新型コロナ収束のカギ、治療薬・ワクチンはいつ?

BP速報
2020/4/28 17:55
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3次元プリンターによる新型コロナウイルスのモデル=ロイター

3次元プリンターによる新型コロナウイルスのモデル=ロイター

日経バイオテク

全世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症だが、いつ、どのような形で収束に向かっていくのであろうか。治療薬とワクチンの開発状況と見通しについて、現時点の情報を基に分析した。

治療薬については、主にドラッグリポジショニング(既存薬の転用)の評価が進んでいる。新薬を一から開発するには最低でも数年かかるため、転用できそうな薬を片っ端から試しているのが実情だ。新型コロナウイルス感染症の治療薬は(1)ウイルスの侵入・増殖を防ぐ抗ウイルス薬(2)重症状態を改善する抗炎症薬――に分けられる。

抗ウイルス薬としては、富士フイルムホールディングス傘下の富士フイルム富山化学が創製したインフルエンザ治療薬「アビガン」(ファビピラビル)や、米ギリアド・サイエンシズがエボラ出血熱の治療薬として開発していたレムデシビルなどが挙げられる。これらは現在、最終段階にあたる第3相臨床試験を実施中であり、早ければ2020年後半の実用化が期待される。

これら抗ウイルス薬は、主に発症後に投与することで重症化を防ぐ効果や回復を促す効果が期待される。アビガンやレムデシビルが重症患者への投与で著効をみせたとの報道もあり、注目が集まっている。

抗炎症薬は、主に重症患者にみられる過剰な免疫反応を止めることで、肺が機能不全状態に陥るのを抑制する効果が期待される。抗炎症薬としては、中外製薬が創製した関節リウマチ治療薬「アクテムラ」(トシリズマブ)や、米リジェネロンが創製し仏サノフィが販売する関節リウマチ治療薬「ケブザラ」(サリルマブ)などが挙げられる。これらも第3相臨床試験などを実施中であり、早ければ20年後半の実用化が期待される。

治療薬はウイルスの感染を防ぐわけではないが、感染者の致死率や重症化率を下げるために必要であり、開発が急がれる。

■ワクチン開発は難航も予想される

次にワクチンの開発状況については、代表的なものとして、米バイオ企業のモデルナが米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)と共同で開発している「メッセンジャーRNA(mRNA)」と呼ばれる遺伝物質の特性を活用したワクチン「mRNA-1273」が挙げられる。

このワクチンは、新型コロナウイルスが感染する際に必要なスパイクタンパク質を送り込み、体内でスパイクタンパク質を作らせることで免疫を導くワクチンである。3月中旬から第1相臨床試験を開始し、安全性・免疫原性について評価している。

また、米バイオ企業のイノビオ・ファーマシューティカルズが開発しているDNAワクチンの「INO-4800」も4月に臨床試験を始めた。いずれも実用化まで早くて12カ月から18カ月程度かかると想定されている。

ただし、ワクチン開発は治療薬以上に一筋縄ではいかない可能性がある。ワクチン開発の懸念として挙げられるのが、抗体依存性感染増強(ADE)という副作用リスクの存在だ。

ADEは、何らかの原因で抗体がウイルスの感染・炎症化を促進してしまい、重症化を引き起こす現象のことである。重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)のワクチン研究においても動物実験でADEのような現象が確認されており、新型コロナウイルス感染症のワクチン開発の大きな壁となって立ちはだかる可能性がある。

また、ウイルスが変異する可能性も懸念として挙げられる。新型コロナウイルス感染症のウイルスは数千もの変異が確認されている。ワクチンがターゲットとしている部位に変異が起きた場合、ワクチンの効果が減弱化してしまう可能性があるため、この点もクリアする必要がある。

そうなると、我々は悪いシナリオも想定しておかなければならない。ワクチンの開発失敗である。ワクチンの開発が遅れれば、集団免疫を獲得する時期が遅れ、それだけ経済活動の再開が遠のくことになる。

(アーサー・ディ・リトル・ジャパン プリンシパル 花村遼、同コンサルタント 田原健太朗)

[日経バイオテクオンライン 2020年4月28日掲載]

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