朝ドラ『エール』 人生の荒波を乗り越えていく姿見て
6年ぶりに男性が主人公となる、NHKの連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『エール』。戦前から戦後にかけ、音楽で人々の心を元気づけ、癒やしてきた作曲家・古関裕而とその妻・金子の人生を、大胆に再構成したオリジナル作だ。作品の狙いをプロデューサーに聞いた。

古関は、『栄冠は君に輝く(全国高等学校野球選手権大会の歌)』や『六甲おろし(阪神タイガースの歌)』といったスポーツシーンでおなじみの曲や、映画『モスラ』の劇中歌の『モスラの歌』など、誰もが知る楽曲を数多く生み出した人物。
制作統括の土屋勝裕氏は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年にふさわしく、そして東日本大震災から約9年がたった福島を応援する作品にしたいと考えたという。「題材をリサーチした結果、昭和を代表する作曲家にして『オリンピックマーチ』も手掛けた、福島出身の古関裕而さんに行き着きました」(土屋氏、以下同)。

今回は窪田正孝が演じる主人公・古山裕一に加え、妻になる音(二階堂ふみ)にもスポットが当たる。第1週では裕一の、第2週では音の子ども時代に焦点を当て、夫婦のルーツを丁寧に描いた。主演の窪田は制作側からの指名。明るさと陰の部分、心の葛藤までをも繊細に表現でき、16歳から50代までを演じられる実力を持つことが条件だった。
一方の二階堂は、オーディションで選出された。多くの主演作のある二階堂がオーディションに参加したことに、土屋氏ら制作陣も大いに驚いたという。また、音楽がテーマの作品であるため、主人公たちの母親を演じる菊池桃子や薬師丸ひろ子をはじめ、森山直太朗や山崎育三郎ら、音楽活動をしているキャストも目立つ。
「登場人物たちは挫折し、失敗を繰り返しつつ、諦めずに道を切り開いていきます。互いに支え合いながら、人生の荒波を乗り越えていく姿を見ていただければ」。この朝ドラが"応援歌"のように励ましとなって、見る人に届くことを目指すという。


(ライター 田中あおい)
[日経エンタテインメント! 2020年5月号の記事を再構成]
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