/

米ツアー6月再開 観客の視線なき戦い、集中力は

ゴルフジャーナリスト ジム・マッケイブ

まださほど時間がたっているわけではないのに、3月上旬までの日常が、遠い昔に感じられる。後々振り返ればわずかな時間と思えるのかもしれないが、時間に追われる日々を過ごしていたのに、今や時計を見るたび、針が動いておらず、時が止まってしまったかのような錯覚に陥る。

米ゴルフ界も、3月12日に開幕したプレーヤーズ選手権の初日に松山英樹がコースレコードタイの9アンダーをマークして首位に立って以来、時を止めたままだ。

3月のプレーヤーズ選手権で初日首位に立った松山。米ゴルフ界はそこから時を止めたままだ=USA TODAY

本来なら、ゴルフの世界ランキングでトップに返り咲いたロリー・マキロイ(英国)が、マスターズ・トーナメントを制し、ついに生涯グランドスラムを達成するのか。あるいは、昨年10月に日本で開催されたZOZOチャンピオンシップで米ツアー通算82勝をマークし、サム・スニード(米国)の通算勝利記録に並んだタイガー・ウッズ(米国)が、マスターズ・トーナメントで連覇を果たすのか。春先は話題が尽きなかったはずである。

しかし、そんな高揚感は、恐怖と不安に覆いつくされて久しい。それでも先日、ようやく米男子ツアーは再開の道筋を示した。

発表された日程によれば、6月11日にテキサス州のフォートワースで行われるチャールズシュワブ・チャレンジでシーズンを再開し、9月4日からフェデックス・カップ(プレーオフ)の最終戦であるツアー選手権を開催する。2019~20年シーズンの日程としてはここで一区切りだが、その翌週からすぐに来季をスタートし、9月17日から6月に行う予定だった全米オープンを行い、マスターズ・トーナメントはおよそ7カ月遅れの11月12日開幕となった。

日常生活再開へのメッセージに

今季の未消化試合を来季のスケジュールに組み込むというのは異例中の異例だが、いろんな力が働いて、中止できない事情もあるのだろう。

問題は、その通りにことが運ぶのかどうか。再開まで1カ月ちょっとだが、それまでにある程度、新型コロナウイルスの感染拡大が、終息に向かっている――つまり、経済活動が徐々に再開されつつある今の状況が、その流れを止めないことが条件だが、もちろん、状況が悪化することも否定できないのである。そうなったら日程を組み直すしかないが、一足先にシーズンを再開するストックカー・レースのNASCARなどと、日常生活の再開に向けたメッセージを発信するという意義は小さくない。

ラウンド中の選手とキャディーは会話を避けられないが…(3月のアーノルド・パーマー招待でティーショットの順番を待つスコッティ・シェフラー=右)=AP

ゴルフは、コース上での人と人との接触がそもそも少ない。同じ組で回っている選手同士が話すことも、多いわけではない。キャディーと選手の会話は避けられないだろうが、コンタクトスポーツであるバスケットやアイスホッケー、アメリカンフットボールなどと比べれば、はるかに濃厚接触の機会を制限しやすい。

それでも、これから米ツアーが設ける様々な感染予防に関する指針は、後に続くであろう大リーグやプロバスケットボールNBAなど、他の競技団体も注目するところ。当然ながら、スポーツの種類によって対策は異なるわけだが、選手や関係者への検査手法、健康管理、あるいは取材のあり方といったガイドラインは、多くが参考にすることになるはずだ。

選手にマイク、データの解説も

当初は無観客での開催が予定されているが、その点でも注目が集まる。ゴルフ観戦は、野球やバスケットとは質が異なり、静かに時が流れる。それでも観客の視線があるからこそ、選手の集中力が高まり、極限の戦いが生まれるのである。それはどのスポーツにも共通し、唯一の接点となる現場とテレビの向こう側をどうつなぐのか。その取り組みは今まで以上に興味深く、例えば、選手にマイクをつけてもらう、クラブの入射角、ボールの飛び出し角度、ボールの初速といったデータを見せ、それらがどんな意味を持つのかを解説する、というのも一興だ。

ゴルフそのものも変化を求められそう。何かに触るということを極力減らすため、バンカーをならすのは、手袋をはめたボランティアの仕事になるかもしれない。ピンも同様か。キャディーと選手も距離を空けてやり取りを交わすようになるかもしれない。ラウンドの後の握手は、もちろん自粛だろう。

2018年のプレーヤーズ選手権でラウンド後に手を握り合うウッズ(右)とフィル・ミケルソン。ツアー再開後は握手も自粛か=AP

それでも1人の選手がボールを打ち、それを最終的にカップに入れる。それは変わることはない。そもそも1人でラウンドをしようとすれば、それが成立するのがゴルフというシンプルなスポーツなのである。

様々な変化には慣れていくしかないが、いずれにしても今は、コロナ禍終息の兆しが見え、考えられる安全対策をした上で、6月11日の開幕を無事に迎えられるかどうか。ゴルフに関わる人すべての願いが、そこに込められている。

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン