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コロナが変えた生活の「サイズ」

新型コロナウイルスの感染拡大は、地球規模のサプライチェーン(供給網)に甚大な影響をもたらした、といわれる。簡単にいえば、ものづくりの現場で、国をまたにかけた部品や製品、ヒトの往来にひどく支障をきたしているわけである。スマートフォンや自動車など身近な品々に影響は及ぶ。こんな例を筆頭に、未知の感染症との戦いは、私たちが心地よく享受してきた暮らしの「サイズ感」「規模感」のようなものに揺さぶりをかけている。

公園のブランコもテープが巻かれ、遊べなくなっている(4日、埼玉県越谷市)

つい半年前まで、多くの人々が仕事にプライベートに海外へと身軽かつ気軽に旅立っていた。都会の空港はもとより、地方からの便も数多く、格安航空会社の存在も後押しした。

史跡を訪ね、名物料理に舌鼓を打ち、見聞を広め、リフレッシュして帰国する人たちの笑顔がロビーにあふれていた。出入国の手続きも極めて簡単で「国境」を意識することはなかったといってよい。

ところが、コロナの感染拡大は改めて人々に「国家」というものを強烈に意識させたかにみえる。歴史の教科書でしか知らない「鎖国」のような状況があれよという間に生まれた。ウイルスの防圧はおおむね国を単位に施策が進み、連日その優劣が数字で示されている。

外出や移動を罰則付きで取り締まったり、スマホなどを使って移動先の情報を管理したりする国もある。それに比べて日本はどうなのか? いや応なく「自由と規制」について考えをめぐらせた向きもいよう。

国という大ぶりな話を持ち出さなくとも、足元を見れば、県境をまたいだ移動もはばかられる事態となっている。駅や空港で検温したり、訪れた人に不要不急の外出をやめるよう呼びかけるビラを配ったり、といった活動も自治体の担当者らによって行われている。

首長らから「いまは来ないでください」との呼びかけも頻繁に聞いた。少し前までゆるキャラやB級グルメなどを売り物に観光客の呼び込みに余念がなかった姿とは様変わりだ。

スーパーやホームセンターも多人数、長時間の来店を控えるよう呼びかけ、暮らしのサイズ感、規模感はずいぶん縮んで、身のこなしは制約されたものになってしまったのである。

哲学者の東浩紀さんは本紙のインタビューで「移動して直接集まることができれば人は自力で他人とコミュニケーションできる。数ある自由のうち最も根底的なもの」との趣旨のことを述べている。

数多くの県では店舗や施設への休業要請を緩和する動きが出てきた。感染への対策は打ちつつも、徐々にサイズ感を広げていく試みであろう。

グローバルとかボーダーレスという響きに疑いを持たなかった日常を取り戻すには時間がかかりそうだ。身を動かし、意思の自在な疎通の中で、新しい刺激やひらめき、出会いが得られる時を待ち望みたい。

(毛糠秀樹)

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