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科学的なマネジメント分析 SBI証券・北野氏

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SBI証券・チーフストラテジスト・北野一氏

1992年から、年100冊を超える本を読んできました。ストラテジストの仕事でリポートを書くことが多く、字数は年間で1冊の本になるくらい。そのために必要なインプットが、私にとっては年100冊の本でした。本を選ぶときの基準は「自分の疑問に答えてくれそう」「好きな著者が書いたから」「書評を読んだから」など様々です。

日本では「なぜ日本企業の成長力は米企業に劣るのか」「なぜ(米IT大手の)GAFAのように、イノベーション(技術革新)を起こせる企業が日本には生まれないのか」といった問いが繰り返されています。

原因は「日本企業は寿命が長すぎ、新陳代謝に乏しい」ことなどに求められがちです。私はあるとき管理職として働く機会があり、以来職場のマネジメントについて科学的に分析した本を読んできました。そして、日米の差の原因としてマネジメントの巧拙について考えてもよいのではないかと思いました。

『スーパー・ミーティング』(サンマーク出版)は、どの企業でも開かれているはずのミーティングについて経営学の研究成果をまとめたものです。ミーティングは従業員から「無駄だ」と低い評価を受けやすく「恐竜が絶滅した真の原因は、食べ物を探すのをやめて、食べ物を探す方法を話し合うミーティングを始めたことだ」など批判的なジョークさえあります。

ただ、同書ではミーティングが組織に不可欠なものとされます。従業員のコミュニケーションや、企業への帰属意識などに影響するからです。

ミーティングは、従業員が組織と目標を共有し自発的に仕事に取り組む態度を示す「従業員エンゲージメント」の引き上げに重要な役割を果たします。管理職がミーティングをどれだけうまく運営するかによって「従業員エンゲージメント」が左右される可能性があります。

このことを認識していた米インテルのアンディ・グローブ元最高経営責任者(CEO)は、すべての新入社員にミーティングに関するトレーニングを施していたといいます。

日本企業は「従業員エンゲージメント」が劣っていて、企業価値向上のボトルネックになっているとの指摘があります。ミーティングに関する実証研究は日本人にとっても興味深い内容だといえそうです。

リーダーシップについて考えるなら『1兆ドルコーチ』(ダイヤモンド社)をお薦めします。同書は元アメリカンフットボールのコーチからシリコンバレーに転身したビル・キャンベル氏の評伝です。カギとなっているのは「サーバント・リーダーシップ」。人を強力に引っ張るよりも、その人の能力を引き出す優れたコーチング力を持っていたのです。

そういう人がGAFAの一角であるグーグル創業者たちに「彼がいなければ成功できなかった」と言わせているわけです。イノベーションとコーチングという組み合わせは日本にとって新しいものと言えそうです。

日本人は海外でうまくいっている経営術などについて、とにかくまねようとします。しかし「腹落ち」せずに導入すると、働く身としてはストレスを感じることも多いです。科学的な根拠について納得した上で取り組めば、効果的に働くことができるようになり、それが企業価値の向上にもつながるのではないでしょうか。

(聞き手は坂部能生)

[日経ヴェリタス2020年5月3日付]

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