、週に1度ぐらい。到着した時は店頭にみっちり並んでいた商品たちが、1週間ほどたつとすっかりなくなっているのです。物がたくさんあるのが当たり前ではない世界に、息子は驚きの顔。島から帰った時は私も、「世の中には物が多過ぎる、こんなに要らないのではないか」と感じたほどです。

旅には、お金をかけた以上に得られるものがあります。そういえば忘れられないエピソードがあります。

万里の長城を訪れた際、現地で中国人の大学生と知り合い、一緒に観光していました。その際入った土産物店でぼったくりの高値を付けられたことがあって。店員が、私たちが日本人だと気付いたためです。私は息子が欲しがっていた商品を棚に戻し、仕方なく店を去りました。すると同行していた大学生たちがその店に戻り、何やらやりとりをしているのです。

何事かと思いましたが、そのうちの1人の手には先ほど断念した商品が。「私たちは中国人だから安く買えたの。プレゼントだよ」と言ってそのまま土産をくれました。

――胸が熱くなるエピソードですね。

息子もあの出来事から自分なりに何か感じ取ってくれたと思います。

彼は今ではすっかり旅好きの大学生。昨年の夏は中米縦断旅行、冬は東南アジア旅行と、新型コロナの感染拡大前までほとんど日本にいない状態でした。

――息子さんが旅に出ている間、心配ではないのですか?

最初は心配しましたが、親も慣れるものですよ(笑)。息子が旅行を重ねるうちに、メンタルが鍛えられるというか。「また旅行? そう、行ってらっしゃい!」ぐらいの気持ちです。最近は旅動画をYouTubeにあげる活動もしていて、応援しています。

■長年ためてきたお金を動画制作につぎ込む

――動画の制作には少なからずコストがかかります。

そうなんです。実は息子が大学に入学した際にそこそこまとまった金額のお金を渡したのですが、ちょうど1年でなくなってしまいました。そのお金は、今まで頂いたお祝い金やお年玉などを長年ためてきたもの。高校生まではとても堅実なお金使いをする子でしたから、使い切ったと聞いてびっくりしました。「一体どういうこと!?」と。

旅費や機材の購入などに使っていたと知って、「これも自己投資の一種なのかな」と考えました。

「貯蓄はあった方が将来のためになる」と口酸っぱく言ってきましたが、それでもお金がなくなった時には稼げばいいのです。働くなり何なり、手段はいくらでもあります。

一方、経験はなくならず一生ものの財産になるはず。それは私が息子と数々の旅行をして実感しました。彼が自分の経験にお金を投じているのであれば、温かく見守ろうと思います。

■大災害時代を生き抜く力をつける

――お金のプロとして、そして母として至った結論ですね。

自己投資として旅を選んでくれたのはうれしいです。バックパック1つで知らない土地を訪れたり、友達とボロボロの安宿に泊まったり。そうした経験は、「どこでも生きていける」という自信を与えてくれるはず。これからの時代を生きていく上で、その自信は大きな心の支えになってくれます。

仕事柄、災害補償について考えることが多いのですが、近年は深刻な自然災害が増えています。

1959年の伊勢湾台風から1995年の阪神大震災が起こるまでの36年間は、大きな災害が比較的少なかった時代でした。しかし現在は、大規模な地震や風水害などが各地で起きている。異常気象なども影響しているのでしょう。息子が生きる未来は、今よりももっと自然災害が増えるかもしれません。それは誰にも予想できないことです。

だから「何かあった時も柔軟に生活を変化させられるようにしておくといい」と伝えています。100%安定した仕事なんてありませんから、仕事も世間で良しとされているものにこだわらなくていい。本人もそのように思っているみたいで、最近はむしろ「会社勤めすることも一つの冒険だよ」と言っているほどです。

――将来どんな生き方を選択するのか楽しみです。 

とにかく親の価値観には振り回されず生きてほしいです。親と子は別の人格ですから。そう強く思って育ててきたからか、息子は私のことを親というより「兄貴」と思っている感じがします。姉……というよりは兄ですね(笑)。

(大松佳代)

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