日鉄、プラザ合意並みの能力3割減 高炉2基も一時休止

2020/5/8 22:09
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自動車向けの需要が急速に減少している(北海道室蘭市にある室蘭製鉄所の高炉)

自動車向けの需要が急速に減少している(北海道室蘭市にある室蘭製鉄所の高炉)

日本製鉄の苦境が鮮明だ。新型コロナウイルスの感染拡大で主力の自動車向けなどの鋼材需要が国内外で急減。8日、室蘭製鉄所(北海道室蘭市)など新たに2基の高炉の一時休止を発表し、新型コロナの影響で一時休止を決めた高炉は計5基となった。国内の粗鋼生産能力は一時的とはいえ3割減り、1985年のプラザ合意後の鉄鋼不況を受けた能力削減に匹敵する。新型コロナの影響が長期化すれば一段の対応を迫られかねない。

「本来、伸びるはずの需要も期待できない。未曽有の危機だ」。日鉄が8日、電話形式で開いた2020年3月期の決算説明会で、橋本英二社長は重い口調で語った。

同日発表した20年3月期の最終損益(国際会計基準)は4315億円の赤字(前の期は2511億円の黒字)。赤字額は過去最大だ。世界景気の減速や2月に発表した製鉄所の閉鎖などの合理化による減損が大きい。

新型コロナで今後の鋼材需要の算定が不可能だとし、21年3月期の業績予想は見送った。構造改革の効果で今期は黒字化を見込んできたが、コロナ禍で達成は遠のいた。

日鉄は4月以降、東日本製鉄所鹿島地区(茨城県鹿嶋市)など国内3基の一時休止を決めたが、今回は新たに2基を追加。今夏に改修予定の室蘭製鉄所の高炉と、9月末までに恒久的な休止を決めていた九州製鉄所八幡地区(小倉)の高炉の休止をそれぞれ前倒しし、7月上旬から順次、一時休止する。

構造改革の一環で閉鎖を決めている瀬戸内製鉄所呉地区(広島県呉市)の高炉も含め、国内で一時休止する高炉は15基中6基となる。日鉄のグループ粗鋼生産能力は約5400万トンで、粗鋼生産能力を一時的に3割減らす計算になる。08年のリーマン・ショック後に一時休止したのは2基だけで、今回はより深刻だ。

業界では「一時休止」は再稼働が可能な状態で高炉を止めることを、「休止」は恒久的に停止することを指す。橋本社長は「結果的にそのまま休止せざるを得ない設備もある」と語り、さらなる合理化をにおわせた。

国内の鉄鋼大手は85年のプラザ合意後の円高不況で大規模な合理化を実施。日鉄(当時は新日本製鉄)は87年から国内で5基の高炉を休止し、生産能力を恒久的に3割減らした。新型コロナによる需要減少が長期化すれば、当時のような恒久的な合理化へのシフトを迫られる可能性もある。

日鉄など国内の高炉大手は、足元で生産量の6割が自動車など製造業向け。高性能な鋼板や部品向けの特殊鋼が主力だ。大口顧客である自動車メーカーの海外展開に伴い、輸出比率も4割近くまで高まっていた。

だが新型コロナの感染拡大で、トヨタ自動車など大手が相次いで生産を停止。国内では5月も約30カ所の自動車工場が稼働を停止する見通しだ。

国内の19年度の粗鋼生産量は10年ぶりに1億トンを割り込み、9863万トン程度となったもよう。橋本社長は20年度について「新型コロナが9月末までに収束しても8千万トンを下回るだろう」と悲観的な見方を示した。

さらに先行きを難しくしているのが、世界最大の鉄鋼の生産国である中国の動向だ。米中貿易戦争以降、中国は景気刺激策で鉄を増産。市況への影響力が高い中国の増産により、鉄鉱石など原材料の価格が19年後半から高い状態が続いた。

中国は新型コロナの影響で一時的に生産を減らしたが、足元で回復に転じている。橋本社長は「中国の相対的な優位性がさらに高まる」と警戒する。世界の鋼材需要が減るなか、「原料高・市況安」が続けば鉄鋼各社の収益は悪化が続く。

日鉄やJFEスチールなど大手は今年初めから、内需や輸出の縮小を見据えた合理化策を相次ぎ表明していた。だが株式市場からは「生産能力の削減前倒しや追加的なコスト削減策が必要だ。業界再編も有効な手段となる」(野村証券の松本裕司氏)など合理化の前倒しを求める声も上がる。

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