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米雇用悪化、「大恐慌型」か「ボルカー型」か

(更新)

【ワシントン=河浪武史】4月の米雇用統計は失業率が14.7%と大恐慌以来の水準となり、新型コロナウイルスによる就労環境の悪化が鮮明になった。ただ、失業者の大半は「一時的な解雇」で、経済が再開すれば早期の職場復帰も可能だ。10年間にわたって失業率が高止まりした大恐慌時と異なり、雇用の回復が比較的早かった1980年代の「ボルカー不況」に近いと指摘される。

8日のダウ工業株30種平均は前日終値比455ドルも上昇して終えた。同日朝に発表された4月の失業率は、戦後最悪とはいえ市場の予測並みで、投資家の動揺を呼ぶことはなかった。むしろ好材料とすら受け止められたのは、普段は注目されない雇用統計内にある「失業の理由」だ。

失業者数は3月の710万人から2300万人へと一気に増えた。ただ、失業者のうち「恒久的な解雇」は11%にすぎず、78%は「一時的な解雇」だった。08~09年の金融危機時は、逆に「一時解雇」が10%前後にすぎず、50%前後が「恒久解雇」と圧倒的に多数だった。統計をさらに遡ってみても「一時解雇」の割合は、新型コロナの発生前は1975年6月の24%が最大だ。

米産業界は景気悪化時に、労働者を一時的に解雇したり帰休させたりするレイオフをよく用いる。雇用そのものを景気の調整弁に使う一方で、企業自体は固定費を削れるため存続しやすくなる。雇用統計上の「一時的な解雇」も恒久的な失職ではなく、景気回復時には失業者が早期に元の職場に復帰できる可能性があることを示す。

4月は就業者数が2050万人も減少したが、時給労働者らが多い飲食業が500万人減と最も影響が大きい。小売業も200万人減と大幅なマイナスとなった。両産業とも新型コロナで通常営業ができない状態が続いており、経済活動が再開すれば一時解雇した労働者を段階的に呼び戻す可能性がある。

1929年に始まった大恐慌は、10年間にわたって失業率が10%を超え続けるなど、雇用の回復がまったく進まなかった。2008年のリーマン・ショック時も、失業率が危機前の水準に戻るまで7年かかっている。ただ、今回は失業率が5月に15%を超すとみられるものの、米ゴールドマン・サックスが10~12月期には再び10%を切ると予測するなどピークは早いとの見方が強い。

過去の雇用悪化局面と比較すると、1980年前半の「ボルカー・ショック」に近いとの見方がある。インフレ退治のため、米連邦準備理事会(FRB)のボルカー議長(当時)が急激な金融引き締めを断行し、82年には失業率が10%を超えた。ただ、同年に金融緩和に転じると失業率は2~3年で危機前の水準に戻った。今回のコロナ危機と同じく、人為的に経済を引き締めた「政策ショック」である点が似る。

ただ、4月の雇用統計を深くみると、14.7%という失業率以上に労働環境が悪化しているとの指摘もある。今回の統計は「理由不明の休職者」を失業から除外しているが、米労働省はこの人口を加算すると「失業率はさらに5%も上昇する」と注記した。職探しを諦めて労働市場から退出した人口も加えれば、実質的な失業率は20%を大きく超える。

戦後最悪となった雇用の悪化に早期に歯止めがかかるかは、新型コロナを収束できるかにかかっている。全米レストラン協会によると、飲食店の4割は休業中で、全体の6割は6カ月後も雇用水準は1年前の水準に戻らないと悲観視する。雇用の受け皿が想定通りに確保できなければ「一時的な解雇」もいずれ恒久的な失業になりかねない。

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