コロナ禍で「常なる変化」を再考 想田和弘監督
新作映画「精神0」をサイトで配信

2020/5/11 2:00
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山本昌知医師(左)と妻・芳子さんを追った映画「精神0」(C)2020 Laboratory X, Inc

山本昌知医師(左)と妻・芳子さんを追った映画「精神0」(C)2020 Laboratory X, Inc

「不変のものはなく、好むと好まざるとにかかわらずすべては変化する。そのことを改めて実感した」。観察映画と呼ぶ独自のスタイルでドキュメンタリー映画を撮り続けてきた想田和弘監督は、コロナ禍に直面して「常なる変化」を説いた仏教の始祖、ブッダの無常観に思いをはせているという。

新作「精神0」は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け劇場公開が延期に。代わりに急きょインターネット上に「仮設の映画館」と名付けたサイトを設け、5月2日から映画の配信を始めた。この映画の上映を予定していた全国の劇場と配信で得た売り上げを分け合い、窮地を乗り越えようという試みだ。

当初は、昨年夏ごろから劇場公開の準備を始め、「2月にベルリン国際映画祭でプレミア上映した後、5月に劇場公開」という計画を立てていた。だが、もくろみはあっけなく崩れた。「コロナウイルスは私たちの都合など考えてはくれない。将来の人生設計を考えてしまうほど、私たちは安定した社会に住んでいるつもりでいたが、そうではなかった」と監督。「コロナウイルスが自然の一部とすれば、自然は秒単位、瞬間ごとに変化するし、やはり自然の一部である私たちも老い、いずれ死ぬ。自然の変化の中で私たちは生きている、ということを改めて実感した。今回の降りかかった災難はきついが、私は自然と人間の関係、老いと死を再考する機会にしたいと思っている」と語る。

「精神0」は12年前の映画「精神」にも登場した山本昌知医師が主人公だ。精神医療に半生をささげ、仕事からの引退を決めた山本医師を追い続けているうちに、妻・芳子さんとの愛情や老いにも目を向けた作品になった。「老いを受け止め、穏やかに充実した生をどう生きるのか。それを実践している山本夫妻の姿は1つのヒントになると思う」と監督は話している。

(関原のり子)

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