米ファンド、コロナ後に的 打撃銘柄に巨額投融資

2020/5/7 19:30 (2020/5/8 5:45更新)

ブラックストーンのシュワルツマンCEO(右)は米政権への影響力も大きい=AP

ブラックストーンのシュワルツマンCEO(右)は米政権への影響力も大きい=AP

米大手投資ファンドが新型コロナウイルスの打撃を受けた企業向けの投融資に動き出している。新たに投資に回せる資金は1.5兆ドル(約160兆円)と過去最大になり、政府支援の及ばない企業も視野に入れる。従業員や顧客にも配慮した「ステークホルダー資本主義」が重みを増す市場で、リスクマネーをどう提供するか。ファンドの役割が改めて問われる。

米KKRが6日発表した2020年1~3月期決算は、最終損益が13億ドル弱の赤字(前年同期は7億ドルの黒字)だった。投資先の評価損が膨らんだが、経営陣は強気だ。

スコット・ナトール共同社長は同日、580億ドルの資金を新型コロナで苦戦する企業に投資する計画を明らかにした。2月下旬以降、すでに80億ドルを投融資しており、「割安銘柄」リストも作成しているという。

他のファンドも攻めの姿勢を鮮明にする。シリコンバレーを代表する大手投資ファンドのシルバーレイクは4月、民泊仲介大手エアビーアンドビーに投資すると発表した。他のファンドと合わせた金額は計10億ドルだ。

エアビーは企業価値が10億ドル以上の未上場企業「ユニコーン」の一角。20年に新規株式公開(IPO)するとの見方が有力だったが、新型コロナの影響で延期するとの観測が出ていた。宿泊キャンセルの急増で資金繰りが悪化しており、シルバーレイクが救済に乗り出した格好だ。

シルバーレイクのイーゴン・ダーバン共同最高経営責任者(CEO)は「接客業にとって厳しい環境だが、エアビーの強固で柔軟な事業モデルは市場の回復期には大きな恩恵を受ける」と期待する。4月下旬、アポロ・グローバル・マネジメントと共同で、オンライン旅行会社エクスペディアにも総額12億ドル出資した。客数が激減する旅行ビジネスの資金繰りを改善させる。

ブラックストーン・グループは2年間にわたる資金調達をこのほど締め切り、総額2600億ドルを投資家から集めた。未投資の資金は1500億ドルに達し、「投資ファンド業界では最大だ」(スティーブン・シュワルツマンCEO)。同社幹部は20年1~3月期の決算発表時に、歴史的な市場の混乱を投資の好機にすると述べた。

カーライル・グループはまだ投資していない資金が750億ドルあり、新型コロナで打撃を受ける航空業界に10億ドルを投資する用意があると表明した。

財務に余力のある投資銀行や政府系ファンドも投資の機会をうかがう。

ゴールドマン・サックスは企業投資ファンドを新たに設立すると報じられた。規模は最大100億ドルだ。「資金を求める企業の長いリストができており、解決策を提案したい」と投資部門責任者のジュリアン・サリスベリー氏は米メディアに語った。JPモルガン・チェースも債券や不動産などに投資する最大100億ドルのファンドを準備中という。

サウジアラビア政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を保有する米カーニバルの株式を取得した。アブダビ政府系のムバダラ・インベストメントなども投資の準備を進めており、投資先候補リストが作られているという。

投資ファンドなどがコロナ危機を投資の好機とみているのは、08年のリーマン・ショックの際の成功体験があるためだ。安値で投資した案件がその後の市場回復で大きなリターンを生み出した。今回も同様の収益が狙えるのか。英調査会社プレキンは18~19年設立のファンドは、それ以前のものよりも高いリターンを得られると予想する。

コロナショックは金融危機以上に実体経済への影響が大きく、投資先の収益の回復に時間がかかるとの見方もある。厳しいロックダウン(都市封鎖)が解除されても当面は感染が再拡大するリスクは消えず、企業活動も一定の制約が避けられない。各国の国内総生産(GDP)が四半期で以前の水準に戻るのも1~2年先との声がある。

それだけに企業の資金需要は未曽有の水準になっているともいえる。雇用維持などを狙った各国の補助金などは申請が殺到し、瞬間的に蒸発するような状況だ。ウイルスとの持久戦は公的支援だけでは続かない。

潜在的な成長力を持つ企業が危機を乗り越えられるよう資金面で支え、利益偏重ではなくステークホルダーの期待にも応える。投資ファンドの役割がどう拡大するかによって、コロナ後の資本主義の形も変わる可能性がある。(ニューヨーク=伴百江、和田大蔵)

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