新型コロナを機に考える「本物の投資」とは?
積立王子への道(4)

「長期」は結果なんだ
前回、本物の長期投資には「何年以上」といったような薄っぺらいメドはない、という話をしたね。株価とは投資家による不合理な判断の累積なんだから、それを合理的に「当てにいく」という行為自体、既に論理矛盾。長期投資とは本物の投資をしていると結果的にそうなるものなんだ。
では本物の投資とは? 自分のお金を相場で勝負させるのではなく、実体経済の中に「働きに出す」行為のことを指す。ハジメくんも気づいたように経済とは様々な事業活動の集積で成り立っているよね。つまり企業が営むモノづくりやサービス提供といったビジネス(事業)を私たち生活者が享受することによって、豊かな社会ができあがっているわけだ。
投資とはビジネスの努力を応援すること
ビジネスは世の中をより豊かにするためにたゆまぬ努力を続けている。そうして世に出される新たな製品やサービスが、人々に喜びや感動を与え、世間に広く支持されて事業が利益という新たな富を産み出すことによって、企業は大きくなっていく。これが成長で、そうした事業活動の成果が集積したものが経済成長だといえる。
本物の投資とは、産業界が必要とする経済成長に資する資金を提供していくことであり、私たち生活者にとってはお金を通じて経済活動に参加する行為でもある。前回取り上げた投機――自分のお金を相場で勝負させて値動きを追いかけること――とは全く違う行動だとわかるよね。
だから時間がかかるんだ
これがわかれば、事業が新たな価値を社会に供給するためには長い時間が必要だということも納得いくだろう。つまり企業がステキな価値を世の中に提供することで成長し、それに従ってその企業の値段(株価)も上がっていくわけで、長期投資のリターンは決して偶然性ではなく事業価値の増大によって得られる合理的なものなんだ。
現状を例にとって考えてみよう
今回のコロナ禍ほどの体験インパクトは収束後も否応なく、我々生活者に少なからぬ行動変化を迫ることになるだろう。ITやネットを一層活用した生活パターンや働き方への転換は待ったなしだ。医療システムの進化に向けた新規需要は当然盛り上がる。
あらゆる産業で変化に即したビジネスモデル転換が求められ、適応し損ねた企業は落後し、別の企業がそこへ新たな価値を代替する。選別と淘汰のニューパラダイムが始まり、今後起こる経済ダイナミズムの変化が次の経済成長の土台となる。アフターコロナ時代の本物の投資の芽はもう生まれているんだ。

積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。
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