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ボーイング、次世代機の開発断念 止血へ人員1割削減

日本メーカーが主要部品を供給する中型機「787」は5割減産する(サウスカロライナ州の組み立て工場)=ロイター

米ボーイングは次世代中型機「NMA」の開発計画を打ち切った。2020年にも開発に着手する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で需要が見込めないと判断した。現行機種も22年までに3~5割減産し、従業員の1割を削減する。航空会社の経営悪化で注文キャンセルや支払いの延滞が相次ぐ中、大規模なリストラで独力での再建をめざす。

座席数250席クラスの「NMA」は小型機「737」と中型機「787」の間を埋める位置づけとして、25年ごろの就航を想定していた。日本メーカーが主要構造部を担う「787」の設計思想を引き継ぐとされ、日本の航空機産業は久々の大口受注を期待していた。

デビッド・カルホーン最高経営責任者(CEO)は29日、記者団に「コロナ危機のいまは、新型機の開発にふさわしい時期ではない」と述べ、NMAの計画撤回を明言した。「旅客数が減少する局面では小型機のほうがニーズがある」と説明。墜落事故で運航が停止し、再開をめざす「737MAX」を主力に据える考えを示した。

「ドリームライナー」の呼び名で日本国内でも多数就航する「787」はコロナ危機以前から中国の需要にブレーキがかかり、20年後半から減産が決まっていた。新型コロナに伴う需要減を受けて、22年に現在の半分の月産7機まで生産ペースを落とす。大型機「777」も21年から3割減産する。

減産に備えて従業員の1割に当たる1万6000人を削減する。商用機と補修サービス部門の7万人を対象に希望退職を募り、定数に達しなければ指名解雇に踏み切る。

資金確保を優先するため、25日にブラジル・エンブラエルの商用機事業への42億ドル(約4500億円)の出資計画を撤回した。エンブラエルは一方的な交渉打ち切りを不服として仲裁手続きを求めているが、カルホーンCEOは29日の決算会見で「エンブラエルはボーイングに影響がないところでエアバスと戦うことになる」と突き放した。

航空会社の経営悪化で機材の受領延期や支払い遅延が相次ぎ、ボーイングの業績は一段と悪化している。1~3月期は商用機の引き渡しが前年同期から7割減少し、フリーキャッシュフロー(純現金収支)が5000億円の赤字となった。資金流出は737MAXの一連の問題で経営が悪化していた19年10~12月期から大幅に増加した。

ボーイングは1年以内に返済予定の短期借入金が約5500億円あり、20年後半に予定する737MAXの生産再開に5000億~6000億円の追加コストが発生する。現状の資金流出が続く場合、3月末に1兆6000億円あった手元資金は年内に底をつく計算だ。

同社のグレッグ・スミス最高財務責任者(CFO)は「政府に支援を求めた1カ月前に比べて、信用市場の流動性が大幅に改善した」と指摘。「米連邦準備理事会(FRB)の社債の買い入れプログラムの活用も有力な選択肢だ」と述べた。ロイター通信は29日、ボーイングが1兆円規模の社債発行を検討していると報じた。

ただし、民間での資金調達には限界がある。ボーイングの財務は737MAX危機で急速に悪化した。3月末の有利子負債は4兆円超と3カ月で約1兆円膨らんだ。墜落事故前の3倍の水準だ。米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは29日、同社の信用格付けを投資適格水準で最低のトリプルBマイナスに引き下げた。

米政府はボーイング救済を想定し、2.2兆ドルの経済対策に「国家安全保障に関わる企業」への170億ドルの融資枠を盛り込んだ。ただ、カルホーンCEOは融資の前提に株式か新株予約権を政府に預け入れる条件に難色を示している。

同社は世界有数の軍需企業でもあり、各国との取引や調達戦略に米政府の意向が強まることを避けたい。だが、年央を見込んでいた737MAXの運航再開は米連邦航空局(FAA)の審査が遅れ、8月以降にずれ込む見通し。新型コロナの影響が長引けば、政府出資による救済が現実味を帯びる。

ボーイングは「少し小さな会社」(カルホーンCEO)になってコロナ禍が去るのを待つ構えだ。ただ、影響はボーイング1社にとどまらない。航空機は部品や素材など関連産業の裾野が広く、ボーイングのサプライチェーン(供給網)にはグローバルで1万7000社が連なる。特に日本の航空機産業はボーイングとの取引が多い。たとえば、中型機「787」の構造部材の35%は日本勢が供給している。

主翼部品などを手掛け、民間航空機事業の売上高の8割がボーイング向けとみられる三菱重工業は「影響は避けられない」と話す。

「787」の炭素繊維複合材を独占供給している東レは年内に月産10機に落ち込む想定をしていたが、今回の減産計画は予想を上回った。「情報収集を急ぐ」という。19年3月期の炭素繊維事業の売上高は約2200億円で、そのうち45%を航空宇宙用途が占める。

川崎重工業も民間航空機事業(エンジン除く)の売上高1500億円程度(19年3月期)のうち、大半がボーイング向けだ。

三菱重工や川重、SUBARUは航空部品の生産工場の一時的な稼働停止を発表しているが、追加の対応を迫られる可能性がある。

ボーイングが開発を断念した「NMA」プログラムには三菱重工が主要部品の参画を狙っていたほか、東レも炭素繊維の供給を目指していた。(ニューヨーク=中山修志、西岡杏)

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