海図から見た清水港は? 郷土冊子に、海保職員 - 日本経済新聞
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海図から見た清水港は? 郷土冊子に、海保職員

清水海上保安部(静岡市清水区)の田中裕二前部長(52)は2018年4月の着任から2年、海図に着目した郷土史調査に取り組んできた。堺市出身で静岡に縁はなかったが、地元住民以上に清水を知り尽くし、こなした講演は30回近く。調査過程では思わぬ発見もあった。離任前に、集大成として100ページの冊子「海図で見る清水港の変遷」をまとめた。

着任直後は、港湾関係者や地元企業との付き合いの中で「転勤族はどうせよそ者」との視線を感じた。歴史を学ぶことでなじめると考え、地元企業の社史などで勉強すると同時に、海上保安庁に保管されている明治以降の海図を入手。清水の歴史を海図からひもとく独自の語り口を身に付け、経済団体や高校、時には居酒屋などで講演を重ねた。

講演内容を形にするべく昨年9月から冊子の編集に着手、約半年かけ完成させた。海図そのものの歴史や用途を説明する章に始まり、近代以前から平成まで、時代ごとの清水港の移り変わりと、貿易と密接に関連しながら発展した清水の街の歴史を概観する。

船上から見た山々の姿を描いた「対景図」に関する章は特に力を入れた。昔の漁師は山を目印に海上で自らの位置を把握し、漁場を見失わないようにしていた。明治や大正の海図に併記された対景図はその名残。巡視船から現在の山並みを眺めると、明治の対景図とそっくりの美しい景色が広がっていた。

対景図に描かれた山々の正確な場所を突き止めるため、何度も山に登り一つ一つの山を特定した。地元住民や郷土史家と話す中で「漁場の特定に欠かせなかった山に対し漁師は強い信仰心を持ち、漁獲物の奉納まで行っていた」という話を聞き、全地球測位システム(GPS)もない時代の海と山の意外な結び付きに驚かされたという。

「地元の人には本に書いていないことも多く教えてもらった」といい、冊子はそうした関係者にお礼として配布した。「短い任期だからこそ、自分に何ができるか知恵を絞った結果。読み継がれていくとうれしい」。充実した表情で、清水での2年間を振り返った。

〔共同〕

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