「コロナ疎開」、首都圏の中古住宅に問い合わせ急増

日経ビジネス
2020/5/8 2:00
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リスト サザビーズ インターナショナル リアルティが仲介する南房総の高価格帯リゾート物件。新型コロナウイルスの感染者が増加する都市部を避けて人の少ない郊外に「疎開」するニーズが高まっている(写真提供:リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ)

リスト サザビーズ インターナショナル リアルティが仲介する南房総の高価格帯リゾート物件。新型コロナウイルスの感染者が増加する都市部を避けて人の少ない郊外に「疎開」するニーズが高まっている(写真提供:リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ)

日経ビジネス電子版

新型コロナウイルス感染拡大の影響で不動産市場の先行きにも不透明感が漂っている。そんな中、首都圏近郊の沿岸部に建つ中古住宅に目を向ける動きが表れている。業界関係者は、都市部を中心に新型コロナの感染者が増加したことから、人口の少ない地域の物件が見直されているとみている。在宅勤務の広がりで、太平洋を望みながら、仕事スペースを確保できるというセカンドハウスを求めるニーズもあるようだ。

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高価格帯の不動産売買を手掛けるリスト サザビーズ インターナショナル リアルティ(横浜市)の福島麦・銀座オフィス支店長は「千葉県の物件の人気が急に高くなった。南房総の海沿いエリアで中古住宅を探す顧客が急増しており、2月前半の2週間と比べると、4月前半は同エリアの問い合わせ数が3.9倍になった」と驚く。一番人気は南房総市で、富津市や館山市、勝浦市、いすみ市の物件にも照会が多いという。

物件に求められる条件は主に3つ。「オーシャンビュー」「広い敷地」「安定した再販価格」だ。千葉県は2019年に猛威を振るった台風15号や19号で被災した。地域によっては暴風雨の爪痕がなお残っている。新型コロナが拡大する以前は、「南房総エリアの中古物件への問い合わせは皆無だった」(福島支店長)という。

しかし、東京湾アクアラインなどを利用すれば都内にも出やすいことから、2拠点生活を考える経営者や専門職らから注目されている。実際、南房総エリアで「リゾート物件」とされる高価格帯中古住宅の購入を検討する経営者からは、「コロナが落ち着くまでは疎開用の住居として生活し、その後は従業員が利用できる保養施設として使える物件を探したい」との要望があったという。

■4月に中古物件探しが増える「異常事態」に

南房総エリアでは、「オーシャンビュー」「広い敷地」「安定した再販価格」が物件探しの条件となる場合が多い(写真提供:リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ)

南房総エリアでは、「オーシャンビュー」「広い敷地」「安定した再販価格」が物件探しの条件となる場合が多い(写真提供:リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ)

3月後半から4月前半にかけて中古住宅の物色が増えるのは「異常事態」だ。リクルート住まいカンパニー(東京・港)の住宅情報サイト「SUUMO(スーモ)」の池本洋一編集長は、「中古物件への問い合わせは、一般的に2月に住み替え需要で盛り上がり、3月から4月にかけて減少する傾向にある。しかし、今年は2月前半より4月前半の方が伸びている」と明かす。こうした問い合わせが急増したのは、政府が緊急事態宣言を発令するとの観測が広がった3月後半からだ。

新型コロナ問題を契機に都市部ではリモートワークを導入する企業が増えてきたものの、当初、大半の人々は自宅で連日働くスタイルまでは想定していなかった。ところが、緊急事態宣言が発令されるに至り、都心のマンションに暮らす人の場合、他者との接触を避けるために、マンション共用部や街中のカフェなどでは仕事ができない状況が続いている。池本編集長は、「(不動産価格が高い)都心ではカツカツの生活スペースしか確保できない。自宅勤務に窮屈さを感じた人たちが千葉や神奈川にセカンドハウスを求める動きが広がったようだ」と分析する。

SUUMOが集計したデータによると、2月前半を基準とした4月前半の千葉県の物件照会数はいすみ市で約2.4倍、茂原市が約1.9倍になっている。神奈川県でも同期間に茅ヶ崎市が約2.0倍、藤沢市で約1.7倍、三浦市が約1.4倍に増加した。一方で、鎌倉市や横須賀市のように例年通り4月にかけて減少している地域もある。「茅ヶ崎市や藤沢市などは移住者を受け入れるコミュニティーがある。開放的で受け入れ文化のある地域が選ばれているのではないか」(池本編集長)とみている。

照会された物件を見ると、2000万~3000万円、3000万~4000万円といった価格帯が多い。もっとも、照会数の急増に合わせて、契約数も大幅に増えているわけではないようだ。外出自粛要請を受けて物件の見学が難しくなっていることに加え、コロナ防疫のため契約を担当する不動産業者が十分に対応できないためだ。ただ、緊急事態宣言は5月7日以降も続く見通しが強まっている。事態が長引けば、セカンドハウスへの関心が一層強まる可能性もあるだろう。

(日経ビジネス 江村英哲)

[日経ビジネス電子版2020年5月1日の記事を再構成]

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