スペシャル

フォローする

フェデラーの一声 コロナ禍転じてテニス男女統一?

2020/5/7 3:00
保存
共有
印刷
その他

新型コロナウイルスの感染拡大でテニスは約4カ月間、エントリーレベルのITF(国際テニス連盟)サーキットから四大大会まで全大会が中止・延期となった。前代未聞の危機のなか、プロツアーを統括する男子のATP、女子のWTAが共同歩調をとり、かつてないほど"男女仲"が良い。ついに統一団体ができるか?と盛り上がっている。

フェデラーは「男子と女子の団体統一」を提案した(フェデラーのツイッター)

フェデラーは「男子と女子の団体統一」を提案した(フェデラーのツイッター)

始まりは4月22日、ロジャー・フェデラー(スイス)のSNS(交流サイト)上のつぶやきだった。「思うんだけど……今こそ男女のテニスがつながって、1つの団体となるべき時だと考えるのは僕だけかな」

2019年ウィンブルドン選手権女王のシモナ・ハレプ(ルーマニア)、ラファエル・ナダル(スペイン)ら、現役・元選手が次々と賛意を示した。1973年のWTA創設メンバーの一人で、四大大会単複39勝のビリー・ジーン・キング(米国)も「賛成。私は70年代から男女一緒を主張してきた。WTAがそもそも『プランB』。やっと同じ場所に立ててうれしい。実現させよう」。

WTA創設者のビリー・ジーン・キング(中央)は1970年代から男女統一を訴えてきた=ロイター

WTA創設者のビリー・ジーン・キング(中央)は1970年代から男女統一を訴えてきた=ロイター

テニス界ではITFという国際競技団体より、ツアーを統括するATPとWTA、それに全豪、全仏、ウィンブルドン、全米という四大大会の主催者の方が懐豊かで発言力も強かったりする。そのためITFとこの6団体による話し合いで物事が決まるケースが多いのだが、関係が複雑に絡むため共同歩調をとるのには手間がかかる。

コロナ危機を受け、全仏が3月中旬、抜け駆けをするように独断で9月への開催延期を発表した。しかし今回は珍しく、残り6団体が即座に団結し、全仏の決定に対して反発を示した。その後、「大会なしに数カ月も生活を維持できる選手はいない」と訴える世界ランキングの低い選手が続出、急速に協力の輪が広がった。

選手救済・支援の動き相次ぐ

各大会が中止・延期になってから1カ月後の4月27~30日、男女共催のマドリード・オープンがオンラインゲームで行われた。優勝したアンディ・マリー(英国)は賞金4万5000ユーロ(約520万円)を半分ずつ、英国民保険サービス(NHS)と選手救済に寄付した。

ATPとWTAは共同でSNSのプラットフォームを立ち上げた。セリーナ・ウィリアムズ(米国)のコーチ、パトリック・ムラトグルーは所有するアカデミーで大会を行い、オンライン中継して集めた資金を選手支援に使うと言い、同じく名前を冠したアカデミーを持つナダルも「健康管理を徹底した上で、(練習場所がない)プロ選手に施設を開放する。練習、トレーニング、試合をする様子を中継したい」と申し出た。

「世界ランクの低い選手が草の根の部分を支え、テニスの未来を担う。ここを支えなければ、子供たちがプロになることに二の足を踏むかもしれない」とATP選手会長のノバク・ジョコビッチ(セルビア)。フェデラー、ナダルらと話し合い、世界ランクのトップ5は3万ドル(約320万円)、10位までは2万ドル、20位までは1万5000ドル……といった具合に、シングルス世界ランク100位(ダブルスは20位)までの選手が傾斜配分で資金を出し合い、世界250~700位の選手を支援するプランを提案した。そしてついに4月21日、7団体による予算600万ドル以上の「救済プログラム」が発表された。

フェデラーの「男女統一」提案の反響は大きい=ロイター

フェデラーの「男女統一」提案の反響は大きい=ロイター

そんな流れの中でのフェデラーのつぶやきだけに、反響は大きかった。五輪はもちろん、四大大会のうちの3大会も19世紀から男女共催なのに、通常のプロツアーの統括団体だけが別々。多くの人が長い間、違和感を持ちながら、変わらなかった状況にやっと光が当たった。

キングが「プランB」と言ったように、WTA発足は苦肉の策だった。68年、四大大会がプロに開放され、男女の格差が可視化された。オープン化初年のウィンブルドンのシングルス優勝賞金は男子2000ポンドに対し、女子は750ポンド。「観客が女子の試合を見たくないんだから、賞金が低くて当然」と、公然と口にするツアー主催者もいたほどだ。女子の試合は減り、優勝賞金は男子の8分の1ということも。その現状に憤ったキングらが73年に立ち上げたのが、WTAだった。

フェデラーとナダルの賛成が後押し

今や四大大会の優勝賞金はすべて男女同額になった。大会数、選手層、賞金総額に違いはあるものの、ほかのプロスポーツに比べて男女間の賞金格差は断然小さく、男子以上に稼ぐ女子選手も多い。それでも統括団体だけは男女別が続く。

放映権販売、スポンサー獲得などの経営戦略を個々に考え、テニス界として意見を言うときにはまとまりを欠く。ほかのエンターテインメントとの競争が激しくなった今、男女別々でいるデメリットがあらわになってきた。そこに襲ったコロナ禍。鈍かった統一への動きが、一気に加速したようだ。

フェデラー(左)とナダルの10年以上に及ぶライバル関係が、かつてないほどの繁栄をテニス界にもたらした=ロイター

フェデラー(左)とナダルの10年以上に及ぶライバル関係が、かつてないほどの繁栄をテニス界にもたらした=ロイター

ただ、一筋縄ではいかない。「合併すべきでない。ATPの大半の選手に合併、一緒になるメリットについて聞いたのかな?」とつぶやいたのはニック・キリオス(オーストラリア)だ。

近年、スポーツ界全体でプロ選手の年俸・賞金は高額化。その流れに乗り遅れないよう、中国への依存を過度に深めてきたWTAに対し、世界各地でバランスよく大会を開催するATPにとっての合併のメリットはどれほどの大きさか。特に個人スポンサーも少ない中堅以下の男子選手の間では「賞金が減るかも」という不安は根強い。

合併は両団体の正式な議題にはなっていないが、フェデラーとナダルが全面賛成なのは大きい。近年、特に男子テニス界がかつてないほどの繁栄を享受できるのは、華も実力もある2人のおかげなのは誰も否定できない。コロナ禍が過ぎ去った後、「災い転じて男女統一」となっているか。=敬称略

(原真子)

「スポーツ」のツイッターアカウントを開設しました。

スペシャルをMyニュースでまとめ読み
フォローする

保存
共有
印刷
その他

テニスのコラム

電子版トップスポーツトップ

スペシャル 一覧

フォローする
女子ジュニア育成プロジェクトのキャンプで選手と話す伊達さん(中央)と坂井利彰・日本テニス協会普及育成本部副本部長(左)


 8月上旬のイタリア・パレルモでの女子大会を皮切りに、3月から延期になっていたテニスツアーがついに再開した。テニスのオフシーズンは2カ月弱しかないため、皆がそろってこれだけ試合がないのはプロ選手にとっ …続き (8/14)

紅白戦でサーブを打つ高橋(奥)。2月、今年の代表登録選手に高校生で唯一選ばれた(日本バレーボール協会提供)日本バレーボール協会提供


 2021年夏の東京五輪に向けて再始動したバレーボール男子日本代表で、期待の新星が早くも存在感を示している。1月の全日本高校選手権(春高バレー)を制した京都・東山高出身のアタッカー、高橋藍(らん、日体 …続き (8/6)

桃田(右下)は地元香川県の子供たちとオンライン上で交流した(UDN SPORTS提供)UDN SPORTS提供


 新型コロナウイルス感染拡大の影響でスポーツ活動が制限される中、SNS(交流サイト)や動画投稿サイト「ユーチューブ」などオンラインツールを活用して自身の近況を発信したり、ファンと交流したりするアスリー …続き (8/4)

ハイライト・スポーツ

[PR]