働き盛りの男性2人がサラリーマン卒業を決意した理由
アーリー・リタイア成功への道(上)

日経マネー特集
2020/5/4 2:00
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写真はイメージ=PIXTA

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株式投資などで十分な資産を築いて会社を辞め、自由な生き方を手に入れる――。米国のミレニアル世代を中心に支持を集めている「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」。早期の経済的自立を目指す志向は、日本の若い個人投資家層にもじわりと広がってきている。株式投資で資産を築き、アーリー・リタイアをかなえた穂高唯希さん(ハンドルネーム)と、近く実現予定の桶井道さん(同)の2人に、早期退職をかなえるための方法を取材した「アーリー・リタイア成功への道」。1回目は、早期退職を目指したきっかけと資産の増やし方を紹介する。

──アーリー・リタイアをしようと思ったきっかけを教えてください。

桶井道さん(以下敬称略) 20~30代前半の頃は会社で猛烈に働いていました。上昇志向もあって定年まで働くものと思っていましたね。ところが30代半ばになって55歳からの給料がカットされる役職定年制度が導入され、同じ仕事でも収入が減ることへの抵抗感が出てきました。

転機を迎えたのは40歳手前の頃です。入社以来実家にお金を入れていたのですが、親から「全額ためておいたから、自分のために使え」と預金通帳を返されました。その際に相続する予定の資産も教えてもらい、今後の人生をどう生きるか考え直しました。当時の個人資産は運用によるものと生前贈与を合計して6000万円と相応にあったことと、体力の衰えを感じ始めていたこともあり、そこからアーリー・リタイアを目指しました。40代前半で時短社員となり、仕事のペースをダウン。近く退社するつもりです。

穂高唯希さん(以下敬称略) 入社初日にアーリー・リタイアを決意しました。自由に生きてきた学生時代と違い、「普通でいなければならない」という空気を感じ、精神的に縛られているような強い違和感がありました。

もともと入社する前から「ファイナンシャル・インディペンデンス(FI、経済的自立)」に到達したいとは考えていました。経済的制約から自由になり、自分の望む生き方をしたいと。精力的に業務に取り組む一方で、入社してからは30歳でFIを達成し、早期リタイアするという目標を掲げました。その目標に向けて「三菱サラリーマンが株式投資でセミリタイア目指してみた」というブログも立ち上げ、2019年夏にFIREを実現できました。

■収入の大半は投資に回して資産形成

──アーリー・リタイアに向けてどのようなことをしましたか。

桶井 まず人生100年を見越してストック(資産)とフロー(収入と支出)をエクセルで具体的に試算しました。もともと社会人3年目ぐらいからキャピタルゲイン狙いで日本株に投資をしてきましたが、資産を積み増すために投資を加速しました。その過程で高配当株にシフトし、海外投資も始めました。

あとはできるだけ支出を切り詰め、収入の大半を投資に回しました。40代前半ぐらいで、自然災害に遭うなど想定外の事態が発生しても耐え得る資産水準に到達しました。この時点で時短社員の道を選び、ダウンシフト(仕事のペースを落としゆとりある生活に切り替えること)に移りました。いきなりアーリー・リタイアしなかったのは、退職という劇的な変化は心理的負担が大きいと考えたからです。アーリー・リタイアに向け、自分を客観視することを目的に、「おけいどんの適温生活と投資日記」というブログも始めました。

穂高 私は給与の8割とボーナス全額を投資に回していました。中学時代から為替に深い関心があり、外国為替証拠金(FX)取引も長年やっていました。ただトータルで損失とはならなかったものの、運用に安定性を欠き、限界を感じていました。

そこで株式投資に本腰を入れました。日々相場を見なければならず、継続した安定収益を得にくいFXと違い、着実に配当金を積み上げやすい高配当株・増配株投資に軸足を移しました。当初は日本株だけでしたが、米国企業は利益率がより高く株主還元姿勢も強いと気付き、すぐにそちらを主力にしました。29歳でFIに到達し、19年の夏にアーリー・リタイアすることができました。

■どこまで生活費を減らせるかを試す

──収入の大半を投資に回すのは大変ではなかったですか。

桶井 お金持ちになってから投資を始めようと思ったのでは、いつまでたっても投資できないと思っていました。ですから「ケチは財を成す」を座右の銘に据え、小さなお金も大切にしました。

穂高 支出の最適化が大事だと思います。私は自分を深く知れば、より主体的に生きることができ、心地よい支出水準が見いだせると考えています。

その水準を探るため、自分なりに色々試してもみました。例えば住む場所を東京・目黒駅近の高級マンションにしてみたり、逆に駅から遠く家賃の安い物件にしてみたりしました。分かったことは、高級マンションの満足感は最初だけで、自分にとってはさほど重要ではないということです。実際に色々試して、程度の両端を知れば、どの程度の支出水準が自分にとって心地よいのかが分かります。

──具体的な倹約法は。

桶井 意外なものがお金になるので、それを活用しました。例えば、クレジットカードの会報誌は古本店に持ち込めば1冊5円。古くなったメガネはリサイクル店で1000円に、使わなくなったネクタイピンは1万円になりました。どんなものも捨てればごみですが、リユース・リサイクルに回せば資源ですし、それがお金になるなら一石二鳥です。

後は飲み物ですね。ランチタイムに飲み物にお金を使う習慣は付けません。缶コーヒーを習慣的に飲むだけで年間5万円、お店のドリンクなら年間10万円もかかってしまうのですから。同様の理由で、自販機やコンビニでは飲み物を買いません。基本的に水かお茶を入れたマイボトルで済ませています。

穂高 金銭は、自由な時間を得るための切符だと考えています。「今自分が金銭を投じようとしている対象は、FIを達成する時期を遅らせてまで欲しいものか」を常に自問していました。結果的に、自分が価値を感じるものにのみ金銭を投じることにつながりました。例えば水筒を持ち歩き、飲み会など会社の業務外の事項は取捨選択しました。健康維持のため、どこにでもある階段を活用して足を鍛えるのもそうです。既にあるものを活用し、価値観に応じて支出を最適化することが大切だと思います。

ただ、価値を感じるものには思い切って投資するというのも大事だと思います。我慢は続きません。楽しければ続きます。支出にメリハリをつけることは一案だと思います。

桶井 同感です。倹約だけでは心理的負担が大き過ぎてストレスを抱えますから。たまにぜいたくしてお金の威力を知れば、貯蓄や投資への意欲が増大すると思っています。

■人との関わりのため働く

──この先、再び働くつもりはありますか。

穂高 取り組む可能性のあるものとして、いくつかあります。ただ、リタイア後はなんだかんだとにかく忙しいので、まずは落ち着いたらゆっくり休み、その時に自分が何を感じ、何に関心を持ち、どういう心境になるのか等をじっくり客観視したいと思っています。その上で、自身の信念に沿い、 そしてなにか人さまの役に立てることに取り組めればと思っています。

桶井 承認欲求をどう満たすのかは難しい問題です。完全退職後は今のところ、親の会社を緩く手伝い給料をもらう予定です。家事にも携わるつもりです。家族全員が楽になればいいと思います。親が会社をたたんだ後は、地元で週3日の短時間アルバイトや在宅ワークをする考えもあります。

ただ、それでもどこかに所属することに対する欲求が満たされないという意味で、孤独は感じます。こればかりは少しずつ変化に慣れていけると信じるしかないですね。あとは、ツイッターなどでの人とのつながりも大切にしていきたいと思っています。

(川路洋助)

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