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センバツ中止、球児にエール 高嶋氏「今は心鍛えて」

新型コロナウイルスの感染拡大で、関西の学生スポーツ界にも甚大な影響が出ている。選抜高校野球などの大会の中止や延期が相次ぎ、普段の練習もままならない状況だ。スポーツ部活動に青春をささげる若者たちは今、どう過ごせばいいのか。歴代最多の甲子園通算68勝を挙げるなど関西の学生スポーツ界を代表する指導者の一人、智弁和歌山高校野球部前監督の高嶋仁氏(73)に聞いた。

高嶋氏(左)は困難に直面した時に「前を向けるかが試されている」と語る(写真は2018年)

高嶋氏は2018年の勇退後も名誉監督として同校野球部に籍を置く。同校は中止となった今春の選抜に出場予定だった。現在、高校2年の孫が同校で甲子園を目指しており、若者がスポーツに打ち込む機会を奪われている現状は人ごとではない。

「(夢の舞台に立てなかった球児たちに)かける言葉が見つからない。立ち直るには時間が必要だと思う」と球児たちの今の心情を思いやった。そして「今は体ではなく心を鍛える時。競技とは別のことにも取り組むことで、心を鍛えることができるかもしれない」と説く。

高嶋氏自身も野球から離れた時期に指導者としての視野が広がった経験がある。08年に教え子への暴力で謹慎に。なぜ踏みとどまれなかったのか。自らを見つめ直すために四国へ遍路の旅に出た。「それまで野球しかしてこなかったので、お遍路さんとして歩いていると、初めて経験することが多くあった」

ある日、遍路道で「一瞬の感情で地獄に落ちる人もいる」と書かれた札に目が留まり、「何やこれは。俺のことや」と衝撃を受けた。以来、この格言が指導の現場で自らを戒めてくれた。もう歩けないと弱気になった時に地元の人から励ましの声を掛けられると、あと10キロ歩く気力が湧いた。「選手が苦しんでいる時も、言葉掛け次第で選手が生き返ることを学んだ」

当たり前と思っていた日常を失ったことで見えることもある。だから、若者たちにもスポーツができない今の時間を使って本を読んだり、周囲の信頼できる大人に人生についての助言を求めたりと、「普段とは違うことに取り組んで、自分の心を鍛える時間にあててほしい」と願う。

高嶋氏は指導歴約50年であまたの選手と接してきた経験から「予期せぬ事態が起こった時も前向きに対応できるのがいい選手の特徴だった」と述懐する。まさに今、予期せぬ事態のまっただ中だ。「人生の困難を乗り越えられる強い心を育むことがスポーツをする目的の一つ。この局面で前を向けるかが試されていると思う」と、スポーツに青春をささげる全ての若者にエールを送った。

(田村城)

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