米中対立、医療品にも 政権・議会、コロナ機に輸入依存脱却探る

貿易摩擦
2020/4/28 19:05
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【ワシントン=鳳山太成】米国と中国の対立が医療品に広がってきた。新型コロナウイルスの流行を機に、国民の生命に関わる医療品を中国からの輸入に頼る弱みが浮き彫りになっており、トランプ政権や議会は企業に生産回帰を促す政策を検討する。知的財産や農産品が焦点だった米中貿易戦争は年明けに「休戦」したが、新型コロナが新たな火種を生んでいる。

米国は一部の医療品を中国輸入に依存している(21日、ニューヨーク)=ロイター

トランプ大統領は27日の記者会見で、政権内で医療品のサプライチェーン(供給網)見直しを検討していると明らかにした。「巨額の関税を中国に課した。誰もなし遂げなかったことを私は実現した」と強調し、関税により対中輸入を減らすべきだとの持論を改めて展開した。

コロナを機に米国では「安価な医療品を他国に過度に頼ることの脆弱性があらわになった」(米通商代表部=USTRのライトハイザー代表)との危機感が広がる。米国の輸入全体の18%は中国が占める。米ピーターソン国際経済研究所の調べでは、医療品に限れば26%に上る。個人防護用品(対中依存度は72%)、ゴーグル(同55%)など、国民の生命を左右する医療品の多くは中国製だ。

対中強硬派はここぞとばかりに「デカップリング(分離)論」を唱えている。ナバロ大統領補佐官(通商担当)は27日、米FOXテレビで「中国から輸入する抗体検査は粗悪品ばかり」と批判した。別のインタビューでは、政府機関に外国製の医薬品を使わないよう求める大統領令を準備中と明かした。世界貿易機関(WTO)ルールに抵触しかねないが「中国から米国に調達先を戻さないといけない」と主張する。

新型コロナの感染が米国で急増した3月以降、議会でも「脱・中国」の動きが盛んだ。与党・共和党のルビオ上院議員は、野党・民主党で大統領選にも出馬したウォーレン上院議員らと共に、米製薬会社に材料の中国依存度を開示するよう求める法案を提出した。共和党のスコット上院議員が出した法案は中国から医薬品材料の購入を制限するものだ。

苦境にあえぐ企業からは懸念の声が上がる。全米商工会議所など経済団体はウイルスが終息するまで対中関税を解除するよう要請してきた。政権は19日に一般的な関税の納付を90日間猶予すると発表したものの、対中関税は引き続き徴収する。人工呼吸器や医療用マスクなど一部の中国品に課した対中関税の適用を外したUSTRは、企業が求める全面解除には応じていない。

新型コロナ危機は、世界経済を揺るがしてきた米中貿易戦争がひとまず落ち着いた直後に起きた。2月14日に発効した協定では中国が20~21年の2年間でサービスを含む対米輸入(19年は1638億ドル)を2千億ドル増やすという野心的な目標を設けた。感染拡大の影響で米中双方の供給、需要に制約がかかり、実現は難しくなっているが、トランプ氏は「中国は約束を守るだろう」と厳しい姿勢を崩さない。

トランプ政権下の国家経済会議(NEC)で副委員長を務めたクリート・ウィレムス氏は新型コロナ危機が中国への不信感を著しく高めたと指摘したうえで、「すべて国内生産する非現実的な政策ではなく、信頼できる同盟国との関係を強化すべきだ」と提案する。

11月の大統領選を控え、トランプ氏だけでなく、民主党候補のバイデン前副大統領も中国に甘い姿勢は見せにくい。与野党問わず内向きの保護主義の傾向が強まっており、米中対立が激しくなりそうだ。

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