新型コロナ、既存薬転用 数カ月で結果が続々判明へ

BP速報
2020/4/24 16:24
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3次元プリンターによるコロナウイルスのモデル=ロイター

3次元プリンターによるコロナウイルスのモデル=ロイター

日経バイオテク

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、世界中で医療崩壊のリスクが顕在化している。世界経済も大恐慌以来で最大級の落ち込みとなる見通しで、各国政府が対応に追われている。未曾有の事態に、新型コロナウイルス感染症の治療薬とワクチンの一日も早い開発が求められている。

米国や欧州、中国の臨床試験データベースによれば、4月20日時点で、新型コロナウイルス感染症に対する治療薬(中医学も含む)やワクチン、検査技術などの臨床試験は計1300。治療薬の開発は、既存薬の転用と新薬の探索という両輪で開発が急ピッチで進められている。そのうち、既存薬の転用については、複数の臨床試験の結果が数カ月以内に得られる見通しだ。

■抗ウイルス薬で有望視されるレムデシビル

これまでのところ、ヒトへの投与経験がある既存薬からの転用で、新型コロナウイルス感染症を対象に臨床試験が進んでいるのは、抗エボラウイルス薬として開発されていた「レムデシビル」、マラリア感染症薬「クロロキン」、全身性エリテマトーデス薬「ヒドロキシクロロキン(商品名プラニケル)」、抗エイズウイルス薬「ロピナビル・リトナビル(カレトラ)」など。また国内では、富士フイルムホールディングス傘下の富士フイルム富山化学の抗インフルエンザウイルス薬「ファビピラビル(アビガン)」や、帝人ファーマの気管支喘息薬「シクレソニド(オルベスコ)」、日医工の急性膵炎薬「ナファモスタット(フサン)」なども治療薬候補に挙げられている。

そのうち一定以上の規模の臨床試験の結果が近く得られそうなのがレムデシビルだ。米ギリアド・サイエンシズは、中等症の入院患者1600人を対象としたものと、重症の入院患者2400人を対象とした、2つの非盲検ランダム化比較試験を実施しており、重症患者を対象とした臨床試験は既に患者の組み入れを終えている。同社は5月にも、2つの臨床試験に組み入れられた計1000人の患者(内訳は不明)について、データを公表する予定。こうしたデータなどを踏まえて、承認申請の可否を判断するものとみられる。

ギリアドの2つの臨床試験に参加し、100人以上の患者にレムデシビルを投与した米国の病院で、ほとんどの患者が重度だったにもかかわらず、大部分で症状が改善、1週間後に退院できたとの一部報道があった。また、米国立衛生研究所(NIH)やギリアドの研究グループは4月15日、新型コロナウイルスに感染させたアカゲザルにレムデシビルを投与したところ、レムデシビル投与群で肺ウイルス量が減少したなどとする研究結果を報告している。こうしたことから、臨床試験の結果が有望視されているところだ。もっとも、ギリアドの臨床試験はいずれもプラセボ(偽薬)対照ではないことには留意が必要だ。

レムデシビルに関しては、中国の中日友好医院の主導で、軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症の患者308人と、重症の患者452人を対象とした、2つの二重盲検ランダム化プラセボ対照試験が行われており、20年4月には結果が判明するはずだった。しかし、中国での感染が抑え込まれたことから、登録基準を満たす患者がほとんどいなくなり、軽症から中等症に対する臨床試験は一時停止されている。また、重症に対する臨床試験も、237人しか患者登録できないまま終了しており、当初の予定と異なり、これらの臨床試験から得られる結果は限定的なものになりそうだ。同時に、時々刻々と感染地域や感染者数が変化する状況下で、地域を限って臨床試験を実施する難しさが浮き彫りになった。

■クロロキンには心臓の副作用報告相次ぐ

一方で、レムデシビルと同様、多数の臨床試験が実施されているクロロキンやヒドロキシクロロキンについては、副作用も報告されている。フランス医薬品・保健製品安全庁(ANSM)は4月10日、新型コロナウイルス感染症の患者に投与された治療薬候補について、既に知られているものなど約100件の副作用を報告した。中でも、ヒドロキシクロロキン単剤または抗菌薬のアジスロマイシンとの併用で、43人に心臓の副作用が認められたと明らかにした。クロロキンに関しては、ブラジルの研究グループも4月16日、臨床試験で高用量のクロロキンに抗菌薬のセフトリアキソン、アジスロマイシンを併用した患者において、危険な不整脈の一つであるQT延長症候群が高頻度に認められたと報告している。

クロロキンやヒドロキシクロロキンは、米トランプ大統領も期待感を示し、20年3月末には米食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可(EUA)を出しているが、副作用の懸念が高まり、若干つまずいた格好だ。現在も、欧州、米国をはじめ複数の国・地域で、多数の臨床試験が続けられており、数カ月以内には結果が出ると考えられるが、フランスやブラジルからの報告は、既存薬であっても副作用のリスクも念頭に評価を行う重要性について、改めて警鐘を鳴らしたといえそうだ。

主に日本で治療薬候補に挙がっているファビピラビルについては、日本に続いて米国でも臨床試験がスタートした。先行する日本の臨床試験は、重篤ではない肺炎を合併した新型コロナウイルス感染症患者に対する単盲検ランダム化プラセボ比較試験。当面の目標症例数は96人で、症例数に変更が無ければ、20年6月末にも終了する予定だ。富士フイルム富山化学は、結果次第で日本で承認申請する見通し。ただ、米国での承認申請には先ごろ開始した臨床試験に加え、第3相臨床試験が必要になるもようだ。

(日経バイオテク 久保田文)

[日経バイオテクオンライン 2020年4月24日掲載]

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