米、失業率は大恐慌以来の水準に
【ワシントン=河浪武史】新型コロナウイルスの猛威で、米経済は雇用危機に突入しつつある。低水準にとどまる企業倒産がさらに増えれば、経済復元の前提である雇用の受け皿を失いかねない。トランプ政権はインフラ投資や大型減税など、さらなる追加経済対策の検討に着手する。
2008~09年の金融危機時は、証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻から失業率が10%に達するまで1年かかった。今回はコロナ危機が深刻になって1カ月で2桁に到達。就業者は約2000万人減って1億3340万人に縮小し、金融危機後の10年で積み上げた雇用の増加分を、1カ月で失った計算になる。
失業率は戦後最悪となり、全米経済研究所のデータでは、大恐慌直後で10%台半ばだった1940年の水準まで悪化した。29年に始まった大恐慌は3%だった失業率が4年かかって25%まで悪化した。10%を下回ったのは41年になってからだ。
米政権の雇用下支え策や経済活動の一部再開でゴールドマン・サックスは早くも「都市封鎖のピークは越えた」と判断する。失業率は7~9月期が最悪期で、2021年には再び10%を下回ると予測する。大恐慌時のような失業率の高止まりは基本シナリオではない。
前提は雇用の受け皿となる企業倒産の回避だ。4月の倒産件数は約3万8400件と前年同月比46%も減少した。米経済は労働者にレイオフ(一時解雇)などを強いて雇用を景気の調整弁とする一方、企業は存続しやすい。労働者を手放しつつ、コロナ危機を短期で脱せると期待し、政府の経済対策などで資金をつないでいる状態だ。
ただ感染が再拡大すれば雇用悪化は底が見えなくなる。全500店が営業休止に追い込まれた衣料品チェーンのJクルーは4日、破産法の適用を申請。高級百貨店のニーマン・マーカスも7日に経営破綻した。生活者は人混みを避けるようになり、小売店や飲食店の早期回復は見込みにくい。
「見えない失業」も増えている。労働力人口は3月の1億6300万人から、4月は1億5600万人に減った。職探しを諦めて労働市場から退出した離職者が多いことを示しており、こうした人口は失業率に加算されない。4月の実質的な失業率は20%前後に達するとの指摘もある。
トランプ米政権は雇用の受け皿づくりが急務とみて、インフラ投資や大型減税など追加策の検討に入る。3兆ドル弱の経済対策の柱である中小企業の雇用維持資金も、6月末までの時限措置で、延長が求められそうだ。1930年代の大恐慌は、ルーズベルト米大統領(当時)が途中で緊縮財政に転じ、経済復元が40年代までずれ込んだ。コロナ危機を長期化させないためにも、最大の政策対応が求められる。

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