外出自粛でも婚活 入会相談2割増、交際率3割増も

新型コロナウイルスによる外出自粛の要請を受け、自宅で過ごす時間が長くなる中、家族の存在を改めて考える「単身者」が増えている。政府や自治体が呼び掛ける「自宅で過ごそう」に従えば単身者は誰にも会えない日々が続く。一方で結婚に向けた「婚活」をしたくても、自粛ムードでは新たな出会いも得にくい。
ソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保が求められる昨今、本来は将来の伴侶との社会的な「接近」を目指す活動である婚活は、いまどんな状況に置かれているのか――。
結婚相談所のサンマリエ(東京・新宿)ではこの4月、前年同期と比べて婚活や入会に関する相談が約20%増えている。サンマリエは通常であれば来店で実施する約40分間の無料相談を、緊急事態宣言を受けて4月8日からオンラインでも開始。サンマリエのマーケティング課の鈴木志穂氏は「『将来のことを考えるきっかけになった』『家族との絆について思い返してみた』といった理由を話す相談者が多い」と話す。年代は20代~40代まで。特に女性からの相談が増えているという。
結婚相談所「NOZZE.」を手掛ける結婚情報センター(東京・新宿)も4月10日から無料の「婚活カウンセリング」を実施。入会や婚活の問い合わせ件数は前年の4月よりも1割以上伸びているという。20~70代から問い合わせがあり、30~40代の女性が最も多いという。
昭和40年代に年間100万件を超えていた婚姻件数は、右肩下がりの傾向が続く。ただ、東日本大震災の発生した翌年の2012年は婚姻件数が前年より約7000件増加。「絆婚」として話題になった。今回も自宅で、1人で過ごさざるを得ない時間が増えることで結婚について改めて考える人が増える可能性はありそうだ。
ただ、政府が人との接触を8割減らすよう要請している外出自粛下では、婚活したくても出会いの機会は作りにくい。一方で子供が欲しいと考えている人などにとっては年齢的な制約から「時間を無駄にしたくない」といった声も上がる。在宅勤務で通勤時間が節約できれば婚活に費やせる時間が増えている環境でもある。こうした要望に応えるため、「オンラインお見合い」サービスも続々スタート。オンラインならでの利点も現れている。
対面に比べて交際成立率が高いオンラインお見合い
サンマリエは4月1日から「立ち合い付きオンラインお見合いサービス」を開始。紹介状を見てお互いが会いたいと思った場合、ホテルのラウンジなどでの面会に代わり、40分程度のオンラインでのお見合いを実施する。オンラインでも、男性はスーツにネクタイが基本。担当の仲人が冒頭5~10分間立ち会い、オンラインによる緊張をほぐす。
会員向けにオンラインのお見合い講座も実施し、背景に洗濯物などが映り込まないよう指導するほか、女性であれば「普段のメークより濃いめに、特に眉尻は濃く書いた方がよい」などとアドバイス。逆光にならず、胸上が写る位置にカメラを設定するのが効果的という。
交際成立率が、通常の対面に比べて20~30%高いという思わぬ効果も。同社の鈴木氏は「30~40代の人はオンラインでの面会にもあまり抵抗感がなさそうだ。在宅勤務などで時間が増えている人も多いので、自分の将来のことを改めて考えるきっかけにしてほしい」と語る。
婚活サービスを手掛けるLMO(福岡市)は4月から、30~45歳を対象に毎日「オンラインお見合いパーティー」を開始。4月は延べ400人程度が参加する見通しだ。身分証明書で参加者の身元を確認している。
同社の高田康太代表は「対面の婚活パーティーなどと違い、在住地域を問わずに出会いの機会が得られる」とオンラインならではのメリットを強調。同社は日によって対象とする在住地域を変えて開催している。「その地域の出身者や、転勤で地方へ異動している人なども、将来住みたい場所で出会いの機会を得られる」(高田氏)と語る。
エウレカ(東京・港)も、オンラインの恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs(ペアーズ)」で4月20日からアプリ内でビデオ通話が可能な「ビデオデート」機能を追加。3往復以上のメッセージのやり取りをすると、ビデオ機能が使える。20年後半からの導入を予定していたが、前倒ししたという。「オンライン上であれば、直接会う前の段階で会話が盛り上がるかどうか気軽に確認できる」(同社広報)とする。
一方で、在宅勤務により自宅で過ごす時間が増えることなどによる「コロナ離婚」への懸念も高まっている。民泊施設やホテルなどの約800部屋を運営するカソク(東京・新宿)などは、4月3日から「コロナ離婚」防止のため、部屋の一時提供を開始。主にインバウンド客らが宿泊していた部屋の利用客が減少していることから、こうした部屋を通常より2~3割安く提供する。
これまでに約130件の問い合わせがあり、「配偶者がコロナウイルスに対して危機感が薄く外出してしまうことに困っている」「自宅にいる時間が長くなった夫と顔を合わせたくない」といった理由で2週間から1カ月の利用を望む人が多い。利用者は女性が6割、男性が4割で、30~40代が中心という。「自宅で過ごす時間が長くなり、暴力がエスカレートして逃げ場がなくなった」といった家庭内暴力に悩んでいるという人からの相談も、少なくとも5件あった。
すでに30組が実際に宿泊している。同社の担当者は「日本は各世帯の部屋が狭いという特徴もある。コロナの影響で問題が起きたら、一度距離を置いて、家族の関係を見直してほしい」と語る。
(日経ビジネス 編集部)
[日経ビジネス電子版2020年4月27日の記事を再構成]

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