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航空、国家操縦モード 移動なき世界で資金流出

2020/5/4 2:00
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写真はAP

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「納税者のお金を1ドルたりとも使うべきではない」。SNS(交流サイト)のツイッターにこんなツイートがあふれていたさなかの経営破綻だった。

■「外資」の破綻、冷淡な豪州

4月21日、オーストラリアの航空会社、ヴァージン・オーストラリアは日本の民事再生法の適用申請に当たる任意管理手続き入りを発表した。新型コロナウイルスの影響による3月下旬からの運休拡大で資金繰りが急激に悪化。政府支援を引き出せぬまま、力尽きた。管財人のデロイトによると負債総額は4月下旬時点で約69億豪ドル(約4700億円)に達する。

豪州国民の冷めた見方もカンタス航空になるとやや風向きが変わる。ツイッター上では顧客対応の遅さへの不満の声に混じり、こんな指摘が増えている。「カンタスが豪州の空を独占している状況も悪くはない」

温度差の背景にあるのは、両社の立ち位置と株主構成だ。カンタスが社歴100年を超える国を代表する「ナショナル・フラッグキャリア」なのに対し、ヴァージンは英ヴァージン・グループの子会社として2000年に豪州の国内線に参入した新興会社。主要株主はアラブ首長国連邦(UAE)のエティハド航空や中国アルミ大手の南山集団など「外資系」が9割超を占める。

競合相手が消えた影響でカンタスの株価は3月末比で14%上昇。もっとも運休拡大でキャッシュが入らず、固定費負担の分だけ日々体力を失う状況は破綻したヴァージンと同じだ。

コロナ危機モードで頭をもたげた自国ファーストの発想は世界各地に広がる。

「我々の重要な役割を認め、支援プログラムを超党派で支持してくれた」。4月22日、米デルタ航空のエド・バスティアン最高経営責任者(CEO)は2020年1~3月期の決算発表で感謝を述べた。米政府は大型経済対策に航空会社への580億ドル(約6兆2500億円)の資金支援を盛り込み、4月中旬にデルタやアメリカン航空、サウスウエスト航空など主要各社と合意。デルタは補助金と融資、合わせて54億ドルの支援を受ける見通しで、既に27億ドルを受け取った。

■逆境を狙う投資戦略も

デルタの株価は昨年末から比べ5割超の下落。米航空業界は大手すべてがチャプター11(米連邦破産法11条)を利用してスリム化と再生、業界再編を進めてきた経緯があり、大規模な公的支援を得ても投資家の警戒感はそう簡単には緩まない。

一方で市場の一部からは危機に直面する企業の株式や社債を買う「ディストレスト投資」の好機との声が上がる。旅客需要消失の長期化で公的支援でも救えない懸念もあるが、コロナ禍の収束で人が動き始めれば、落ち込みからの反動による大きな収益を得ることができる。

危機の深刻さは日本も例外ではない。「かつて経験したことのないイベントリスクに直面している」。日本航空(9201)の菊山英樹最高財務責任者(CFO)は4月30日の決算説明会でこう述べた。20年1~3月期の連結最終損益は229億円の最終赤字で、四半期の最終赤字は12年の再上場後初めて。ANAホールディングス(9202)の1~3月期の最終赤字587億円は四半期として過去最大だ。

キャッシュ流出のペースはJALの場合で600億~700億円程度、ANAは毎月1000億円近くになっているとみられる。政府は5月6日に期限を迎える緊急事態宣言を1カ月程度延長する方針を固めており、しばらく資金流出が続くことが確実だ。

移動のない世界で、航空業界はいつまで持ちこたえることができるのか。モラルハザードと背中合わせで広がりだした「国が支える翼」現象を探った。

[日経ヴェリタス2020年5月3日号に全文掲載]

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