米官民、教育格差にITで挑む 新型コロナ受け

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2020/5/2 3:12 (2020/5/2 5:40更新)
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外出規制が広がり子供の遠隔学習の環境を整えることが急務になっている=ロイター

外出規制が広がり子供の遠隔学習の環境を整えることが急務になっている=ロイター

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い休校が続くなか、家庭環境や通学先の事情により教育の格差が広がる懸念が強まっている。IT(情報技術)を活用した遠隔学習が急速に広がる一方、インターネットの接続環境や学校・保護者の対応能力にばらつきがあるためだ。米国では官民が格差拡大を防ぐために協力する動きが相次ぐ。世界でも対応が急務だ。

「おはよう!カメラのスイッチは入っている?」。体育を教える教師がビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使って呼びかける。生徒はパソコンやタブレットを通じて話を聞き、教師の指示に従って反復横跳びなどの体操を始めた。米サンフランシスコ市郊外の小学校ではこうした遠隔授業が本格的に始まり、2週間が経過した。

Zoomに加え、教師と生徒や保護者は米グーグルのサービス「グーグルクラスルーム」を活用している。教師はグーグルのサーバーに教材などをアップロードし、生徒は自宅で取り込んで印刷する。生徒は課題に取り組んで成果を再びサーバーに送り、教師が確認する仕組みだ。

「学校や教員と協力してサービスを開発してきた成果だ」。グーグルクラスルームを担当するグーグルのアンビ・シャー副社長は語る。教材提供に加えて小テストの実施や採点といった機能を備えたサービスは原則無料で提供しており、世界の利用者は4月上旬までの1カ月間で倍増して1億人を突破した。

こうしたサービスの利用が各地で広がる一方、課題となっているのが「インフラ」の整備だ。米シカゴ市郊外に住む英語教師のドナ・デビート氏は「パソコンなどの対応機器を持っていない子供は『紙と鉛筆』でできる課題に取り組むことになり、格差が広がりかねない」と漏らす。

実際、グーグルなどIT企業が集まる米カリフォルニア州では「生徒のおよそ5分の1が家庭に高速ネットや対応機器を備えていない」(州政府幹部)。米国全体では約2000万人がネットを利用できず、国連貿易開発会議(UNCTAD)は「発展途上国では世帯普及率は2割以下にとどまる」と指摘する。

米国ではこうした状況を受け、官民で環境を整備する動きが増えてきた。低所得世帯などへの対応機器の配備では、ニューヨーク市教育局が25万台近い米アップルの「iPad」の貸与を始めた。カリフォルニア州ではグーグルから4000台のパソコンの提供を受けて生徒に配布する。米アマゾン・ドット・コムも1万台のタブレット端末を寄付し、協力する。

ネット接続では米Tモバイルなどの通信大手が無線通信端末とサービスを一部の州で無償提供する取り組みを始めた。インディアナ州ではスクールバスを無線通信の基地局に改造して巡回させ、生徒が教材のダウンロードなどに活用できるようにする。テキサス州は競技場の駐車場に基地局を設置し、子供が車内でネットを使えるようにしている。

ボランティアの活用も目立つ。グーグルはグーグルクラスルームの利用急増に対応するため、利用する教師が相互に教え合う仕組みを提供する。サンフランシスコ市の私立学校では保護者がビデオ会議システムなどを組み合わせ、遠隔授業の仕組みを用意した。教育でも急速なデジタル対応を迫られるなか、一人ひとりが役割を果たすことが求められている。

(シリコンバレー=奥平和行、ニューヨーク=伴百江)

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