バフェット氏、航空株すべて売却 「世界は変わる」
1~3月期、5兆円の最終赤字

2020/5/3 8:40 (2020/5/3 12:50更新)
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バークシャーの年次株主総会はオンラインで中継した=ロイター

バークシャーの年次株主総会はオンラインで中継した=ロイター

【ニューヨーク=宮本岳則、伴百江】著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイは2日、年次株主総会を開いた。バフェット氏は新型コロナウイルスの感染拡大によって「世界が変わる」として、保有していた米航空株を全て売却したと明かした。数々の危機を乗り越えてきた「投資の神様」は米国の明るい将来を信じつつも、コロナ後の世界を見据えて動き始めている。

■「コロナでも米国の成長を止められない」

バークシャーは米中西部ネブラスカ州オマハに本社を置く。年次株主総会はバフェット氏に直接、質問できる機会とあって、毎年4万人の株主が米国のみならず、世界各地から集まっていた。盛り上がりぶりから「資本家のためのウッドストック」といわれる。2020年は例年と同じアリーナ会場を「無観客」にした上で、会長のバフェット氏と副会長のグレッグ・アベル氏が出席。質疑をオンラインで中継する異例の形となった。

総会当日に発表したバークシャーの20年1~3月期決算はコロナの影響が大きく表れた。アップルなど保有する上場株(総額1807億ドル)の評価損が膨らみ、最終損益は497億ドル(約5兆円)の赤字と、過去最大の損失となった。

バフェット氏はそれでも米国株に強気の姿勢を変えなかった。01年9月の米同時多発テロ、08年の金融危機など数々の困難を克服した歴史を「米国の奇跡」と紹介し、中長期的には米国が成長し続けると述べた。米国株投資についても「決して米国の成長に逆らうような賭けをしてはいけない」と指摘した。

■航空株すべて売却「乗客戻らない」

バフェット氏は米国経済の明るい将来を信じる一方、冷徹な投資家の顔もみせた。株主総会ではデルタ航空など保有していた米大手エアライン4社の株式をすべて売却したと明かした。エアライン株はバフェット氏の「お気に入り銘柄」として知られていただけに驚きが広がり、株主からの質問も集中した。

このほど売却したのはデルタのほか、アメリカン航空、ユナイテッド航空、サウスウエスト航空の4社。バフェット氏は2月にデルタ株をいったん買い増したことについて「間違いだった」と認めた。「外出制限が人々の行動に与える影響は分からない。3~4年後に、昨年までのように飛行機に乗るようになるのか見通せない」と悲観的な見方を示した。

■原油急落「掘っても採算が合わない」

バフェット氏の誤算は他にもあった。バークシャーは19年4月、米石油開発会社オキシデンタル・ペトロリアムの優先株を100億ドルで引き受けると発表した。ところがコロナと産油国の対立で供給過剰に陥り、原油価格が急落。オキシデンタルは業績悪化で現金で配当を払えなくなり、代わりに株式を割り当てる事態になった。バフェット氏は当時は魅力的な投資先だったと釈明した。

バフェット氏は原油価格の先行きについても弱気だった。石油開発会社は「(今の原油価格で)掘っても採算が合わない」と述べ、業績回復の遅れを覚悟しているようだった。原油価格の低迷が続き、エネルギー会社の債務不履行が相次げば、株主が損失を被るのは避けられないとの見方も示した。

■たまる現金「魅力的な投資先なし」

課題となっていた手元資金の使い道も解がみえない。20年3月末の現金・同等物の総額は1370億ドルとなり、過去最高となった。常に大型のM&A(合併・買収)を模索していたバフェット氏。今回の総会でも意欲を見せたものの、「魅力的な投資先がない」と嘆いてみせた。

バフェット氏がこれまで大型買収に慎重だったのは、投資ファンドの攻勢で買収価格が高騰していたからだ。新型コロナの感染拡大で株価は急落したが、バフェット氏は動かなかった。「感染第2波が来たときに米国社会がどう反応するのか分からない」。中長期では米国株に「強気」を維持しつつも、当面は慎重な投資スタンスをとる――。そんな考え方を発言の随所ににじませた。

■後継者候補、将来の「バークシャー解体」に否定的

バークシャーのグレッグ・アベル副会長はバフェット氏の有力後継者の1人=AP

バークシャーのグレッグ・アベル副会長はバフェット氏の有力後継者の1人=AP

バフェット氏の盟友で副会長のチャーリー・マンガー氏は会場に姿を見せなかった。二人のユーモアを交えたやりとりが、バークシャー株主総会の名物だった。マンガー氏の健康状態は良好なものの、飛行機による移動を避けるためと説明した。代役を務めたアベル氏はエネルギー事業を統括する実力者で、今年90歳となるバフェット氏の有力後継者候補の一人。本格的な「総会デビュー」となった。

バークシャーは投資会社のイメージが強いが、傘下にエネルギーや鉄道、保険など複数の事業会社を抱える。バフェット氏が経営を退いても、年間売上高で2500億ドルの巨大コングロマリットを経営できる人物はいるのか。バークシャー解体論は常に話題になっている。アベル氏は「バークシャーのユニークな事業構造は価値を生んでいる」と述べ、解体に否定的な考えを述べた。

「株式は永久保有」「買収してもリストラしない」――。こうした独自の経営哲学がバークシャーのブランド力を高めてきた。ところがコロナ危機で保有株の見直しを進め、傘下企業ではリストラも実施した。アベル氏は総会の質疑で「将来にわたってバークシャーの文化は変わらない」と明言し、長年のファン株主を安心させようとしていたが、バークシャーも想定外の事態に直面し、変化を求められている。

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