給付金・借りる・猶予 個人が使えるコロナ公的支援

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が5月25日、首都圏と北海道で解除された。4月7日に発令した宣言は全面解除となった。ただ、100近い業種でガイドラインが作成されており、人と人とが近づきすぎない工夫を求められるなど、暮らしの変化はまだ続きそうだ。勤務先の休業や業績悪化などで収入が減る人も少なくなく、家計への影響が大きくなりつつある。もし万一、お金に困ったときのために、公的な支援策を知っておこう。
返済しなくてよい給付金
お金に困っている人もそうでない人も1人10万円の現金を受け取れる「特別定額給付金」が始まった。対象は4月27日時点で住民基本台帳に記録されていた人で、外国人も受け取れる。海外駐在などで住民票が日本になければ、日本人でも受け取れない。
マイナンバーカードを持っている人はマイナポータルでオンライン申請が可能だが、基本的には市区町村から郵送されてきた申請書類をもとに郵送で3カ月以内に申請する。原則、銀行口座に振り込みで給付される。人口が多い自治体では支給に時間がかかっており、6月上旬までの給付率は4割に届いていない。

一時的に勤務先が休業して仕事を失った人に対しては、賃金の8割程度を、月33万円を上限に休業支援金として給付する。休業手当を支払っていない中小企業で働く人が対象で、関連法が成立すれば4~9月の休業について支払う。5月以降に失業した人には失業手当の給付日数を延長する予定だ。
6月分の児童扶養手当を受給しているひとり親家庭には1世帯あたり臨時特別給付金5万円、第2子以降は1人3万円が支給される。申請は不要で、可能な限り8月までに支給する予定だ。このうち収入が急減した世帯には、申請すれば5万円を給付する。
医療・介護従事者には慰労金を支払うことも決まった。医師や看護師といった職種は問わず、患者と接触する業務に一定以上あたる医療従事者310万人に5万~20万円を支給する。介護現場でも、新型コロナの感染者だけでなく利用者と接する職員に5万~20万円を支給する。
もし感染してしまったら、健康保険に加入している会社員や公務員は、4日目以降の休みから「傷病手当金」を受け取れる。休みの間に給料が一部支払われれば、その分は傷病手当金が減額される。国民健康保険でも、給与を受け取って働く人が新型コロナウイルスに感染したら傷病手当金を受け取れることがある。すでに横浜市など一部では申請を受け付けており、厚労省によると4月初めの時点で6割ほどの自治体が傷病手当金を検討していた。国民健康保険で広く傷病手当金を支給するのは今回が初めてだ。
感染が疑わしい症状で休むときの休業手当は、少し複雑だ。発熱などの症状があったら一定期間は必ず休むよう会社が定めている場合は、休業手当が支払われる可能性が高い。だが、念のため自発的に休む場合は、基本的に通常の病欠と同様の病気休暇などになりそうだ。
子供が通う小学校が休みになって仕事ができなくなったら、会社員は有給休暇を取得できるが、フリーランスはどうなるのか。業務委託契約を結んだ仕事ができなくなってしまった場合は1日4100円の「小学校休業等対応支援金」を受け取れる。4月1日以降の休みについては1日7500円に引き上げ、対象期間も9月末までに延ばす予定だ。子供の同居を確認するために住民票は全員が記載されたものの写しが必要なので注意しよう。
フリーランスは「持続化給付金」も見逃せない。基本的に2020年1月以降、前年同月に比べ売り上げが半減した月が1カ月あれば、その月の売り上げの12倍を19年の年間売り上げと比べて減少した分を上限100万円、法人なら上限200万円まで受け取れる。申請期間は21年1月15日まで。作家や俳優なども対象だ。受け取れるのは1回だけ。オンライン申請から2週間ほどで給付するのが基本だという。自身も申請した社会保険労務士の井戸美枝さんは「オンライン申請が思いのほかやりやすかった」と振り返る。申請から2週間ほどで給付決定の通知が届いた。
自立してアルバイト収入で学費を賄っている大学生や専門学校生らは、収入が前月比50%以上減ったら「学生支援緊急給付金」を10万円、住民税非課税世帯の学生は20万円受け取れる。日本語学校に通う留学生も対象だ。6月10日までに1000人以上に支給された。6月19日が一次募集の締め切りだが、追加募集も予定している。給付金を受け取るには、日本学生支援機構などの奨学金を受けているか受ける予定であることが条件だ。まずは通っている大学などに相談しよう。学校によってはLINEでも申請できる場合がある。

当座をしのぐ借り入れと支払い延長
突然、収入が減って、一時的にお金が足りなくなったら、金利が高い無担保ローンやカードローンを借りる前に「緊急小口資金」を知っておこう。新型コロナウイルスの影響で収入が減って生活費に困っている人は、所得制限なく利用できる。家族の誰かが感染したり要介護者がいたり、4人以上の世帯や学校休業で子供の面倒を見なければならなくなったりした場合は、無利子で20万円まで借りられる。市区町村の社会福祉協議会のほか、労働金庫でも郵送で受け付ける。
「総合支援資金」は、新型コロナウイルスの影響で別の仕事を探さなくてはならない人などに、新たな仕事が見つかるまでの生活費を貸すのが基本。単身世帯は月15万円以内、2人以上世帯は月20万円以内を3カ月分まで借りられる。今回は特例で保証人がいなくても無利子だ。

緊急小口資金を借りている人は、電気・ガス料金の支払いを猶予してもらえる。電力自由化で小売事業者が多彩になったが、資源エネルギー庁のホームページに、支払い猶予に対応する事業者の一覧がある。
水道料金は、緊急小口資金を借りていなくても支払いを猶予してもらえることが多い。東京都は電話すれば書類などの手続きなしで最長4カ月猶予する。全世帯の水道の基本料金を減額する自治体も出ている。東大阪市は一般家庭25万世帯の最低料金を4カ月分、5割減額する。
税金は、新型コロナウイルスの影響で収入が大きく減った人は原則1年、延滞税・延滞金なしで納税や徴収を猶予する。地方税は納税通知書で払う固定資産税や自動車税が対象で、給与から天引きされる住民税は対象外だ。
借りたり支払いを猶予してもらったりしたお金は、原則、いずれ返済しなければならない。当座をしのぐ手段であり、支払いそのものがなくなるわけではないことには注意しよう。
(大賀智子)

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