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民族スポーツ、多様な伝統映す 天理参考館が特別展

文化の風

スポーツの多くは狩猟や遊戯など日々の暮らしに端を発し、地域ごとに様々な展開を遂げてきた。その多様性と背景にある精神文化を探る特別展「スポーツの歴史と文化」を天理大学付属天理参考館(奈良県天理市)が6月10日から開催する予定だ。

タイのムエタイ、モンゴルの相撲など世界各地の民族スポーツも紹介している

生活や儀式源流

同館は、天理教の海外布教に向けて諸国の慣習や歴史についての知見を深めるため戦前に設けられた博物館で、現在収蔵している生活文化資料や考古美術資料は約30万点に上る。創立90周年を記念する今回の特別展は、収蔵品を軸に計約120点を紹介する。会期は8月2日まで。

早坂文吉学芸員は「スポーツの源流をたどると各地の伝統的な生活に行き着く。神話に関わるものも少なくない。今回は民族の伝統に根ざしていたり各地域に古くから伝わっている、いわゆる『民族スポーツ』にスポットを当てた。こうしたテーマの展覧会は珍しいのでは」と語る。

展示は3部構成。第1部「何のために戦う、走る」と第2部「楽しむ」は狩猟や儀礼、舞踏といった、後にスポーツへと発展した生活行動や文化を探る。第3部「競う」は現在も行われている民族スポーツを中心に紹介する。

北米先住民のラクロスのボール、ラケット(アメリカ、チェロキー 20世紀後半)=天理参考館提供

まず目に付くのは南アフリカ・ズールーの人々の盾。キリンの皮製で、軍事訓練と通過儀礼を兼ねて行う棒術「ングニ」で用いる。ラクロスのラケットとボールは北米の先住民チェロキーのもの。もともとは人と神とが交わる儀式やグループ間の紛争を平和的に解決する際に行われており、フランス系移民がスポーツとして整えたという。

男女結ぶ球技

「約婚球戯」のボール(中国南部・広西チワン族自治区等、20世紀後半)=天理参考館提供  

各地で球技に用いられるボールも色とりどりで興味深い。中国南部からベトナム、タイ、ラオスにかけての山岳地帯で、若い男女が玉を投げ合って結婚相手を決める「約婚球戯」の布製ボールは特にあでやかだ。

五輪にまつわる展示も多い。近代五輪のルーツ、オリュンピア祭は古代ギリシャ四大祭典の一つで他にピューティア祭などが開かれ、勝者にはオリーブや月桂樹(げっけいじゅ)の冠などが与えられた。展示してある金製メダリオンや金製月桂冠は、紀元前に作られた副葬品だ。

スコットランドの「ハイランドゲームズ」やモンゴルの相撲「ハルハ・ブフ」をはじめ民族スポーツは今も各地で盛んに行われている。いずれも、国境を越えて競技されるようになった「国際スポーツ」では希釈されてしまった固有の伝統や文化を体現している。民族のアイデンティティーを醸成するために近年、新たに創り出されたものや、外来の文化が伝統文化と融合して新競技が生まれたものもあるという。

金製月桂冠(ギリシャ、紀元前4世紀頃)=天理参考館提供

天理市に縁のあるスポーツ団体や選手のユニホームや記念品なども紹介する。本来は東京オリンピック・パラリンピックに合わせた特別展だった。五輪はコロナ禍で約1年間お預けになったが、各競技が秘める人類の歩みに考えを巡らす機会としてはどうだろう。

(編集委員 竹内義治)

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