中銀、政府も企業も支える 20年末の総資産2400兆円に

2020/4/30 19:00 (2020/5/1 5:29更新)
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【ワシントン=河浪武史、ベルリン=石川潤】日米欧の中央銀行が、国債など資産購入を拡大している。新型コロナウイルスで経済が停止し、緊急時の安全網として中銀が政府・企業の最後の支え手となっているためだ。2020年末の日米欧中銀の資産は前年末比1.5倍の約2400兆円と国内総生産(GDP)の約6割に膨張する可能性がある。金融危機が起きた08年末は600兆円を下回っていた。経済復元には一段の政策が欠かせないが、金融政策への過度の依存は中銀の重荷となり、将来の正常化を困難にしかねない。

「今は政府債務の膨張を懸念する時ではない。経済の長期ダメージを避けるため、大型の財政支出を打ち出す必要がある」。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は29日の記者会見で、米政権に追加対策を促した。「米国債などは必要とされる量を購入し続ける」と付け足し、米政府が国債を大増発しても金利急上昇を招かないよう間接支援する考えをにじませた。

米政権は新型コロナ対策としてすでに3兆ドル(約320兆円)弱の財政出動を決定済みだ。それでも4~6月期の実質成長率は12%減、年率換算なら40%もの大幅なマイナスが予想される。トランプ米大統領はインフラ投資や大型減税など追加策の検討に着手している。新型コロナ対策は総額でGDPの2割にあたる4兆ドル規模に達する可能性がある。

財政赤字も年1兆ドルから4兆ドル規模に膨らみそうだ。3兆ドルもの臨時の国債増発は金利の急上昇を招きかねない。ただ、FRBは3月下旬に量的緩和政策の購入量を無制限に切り替えた。国債の保有量は3月からわずか2カ月弱で1兆4千億ドルも増え、足元でも月2000億ドルのペースで買い入れている。連邦政府が国債を3兆ドル増発しても、そのままFRBがのみ込みかねない勢いだ。

欧州中央銀行(ECB)は30日の理事会で、3月に決めた7500億ユーロ(約87兆円)の量的緩和を柔軟に進める考えを改めて示した。ラガルド総裁は「必要なことは何でもやる」と主張しており、状況に応じて拡大を検討する。20年の国債などの資産購入量は1兆ユーロ(116兆円)を大きく上回る見通しだ。

欧州各国も大規模な国債増発が避けられない。金融大手のウニクレディトの試算によると、20年のユーロ圏の政府債務はGDP比で111%と前年の85%から大幅に膨張する見通し。各国政府は単純計算すれば3兆ドル以上の追加資金が必要になる。ユーロ共同債(コロナ債)の発行などが遅れ、ECBの国債購入が事実上の安全網となる。

中でも深刻なのが、28日にフィッチ・レーティングスによって投資適格ぎりぎりまで格下げされたイタリアだ。金利に上昇圧力がかかっており、欧州債務危機を繰り返さないようにECBが監視の目を強めている。

中銀が政府から国債を直接購入する「財政ファイナンス」は金利や物価の急騰を招く禁じ手とされてきた。ただ、FRBは第2次大戦前後に、国債金利を固定する財政支援策を実行したことがある。大恐慌以来の100年に1度の危機時は市場も「あらゆる手段」(パウエル氏)を求める。

こうした結果、中銀マネーの膨張は止まらない。20年末の日米欧3中銀の資産残高は約2400兆円と、1年間で1.5倍増える可能性がある。GDPの約6割と実体経済に比べ極めて大規模になる見通しだ。

FRBの保有資産量は4兆ドルだったが、量的緩和の再開で現在は6兆6千億ドル弱まで増えた。7500億ドル規模の社債、1兆ドルのコマーシャルペーパー(CP)などの購入もあり、このままのペースだと20年末には10兆ドルを突破しそうだ。ECBも19年末に約4兆7千億ユーロだった資産残高に、20年の追加購入分を単純合算すると20年末には約5兆8千億ユーロに膨らむ見通しだ。中銀の資産購入によって、民間銀行などには同額規模のマネーが流れ込むことになる。

長期金利の動向次第だが、日銀は612兆円の資産量が20年末には650兆円程度に膨らむ可能性がある。増加幅は小さいものの、GDP比ではすでに100%を超す。一方、FRBは資産量が10兆ドルに達しても5割程度だ。

新型コロナの感染拡大によって世界経済はかつてない打撃を受けている。雇用対策などの財政政策を通じて経済のV字回復につなげないと、中銀の負担はさらに増すことになりかねない。

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