「離島に来ないで」 医療脆弱、新型コロナに厳戒

2020/4/25 15:13
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フェリー乗船前に全乗客の体温を確認する(24日、那覇港フェリーターミナル)

フェリー乗船前に全乗客の体温を確認する(24日、那覇港フェリーターミナル)

新型コロナウイルスの感染拡大で東京都などが25日から異例の「12連休」を呼びかけるなか、各地の離島が観光客の来島に危機感を募らせている。本土と比べて医療体制が脆弱で、感染者が広がれば治療などの対応は困難。物資の輸送を担う飛行機や船で感染者が出れば、ライフラインが止まる恐れもある。観光は島を支える重要な産業だが、地元自治体は「今は来ないで」と訴えている。

「本土にある学校の寮が閉鎖され、やむを得ず島に帰省する学生もいる。島との往来は止められない。せめて観光など不要不急での来島は控えてほしい」。4月下旬、鹿児島県奄美市の健康増進課の担当者は訴えた。

奄美市の奄美大島で17日、自営業の40代男性と同居する30代女性の感染が確認された。男性は2日に来島した埼玉県の男性らに同行し、遊漁船で2日間過ごした。埼玉県の男性は滞在中に発熱し、島を離れた後で感染を確認。その後、奄美市の男女が発熱や喉の違和感を次々に訴えた。

遊漁船の乗船者や職場の同僚など島内の濃厚接触者は12人に上り、検体を鹿児島市に輸送してPCR検査を実施した。島内にある感染症の専用病床は4床だけ。医療機関は限られ、検査センターもない。県の担当者は「クラスター(感染者集団)が発生すると対応しきれない」と警戒する。

奄美大島で旅館を営む女性は「いつもなら観光客は大歓迎だが、今は自分が感染するのも怖い」と話し、東京や大阪からの予約は断っているという。家族にも休業するよう求められているが、「生活もあるので、常連客や知り合いだけ受け入れている」と話した。

新型コロナの感染は離島でも徐々に広がっている。13日に初の感染者を確認した沖縄県石垣市。飲食店を介した濃厚接触者は数十人で、未確認の感染者がいる可能性もある。市は16日、独自の緊急事態宣言に踏み切り、観光客らの来島を抑えるため、22日から市内11カ所の観光施設などを使用禁止にした。

同県粟国村の新城静喜村長は「人口約700人の小さい島なので感染者が出ると一気に広がりかねない」と危機感を募らせる。村がある粟国島は医師と看護師が1人ずついるだけ。重症化しやすい高齢者が住民の約4割を占め、感染が広がれば「医療崩壊」が現実味を帯びる。

感染者がまだ確認されていない都の島しょ部も警戒を強めている。

小笠原諸島の小笠原村は大型連休は例年、観光客が押し寄せ、5月中に島の総人口(約2600人)に匹敵する約2400人が来島する。ただ、村には感染症指定病院がなく、医師が常駐する診療所は父島と母島で計2カ所のみ。東京都港区の竹芝桟橋と父島を結ぶ船便は1週間に1度しか運航しておらず、重症者が出れば自衛隊に搬送を依頼するが感染が疑われる場合は適切な検査は難しい。

同村は23日、不要不急の来島に関する自粛のお願いを「強く要請」に引き上げた。観光は同村を支える大きな柱で、担当者は「大型連休には特に多くの人に来てもらうが、安全を守れないため仕方ない」と無念さをにじませた。

2019年の大型連休中には、4千人近くが訪れた新島村の新島と式根島は、3カ所のキャンプ場と約80の宿泊施設を休業中。両島を結ぶ連絡船で渡航する旅行者について、宿泊場所の確保ができていない場合は乗船を断っている。約2600人の島民の4割が65歳以上で、医療従事者も簡易式の人工呼吸器も限られており、帰省自粛を呼びかけている。

■生活必需品、供給に不安も

 離島は地続きの地方と異なり、食料品や生活必需品などのライフラインを限られた船便や航空便に依存している。新型コロナウイルスの感染が広がるなか、物資の輸送網の維持も課題だ。
 沖縄県粟国村で唯一の輸送手段は村営フェリーだ。村民生課は「乗組員の感染が疑われた場合、運航できなくなるかもしれない」と気をもむ。
 感染を防ぐため、24日から1日1往復の運航本数を半減した。食料品などの供給も通常の半分に。村は普段から1週間分の食料の備蓄を呼びかけているが、新城静喜村長は「船が出ないと食料を確保できない島民が出てくる」と懸念する。
 日本郵便は8日から沖縄県と県外との間でのチルド・冷凍ゆうパックの引き受けを停止した。同社沖縄支社によると、航空便の減便に伴い輸送できる航空貨物の量が減った。担当者は「今以上に減便が深刻になると離島の輸送網を維持できなくなる」と危惧する。
 鹿児島県本土と奄美群島、沖縄を結ぶフェリーを運航するマルエーフェリーとマリックスラインは13日、寄港する全港で乗船前の体温測定を始めた。37.5度未満なら乗船申込書に「検温済み」の印を押し、乗船手続きに入る。マリックスラインの担当者は「乗組員の感染などで運航を止めないよう、打てる手は打ちたい」と話した。
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