人気作家の代表作、電子書籍化続々 コロナ外出自粛で
新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛要請が続く中、ベストセラー作家の代表作を電子書籍にする動きが広がっている。書店に足を運びづらくなっている状況を受け、今まで電子化に慎重だった作家が自ら出版社に提案しているケースが目立つ。

文芸春秋は4月17日、小説「カラフル」など、直木賞作家の森絵都の代表作計8タイトルを電子書籍版で配信した。以前、同社が電子化を打診した際は「まだ早いのでは、との返答だった」(電子書籍編集部)が、今回は著者側から提案があったという。森は版元を通じ「媒体を超え、時を超えて、これまで書いてきた物語が、また新しい読者と出会ってくれることを切に願っています」とコメントした。
講談社など7社は同月24日、東野圭吾の小説計7タイトルを一斉に電子書籍化した。直木賞受賞作の「容疑者Xの献身」など、100万部を超え、ドラマ化・映画化された人気作ばかり。「流星の絆」の版元である講談社の担当者は「紙と電子書籍で事業を切り分ける時代ではなくなっている」(文芸第二出版部)と指摘、さらに電子書籍を強化するという。
太田出版でも、今まで電子化に消極的だった作家からの依頼が相次いでいる。既に百田尚樹の小説「永遠の0」の電子書籍を配信。単行本出版時に電子化を許諾しなかった他の著者からも提案があるという。「電子書籍に関わっていかないと読まれる機会を失してしまうと考えられたのでは。今後は先に電子で出すケースも増え、紙でほしい読者はオンデマンドで取り寄せるということも増えるだろう」と担当者は分析する。
出版科学研究所(東京・新宿)によると、2019年の電子書籍の推定販売金額は349億円で、紙の書籍の5%にとどまっている。漫画を除いて日本ではなかなか浸透してこなかった電子書籍が、これを機に広がる可能性もある。
(光井友理)

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