9月入学、企業・大学は期待 人材育成で国際競争力
年度とズレ、移行は難題

2020/4/30 22:15 (2020/5/1 5:26更新)
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学校の始業や入学時期を9月にずらす議論が活発になってきた

学校の始業や入学時期を9月にずらす議論が活発になってきた

新型コロナウイルスの収束が見通せない中、学校の始業や入学時期を9月にずらす議論が活発になってきた。長引く休校による学力格差の拡大を懸念する声が背景にある。関係法令の改正など課題もあるが、企業などには秋入学が標準的な海外に合わせた制度になれば、国際的に競争力のある人材の育成に弾みがつくと評価する声も上がる。

双日の藤本昌義社長は「環境の変化がなければ議論も進まない。積極的に推進すべきだ」と訴える。入学や卒業時期がずれたとしても柔軟に対応できる採用制度を整えているが「海外留学している学生と国内の学生を同じタイミングで採用できれば企業の大きなメリットになる」と話す。

■「留学しやすく」

9月移行案は、文部科学省を中心に3月ごろから検討されてきた。東京都立高校3年の女子生徒は「学校も塾も休みなので受験勉強に不安しかなかった。早めに決めてもらえば、余裕をもって準備できる」と強調。将来は語学留学するのが夢で「学期を気にせず海外に行ける」と歓迎する。

米欧では秋に学年が始まるのが主流だ。有力大学の多くも秋入学制度を採用しており、米ハーバード大や米マサチューセッツ工科大は9月から、英ケンブリッジ大学は10月から授業が始まる。

学期開始の時期がほぼそろっていることで、大学同士が連携して単位交換プログラムをやりやすくなる。経済協力開発機構(OECD)の調査では、2017年時点で大学など高等教育段階で留学経験のある日本の学生は4%。OECD平均の6%より低く、年間の教育日程を世界標準にすべきだとの指摘は以前からあった。

こうした危機感から東京大は11年、秋入学の検討を始めた。結果的には見送られたが、グローバルスタンダードをにらんだ動きは続いた。東大や早稲田大、慶応大などは秋入学の代わりに前期・後期の教育日程を見直し「クオーター制」(4学期制)を順次導入。4月入学・3月卒業を前提に学期を細かく区切り、合間の休みで教育日程が異なる国との往来を促す。

ただ、9月入学への制度移行には様々な法改正が必要になる。今年から始めるには義務教育の開始年齢を定める学校教育法などを改正しないといけない。

このほか、財政法では国の会計年度について「4月1日に始まり、翌年3月31日に終わる」と定める。9月入学に合わせて会計年度も9月開始に変えるなら、法改正が必要になる。憲法では政府が毎会計年度の予算を作成し、国会の議決を受けることを求めている。移行期の半年間の扱いも課題になる。

企業の採用活動も依然として春に集中する。9月入学・夏卒業に移行するなら「企業も本格的に通年採用に切り替える必要がある」(経団連幹部)。一括で筆記試験や面接を実施する方式は学業の妨げとなることもあり、単純に採用時期を秋にずらすのではなく「一斉入社をやめて多様化を図るべきだ」(経済同友会幹部)との声もある。

■政府が検討着手

安倍晋三首相は30日の参院予算委員会で「学校再開に向けての状況を見極めつつ、前広に様々な選択肢を検討していきたい」と述べた。政府は同日、杉田和博官房副長官のもとに9月入学に関する勉強会を設置。関係省庁の次官が出席し、会計年度や就職活動の時期など9月入学に必要な手続きについて意見交換した。

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