皇位継承論議、本格検討はコロナ収束後 有識者聴取は継続
令和改元から1年

「令和」新時代
2020/5/1 2:00
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政府の懸案である安定的な皇位継承策を巡る議論が停滞したままだ。政府は天皇陛下の即位に伴う一連の儀式を終えた後に本格的な検討に入る予定だった。新型コロナウイルスの感染拡大で儀式は延期を余儀なくされ、当面は有識者からの非公式の意見聴取を続ける。

陛下の即位から1年がたった。天皇だった上皇さまの退位を実現するため2017年6月に成立した皇室典範特例法は、付帯決議で政府に安定的な皇位継承策の検討を促している。

「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」について「皇族方のご年齢からしても先延ばしできない重要な課題」と指摘した。19年4月の特例法の施行後、政府は速やかに検討し「結果を国会に報告する」と明記した。

女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」の明記は当時野党第1党だった旧民進党が主張していた。全会一致をめざすため、与党が譲歩した。

決議に法的拘束力はなく、政府は特例法の施行後も議論に着手していない。陛下の即位に伴う一連の儀式の準備を優先すると説明してきた。

秋篠宮さまが皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)になられたと示す「立皇嗣の礼」がその最後の儀式にあたる。今年4月19日に催す予定だったが、緊急事態宣言の発令などを踏まえ政府は当分の間、先延ばしを決めた。

安定的な皇位継承の本格的な議論も新型コロナの感染収束までめどが立たない。政府内には早くても今秋以降になるとの見方が多い。与野党も新型コロナへの対応を最優先し、議論の中断はやむを得ないとみている。

菅義偉官房長官は30日の記者会見で「立皇嗣の礼の実施時期を見極めたうえで、付帯決議の趣旨を尊重して対応していきたい」と説明した。「事務方が有識者から個別にお話を伺うなど論点や課題の整理に務めてきている」とも語った。

皇室典範は第1条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定める。現在の皇位継承資格者は順に(1)秋篠宮さま(54)(2)秋篠宮家の長男・悠仁さま(13)(3)上皇さまの弟の常陸宮さま(84)――の3人で戦後最も少ない。

皇位の安定継承には継承資格者を増やす必要がある。主な論点は(1)女性天皇や、母方が天皇の血筋を引く女系天皇の是非(2)女性宮家の創設の可否(3)戦後に皇籍を離脱した旧宮家の皇室復帰の賛否――などだ。

女性天皇は過去に10代8人が存在した。仮に女性天皇を認めても女性天皇の子は女系になる。天皇は男系だけとするなら女性天皇の子は天皇になれず、男性皇族が男子をもうけなければ継承資格者は増えていかない。

安定的な皇位継承策を巡っては、小泉政権の05年に有識者会議が女性・女系天皇を容認する報告書をまとめた。当時は皇太子だった現在の天皇陛下や秋篠宮さまの世代より若い男性皇族がおらず切迫感が強かった。

男系の継承という伝統を重んじる自民党内には当時も女性・女系天皇への慎重論が多かった。06年2月に秋篠宮妃紀子さまが悠仁さまを懐妊されたのが明らかになると議論はしぼんだ。

安倍晋三首相も野党時代に「皇室の歴史を断絶した『女系天皇』には明確に反対だ」と訴えた。菅氏はかつて「特例法の付帯決議の中で女性宮家と皇位の安定継承は分けて書かれている」と述べ、2つは別の問題だとの認識を示した。

女性宮家の議論はもともと女性皇族が結婚すると皇室を離れるため、公務を担う皇族の人数が減る問題への対応がきっかけだった。

一方で女性宮家を創設すると民間人の夫やその子が皇族に加わり、女性・女系天皇への道を開くとの警戒感が安倍政権内にある。女性天皇を認める場合でも女性宮家を創設し、女性皇族を皇室にとどめる検討が必要になるからだ。

自民党の一部保守派は男系を保つため、戦後に廃止された旧宮家の皇籍復帰を唱える。皇位継承問題に詳しい笠原英彦慶大教授は「安倍内閣は現実的な一歩として女性宮家を設け、女系天皇などの課題は次の内閣に引き継ぐべきだ」と話す。

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