中銀、産業金融に一歩 CP・社債購入「リスク負う」

2020/4/30 19:00
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日米欧中銀は社債やコマーシャルペーパー(CP)の買い入れで一般企業にも資金を供給している。その規模は米連邦準備理事会(FRB)が社債7500億ドル、CP1兆ドルにのぼる。欧州中央銀行(ECB)は7500億ユーロの追加購入枠のなかで国債、社債、CPを買い入れる。日銀の社債・CPの買い入れ枠は計20兆円だが、企業の格付けが低下傾向の中でどこまでリスクをとるかを試されることになる。

「資金供給がなければ企業は閉鎖に追い込まれ、米経済は長期的なダメージを負いかねない」。FRBのパウエル議長は29日の記者会見で、社債やCPの購入の意義を説いた。1兆ドルの米国のCP市場の残高に対して、FRBの購入枠も最大1兆ドルだ。企業の短期資金の調達を、そっくりそのまま請け負う。

社債市場では7500億ドルを買い入れ、格付けが投資不適格級となった「堕天使債」も対象とする。S&Pグローバル・レーティングによると、20年に入って、「堕天使債」となった企業は23社。さらに96社にその可能性があり、既に08~09年の金融危機時を上回る勢いだ。

自動車大手のフォード・モーターや百貨店のメーシーズなど有力企業が投資不適格級となった。雇用維持へFRBの緊急資金供給が欠かせない。パウエル議長は「リスクは多いが取るべき措置だ」と明言。こうした措置が奏功し、信用リスクをやりとりするクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場は安定を取り戻し、市場の底割れをぎりぎりで回避した。ホテル世界最大手のマリオット・インターナショナルやフォードなど多くの企業でCDSの保証料率が低下し、投資家の信用不安が薄れている。

ECBも22日、格下げで投資不適格級になった債券も、ECBの資金供給の担保として受け入れると決めた。欧州では1000億ユーロ規模の社債が、20年中にも投資不適格であるダブルB格以下に格下げされるとの懸念が強まっていたためだ。ユーロ圏のハイイールド債の利回りは2月時点の2%台から一時8%台まで急上昇。最後の資金の出し手として動く。

ただ、中銀のリスク資産の購入は、終着点が見えない。低格付け債の利回りはFRBの資金供給で急低下したものの、20日にはニューヨーク市場で原油先物が史上初めてマイナスに転落。「逆オイルショック」によってシェール銘柄などの利回りは再び上昇し始めた。中銀が安全網を敷けば相場は落ち着くが、そこからはみ出た市場は資金の出し手がさらに細る。

08年の金融危機で中銀が得た教訓は「迅速に行動する勇気」(バーナンキ元FRB議長)だ。損失リスクとの我慢比べが当面続くことになる。

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