
米民主バイデン氏、セクハラ疑惑を否定
副大統領候補選びに影

【ワシントン=永沢毅】11月の米大統領選で民主党候補の指名を確実にしたジョー・バイデン前副大統領(77)は1日、再燃しているセクハラ疑惑を「真実ではない」と否定する声明を発表した。同氏は副大統領候補に女性を選ぶと明言している。問題の幕引きを急ぐ構えだが、尾を引けば打撃を与えかねない。
バイデン氏を巡る今回の疑惑は、上院議員時代の1993年に事務所の女性職員がスカートに手を入れられたとして4月上旬に刑事告発したことで浮上した。2019年にも複数の女性がセクハラ疑惑を告発している。
バイデン氏は1日の声明で「(女性の訴えは)きちんと調査されなければならない」としつつ、疑惑は全面否定した。今後の説明に説得力が乏しければ、史上初の女性副大統領を目指す機運をそぐことになりかねない。
これに先立つ4月30日、バイデン氏陣営は党重鎮のドッド元上院議員ら4人を選考委員会の共同議長に指名したと発表した。副大統領は大統領職の継承順位1位で、万が一の事態に重責を担う枢要ポスト。長期の選挙戦を二人三脚で戦うため「ランニングメート」(伴走者)と呼ばれる。バイデン氏は7月までに2~3人に絞り込む方針だ。
「(私の)弱点を補う経歴や能力を持った人物を選ぶ」。米メディアのインタビューではこう語った。この基準に照らすと、候補はおおむね3グループに分けられる。

1つは非白人のマイノリティーで、候補指名を争った黒人のカマラ・ハリス上院議員(55)やヒスパニック系のグリシャム・ニューメキシコ州知事(60)の名があがる。
バイデン氏は黒人のベテラン下院議員の支持を機に復活を遂げた経緯もある。候補の一人の黒人ステーシー・エイブラムス氏(46)は「米国の多様性を反映する組み合わせが必要だ」と訴える。
もう1つはラストベルト(さびた工業地帯)の中西部にゆかりのある顔ぶれだ。白人労働者層の奪還に弾みをつける狙いがある。ミネソタ州選出のエイミー・クロブシャー上院議員(59)やグレッチェン・ホイットマー・ミシガン州知事の名が取り沙汰される。
挙党体制に腐心するバイデン氏には、左派のエリザベス・ウォーレン上院議員(70)を選ぶ選択肢もある。最後まで指名を争った同じ左派のサンダース上院議員を支持するリベラル層へのアピールにつながるが、70歳という年齢がネックだ。
今回は新型コロナも影響する。知事として対処を指揮するホイットマー氏は支持率が急上昇する注目株だ。「危機管理を乗り切れば、指名に大きく前進する」(民主党関係者)との見方がある。
日経電子版の「アメリカ大統領選挙2020」はアメリカ大統領選挙のニュースを一覧できます。データや分析に基づいて米国の政治、経済、社会などに走る分断の実相に迫りつつ、大統領選の行方を追いかけます。
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