Facebook、インド財閥に6000億円 ECで市場開拓

2020/4/24 22:15 (2020/4/25 5:29更新)
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リライアンス傘下のジオはインド通信最大手(ムンバイ)=小林健撮影

リライアンス傘下のジオはインド通信最大手(ムンバイ)=小林健撮影

【シリコンバレー=奥平和行】米フェイスブックがインドで巨額投資に踏み切る。大手財閥のリライアンス・インダストリーズの傘下企業に57億ドル(約6100億円)を出資する。電子商取引(EC)分野で共同事業を進める。個人情報保護が厳格になり広告中心の事業モデルに陰りが出るなか、巨大市場の深掘りで成長の勢いを取り戻したい考えだ。

■過去2番目の大型投資

インド通信最大手のジオ・プラットフォームズに9.99%出資する。2014年に対話アプリ「ワッツアップ」の運営会社を218億ドルで買収したのに次ぐ大型投資だ。

「投資をするだけではなく、インド中の人々が買い物をする機会を広げるためにいくつかの主要事業で協業することを約束するものだ」。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は21日、出資の意義を強調した。

ジオは人口13億人のインドで4億人近い携帯電話の契約者を持つ。フェイスブックのSNS(交流サイト)利用者はインドに3億人以上、ワッツアップの利用者は4億人に上る。両社の顧客を合わせ、巨大なサービス提供の基盤を築く狙いだ。

■メッセージサービスに決済機能

ザッカーバーグCEOは19年、「(傘下のワッツアップなどの)メッセージサービスに決済や小売りといった機能を追加する」と説明し、収益源を拡大する方針を示している。プライバシー問題や市場の成熟により「ネット広告頼み」を続けることが難しくなってきているからだ。

伸びしろが大きいインドには以前から興味を示していたが、これまでは成功しているとは言い難い。14年にインドで無料のネット接続サービスを提供する方針を示したが、当局などが競争をゆがめることを懸念して頓挫した。18年にはワッツアップを使った送金・決済サービスをインドで提供する計画を打ち出したものの、当局の承認が得られない状態が続いた。

足踏みが続いた結果、インドは利用者こそ国別で世界最多となったものの十分な収益につなげられていない。フェイスブックは19年10~12月期に世界で利用者1人当たり8.52ドルの売上高を確保し、北米では40ドルを上回った。一方、インドを含むアジア太平洋は3ドル台にとどまる。

■インド側にも「大きな意味」

ジオにとっても「大きな意味を持つ」(印エーデルワイス証券)との見方が多い。フェイスブックが蓄積した人工知能(AI)やビッグデータ分析といった先端技術を学べるからだ。背景には、世界的に通信のみで稼ぐのは難しくなり、関連サービスの重要性が高まっている事情がある。

リライアンスには外部資金で財務体質の改善を急ぐ思惑もある。有利子負債は19年3月末時点で約4兆円規模と、16年の携帯事業参入前より6割増えた。19年夏の株主総会で同社は「21年3月までに実質無借金にする」と表明した。

ただ、両社が照準を定めるインドのEC市場の競争は厳しい。米ウォルマート傘下のフリップカートと、米アマゾン・ドット・コムがそれぞれ3割強のシェアを持つとみられる。一方、地元の中小小売店は存続が脅かされるとEC事業者を強く批判している。フェイスブックとジオは中小がネット通販を始めるのを支援する事業形態をとって、先行する2社の背中を追う。


■インド、対米関係は対立から「雪解け」
 フェイスブックによる大規模投資の背景には、規制や関税を巡って対立してきた両国の関係緩和がありそうだ。
 インド政府は2019年2月、外資企業のネット通販に対する規制を強化した。商品の仕入れ先と独占契約を結ぶのを禁止した。大量調達による安値販売を封じ、地場の小売業者を保護するものだ。米アマゾン・ドット・コムや同ウォルマート傘下のフリップカートを狙い撃ちしたとみられている。
 米国は二輪車などの輸入関税が高いインドにかねて不満を募らせていたこともあり、19年6月、新興国向けの関税を優遇する制度からインドを除外した。インドはすかさず米国産品28品目の関税を引きあげるなど、応酬が続いていた。
 雰囲気が変わったのは20年2月だ。トランプ氏がインドを訪問し、首脳会談で新たなエネルギー供給や武器の売買で合意した。直後にインド政府は小売業の外資規制を緩和し、米アップルがインドに直営店を開くとの表明につながった。米印は今後、さらなる「大型の貿易交渉」も進めるという。
■モディ首相と親密な関係
 フェイスブックの出資受け入れも、インド政府の意向と無縁ではありえない。リライアンス・インダストリーズはモディ首相がかつて州首相を務めた西部グジャラート州に巨大製油所などを持ち、創業家のアンバニ家と首相は親しいことで有名だ。ムケシュ・アンバニ会長兼社長は今回の提携は「首相が掲げるデジタル振興策『デジタル・インディア』の実現にも寄与する」と強調する。
 一方、インド政府は中国にはけん制姿勢をみせている。このほど外資規制を見直し、中国企業などがインド企業に出資する場合は認可が必要だとした。インドには自動車や電機などの分野で既に多くの中国企業が進出している。硬軟織り交ぜた政策を通じて外国からの投資を呼び込む戦略だ。(早川麗)
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