直木賞作家の荻原浩、漫画家デビュー
大学時代の構想含む8編の作品集刊行

2020/5/13 2:00
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「大河の彼方より」((C)荻原 浩/集英社)

「大河の彼方より」((C)荻原 浩/集英社)

直木賞作家の荻原浩(63)が初の漫画作品集「人生がそんなにも美しいのなら」(集英社)を刊行し、漫画家デビューした。「40年ほど前、大学4年のときに漫画を描いて、新人賞に応募しようとしたことがある。作家になって20年が過ぎ、その思いがよみがえってきた。(作家に続いて)もう一度デビューできたという奇妙な自己満足があります」と荻原は話す。

8編を収めており、冒頭の「大河の彼方(かなた)より」は大学4年の時に構想した「愛(いと)しのアマゾネス」を原型に描き下ろした作品。アマゾンに調査にやって来た日本人研究員が道に迷い、ある女性と出会う物語だ。「主人公の女性の顔だけはすらすら描くことができたのは、大学時代に頭の中では描き上げていたからかもしれない」

ほかの7編は月刊誌「小説すばる」に不定期連載した。最初に描いた「祭りのあとの満月の夜の」は少女と少年が縁日に出かける幻想譚(たん)。「初めは何を描いていいのか分からず、しかけ絵本のようなイメージを考えた。実際にお祭りの縁日も取材しました」。病室で最期のときを迎えつつある93歳の女性を主人公とする表題作は、現実と幻覚・妄想が行きつ戻りつする。「年を重ねたから描ける内容を考えた」と述べ、手応えを感じている。

幻想的な作品が多くなったのは「自分の画力では日常を表現するのは難しく、自然と非日常のものが多くなった」としながらも「小説でも常ならぬ物語をよく書いている」とも語る。「漫画では言葉の代わりに絵で説明することが求められる。いつも小説を書くときは余計な言葉をそぎ落とそうと心がけているが、その意識がさらに高まった気がします」。小説との向き合い方にも刺激を与えたようだ。

(中野稔)

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