外出自粛・巣ごもりで飲酒量増加 依存症悪化の懸念も

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛が広がる中、アルコール依存症の患者の増加や症状悪化を懸念する声が高まっている。先行きの見えない不安やストレスがたまって酒量が増えてしまったり、自助グループの会合に参加できなくなったり。専門家らは「支援に制約もあり、いっそうの警戒が必要だ」と呼びかける。
「急に暇になり、昼からビールを飲んでしまった」「夫がコロナを理由に会社を休み、朝から飲酒しているけど大丈夫でしょうか」
アルコールや薬物、ギャンブルなど幅広く依存症のケアに取り組む一般財団法人「ワンネスグループ」(奈良県大和高田市)が電話やメールで受け付ける相談窓口には3月下旬から、飲酒に関する相談が急増している。
同グループによると、これまではギャンブルや薬物、ゲームに関する相談が多かったが、4月に入ると飲酒関連が最も多くなった。外出制限や休業などでストレスがたまり、飲酒の習慣がある人が多めに飲んでしまう傾向があるという。
治療中の依存症患者が、施設の利用中止で治療プログラムが実施できなくなったり、自助グループの会合が開催できなくなったりして不安を訴えるケースもあり、同グループは急きょ、自己管理のチェックリストを公表した。三宅隆之共同代表は「支援の網から漏れてしまう人が出てこないか心配だ」と話す。

外出自粛要請に伴い「オンライン断酒会」を開く取り組みも出ている。愛媛県内で活動する自助グループ「親愛友志同盟」は4月から、LINEのグループ通話の機能を使い、ほぼ毎日、断酒会を開催している。
グループ通話には本人や家族、医療従事者など30人超が参加。公民館などで行う普段の会合と同様に、体験談の発表や雑談など2時間程度行う。同会の理事長は「仲間の再飲酒が怖い。何とかつながりを維持していきたい」と話す。
厚生労働省によると、国内には多量飲酒(1日平均の純アルコール換算で60グラム以上)の人は1千万人、依存症の患者は100万人いるとされる。
アルコール依存症などの治療に関わる大船榎本クリニック(神奈川県鎌倉市)の斉藤章佳・精神保健福祉部長は「東日本大震災などの災害や、リーマン・ショックの時も患者数の増加傾向が見られた。ストレスのはけ口が飲酒に向かいやすく、どれだけの影響が出ているのかは見当がつかない」と指摘する。
世界保健機関(WHO)も3月、ストレスや孤立によるアルコール摂取のリスクを注意喚起し「有害な飲酒が感染リスクを高め、治療効果も低下させうる」とした。米国の支援団体が在宅勤務の労働者を対象に行った調査では、3割強が「在宅勤務中に飲酒したことがある」と回答した。
斉藤氏は「飲酒に不安を覚えている人は、日々の飲酒の開始時間や酒量などのルールを設けたり記録したりすることを心がけてほしい。『オンライン飲み会』も人とのつながりを保つ意味では悪くはないが、際限なく飲まないよう、あらかじめ酒量を決めるなどして」と呼びかけている。

新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
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