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コロナ疲労、光で解消 生活リズム整える5つのルール

ストレス解消のルール

写真はイメージ=(c) Ivan Kruk-123RF
日経Gooday(グッデイ)

新型コロナウイルスによる「コロナショック」で疲弊感あふれる昨今。「ストレス」を訴える声も少なくない。特に家の中にいる時間が長引くほど、生活のリズムは乱れがちになりイライラ感もつのる。リズムが乱れると睡眠に影響が出て、いずれ体調を崩してしまうことになる。今回は、健康ジャーナリストの結城未来が、コロナストレスを解消するためのルールについて専門家に聞いてみた。

◇  ◇  ◇

太陽光・照明・スマートフォン・パソコン・ゲームなど、私たちの周辺には「光」があふれている。どうやら無意識に浴びているこの「光」の使い方を正すことが家の中でも健康に過ごすための重要なカギになりそうだ。では、その「光」をどうやってコントロールすればいいのか? 環境が人の体にどう影響を及ぼすかを研究し続けている九州大学名誉教授の安河内朗さんからその方法を教わろう。

安河内さんは開口一番、こう語った。

――安河内さん「思い通りに外に出られなくなった時に心配なのは、間違ったタイミングで光を浴びることによる不調ですね」

「間違ったタイミングで光を浴びる」? それで「不調」になる? どういうことだろうか?

――安河内さん「私たちには約24時間の周期を持つ体内リズム(概日リズム)が備わっていますが、このリズムに合わないタイミングで光を浴びてしまうと、不調につながるという意味です」

適切なタイミングで光を浴びなければ睡眠の質の低下から始まり、心の病への扉を開きかねないというのだ。体内リズムは光の影響を受けるものなのだろうか?

――安河内さん「光には大きな影響力があります。そもそも人類は長い間自然光の明暗のリズムに合わせて生活をしてきました。明るい日中に活動し、夕日の時間になると活動をやめ、暗くなると睡眠に入るという生活を何万年も繰り返してきましたので、光の指令によって体内がギアチェンジするようになっています。具体的には、日中のように青色系の波長を多く含む白い光では覚醒レベルが上がり交感神経活動が優位になるので、体が活動的に。夕日のように赤色系の波長が多い温かみのある柔らかい光では、覚醒レベルが下がり副交感神経活動が優位になってリラックス。覚醒と睡眠、ホルモンや体温など、体内にあるリズムをスムーズにし、健康を保つために、光は欠かせません」

体内リズムの「ズレ」を生む3つの要素とは?

人類の歴史を1日24時間に例えた時に、産業革命以降の歴史はほんの3秒程度にしかならない。デジタル機器に囲まれた生活をしていても、私たちの体内の仕組みは昔から変わらないのだから、納得だ。とはいえ、現代生活には「照明」「スマートフォン」「パソコン」などの人工の光もある。

――安河内さん「そこが問題なのです。1日中家の中にいるときに、あたり前のように朝から晩まで明るいままの照明を浴び、眠る直前までパソコンやスマートフォン、ゲームなどをしてしまうと、脳も体も休まるタイミングがなく体内リズムのズレ、引いては睡眠の質の悪化を招いてしまいます」

目から脳に入った光が、休むヒマなくエンジンをふかし続けてしまうということらしい。これではいつかエンストしてしまう。

――安河内さん「そうなんです。そのためにも、1日の中でどういう光で生活しているかを見直すことが大切です」

見直すのは光を浴びるタイミングだろうか?

――安河内さん「『光を浴びるタイミング』と『光の色』、『行動』も見直してください。たとえば日中は活動的になるように体の仕組みが出来上がっています。それなのに、学校や会社が休みだからとカーテンを閉めて光を浴びずに寝ていたり、逆に体がリラックスしたいタイミングに日中のように明るく青白い光の中で活動をしたり、スマートフォンやゲームなどの光刺激を受けてしまうのはダメです。光を浴びるタイミング、光の色、行動の『3つのズレ』が体内リズムのズレにつながり、睡眠の質の低下、身体の不調やストレスを引き起こす引き金になってしまいます」

午前中の光と朝食が体内時計に働きかける

まずは朝から見直してみよう

――安河内さん「起床時には意識して朝日を浴びることが大切です。目を痛めるので直接太陽を見てはいけませんよ。青色波長を多く含む午前中の光には、脳の視床下部の視交叉上核(しこうさじょうかく)にある体内時計をリセットし、体内リズムを整える働きがあります」

ヒトの体内時計は24時間きっかりではないらしい。それをきっちりと調整してくれるのが起床後の太陽光のようだ。そう言えば、休日に昼すぎまで寝てしまい、起きても家の中でダラダラと過ごしてしまうと、夜眠れないことがある。

――安河内さん「ヒトは朝日を浴びてから14~16時間後には眠くなり、睡眠のリズムを刻みます。朝日を浴びず日中も光を浴びない生活を続けると、体内リズムがズレて睡眠障害や体の不調につながりやすくなります」

毎朝同じ時間に起きて会社に出かけるという規則正しい生活は、実は自然に光を浴びて体内リズムを整えることにつながっているのだ。急に家の中で過ごす時間が多くなった人は、注意しなければいけないだろう。

それにしても、太陽光は天候によって光量が違うが、それでも体内時計を調整してくれるのだろうか?

――安河内さん「曇り空でも自然光は強く、窓際でも室内照明の10倍以上もの明るさがありますので、十分に体内リズムを整える役割を果たしてくれます。朝、起床と同時に太陽光を浴びて、朝食や軽いストレッチなどの活動的な行動も忘れずに行いましょう」

「朝食をとるのは大切」とはよく言うが、どうしてだろうか?

写真はイメージ=(c) kazoka30-123RF

――安河内さん「朝食を食べるという『行動』と、食べることで胃や内臓にもある『体内時計に働きかける』という点からもさらに覚醒を促し、体内リズムを整えるという大切な意味があります。同時に、朝食時に必須アミノ酸の『トリプトファン』を含む食べ物を食べることで、セロトニンの生成を促せます。セロトニンは、興奮を鎮めたり抗うつ作用があると言われている脳内物質。不足すると自律神経の乱れやストレス過多、うつ症状などさまざまな症状を引き起こすことで知られています。このセロトニンの原料になるのが『トリプトファン』。体内で作ることができないので、食べ物からとるしかありません。朝食をしっかりと食べてセロトニンの原料を体内に増やしてください」

トリプトファンは大豆製品(豆腐、納豆、味噌、しょうゆなど)、バナナ、乳製品、カツオ・マグロや魚卵(たらこ、すじこなど)、牛や豚などの赤身肉やレバーに多く含まれるらしい。

和食なら「味噌汁と納豆にご飯」、洋食なら「ヨーグルトやバナナにパン」と、和洋どちらでも朝食を食べておけば、自然にセロトニンの原料を体内に入れることができるわけだ。

――安河内さん「さらに朝、起床後に太陽光を浴びることで、体内時計のリセットとセロトニンをスムーズに分泌できるようになりますので、体内リズムを整え、精神面での安定、睡眠の質の向上など健康面に配慮できます」

ストレスを感じがちなこの時期こそ、起床後は意識して太陽光を浴び、『トリプトファン』を多く含む朝食を食べて一日をスタートさせることが大切なようだ。

日中は光不足を補い、夜は就寝時間が近づいたら暖色系の照明に

在宅ワークで外に出かけない場合、日中はどう過ごすのが理想的だろうか?

――安河内さん「活動時間である日中も光を意識しましょう。特に午前中から午後の早い時間までは窓際で作業をしたり、休憩の時に窓際や玄関先でストレッチをするなどして、光不足を補ってください。そして、ちゃんとランチも食べましょう」

朝食が大切なのは分かるが、ランチも意識した方がよいのだろうか?

――安河内さん「規則正しい食行動も、睡眠と覚醒のリズムを整えてくれます。日中、活動時間には意識して光不足を補い、昼食を食べて活力を補うことも忘れないでください」

暗くなったら「照明」の出番だ。

――安河内さん「夜、早い時間は昼光色や昼白色といった青白い照明の光でも良いですが、就寝約2時間前からは光を夕陽のような暖色系の光に変えましょう。私の研究でも、睡眠前に光の色を変えることで良質な睡眠がとれることが分かっています」

写真はイメージ=(c) Dinis Tolipov-123RF

実は、私は執筆などで夜仕事をする時間が長い。そのため、夜は明るく青白い昼光色の光で仕事をすることが多い。ただ、寝る30分以上前には照明を暖色系の電球色の光に変えるようにしている。すると脳の緊張がほぐれて、気分もあらたに作業が進められる。その後の寝つきの良さも実感中だ。

時には、仕事に夢中になるあまりに光の色を切り替えるのを忘れ、就寝直前まで日中のように明るい光のまま仕事を続けてしまうこともあるが、その際には作業効率が落ちるうえ、寝つきが悪いことが多い。やはり、光の色を手軽に変えられるようになったのはLED時代の恩恵だ。とはいえ、LED照明ではなく、光の色を変えられない器具を使用しているという人もまだまだいるだろう。

――安河内さん「その際には、家の中にある照明器具を上手に組み合わせて使ってください。たとえば、夜遅い時間になったら天井照明は消してスタンド照明に切り替え、同時にパソコンやスマートフォンなどもやめるというルールを作るのもよいでしょう。特にお子様のいるご家庭は、ぜひ心がけてください」

寝転んでのスマホ操作はNG、睡眠の質に影響することも

家の中でスマートフォンやゲームなどに夢中になっている子供も少なくないだろう。

――安河内さん「それが、一番心配なところです。子供の目の水晶体は透き通っているので、網膜に届く光の量が多いのです。子供は成人より、光の影響をより強く受けやすいという報告もあります。注意をした方がよいですね」

パソコンやスマートフォンなどの光は、それほど強くないようにも思える。

――安河内さん「ディスプレーを明るくしても、せいぜい約45ルクス。室内照明が150~200ルクスですから、それに比べてかなり弱い光ではありますが、覚醒につながる青色系の波長を多く含みます。それが近い距離で目に入るわけですから、ディスプレーの光の影響力は無視できません。実際、睡眠前のゲームが睡眠の質に影響するという報告があります」

子供に限らず大人でも、ベッドの中で横になりながらスマートフォン操作をするのがクセになっている人も少なくないだろう。

写真はイメージ=(c) Leung Cho Pan-123RF

――安河内さん「横になりながらのスマートフォン操作でも同様です。起きている時よりも液晶画面がさらに目に近づく分、光の影響力が大きくなり、睡眠の質の悪化が考えられます。いずれにしろ、就寝前のゲームやネット閲覧が睡眠に悪影響を与えることは、多くの研究結果から報告されていますので、気をつけていただきたいですね」

就寝2時間前が難しいなら、「少なくとも30分~1時間前には照明を切り替え、同時にゲームやスマートフォン操作もやめて眠るための準備やくつろぎ時間にあてる」というふうに決めておくのが、家族の健康を守ることにつながりそうだ。

――安河内さん「現代人の多くのストレスは、長い間人類が当たり前のように生活してきたスタイルとかけ離れた時に起こります。ご家族の健康を考慮して光を見直すことは大切です」

家の中で過ごす時間が増えると、これまでとは違う「ズレ」が生じ、それが不眠やストレスにつながる。この機会に「光を浴びるタイミング」「光の色」「行動」の「3つのズレ」がないかを見直して、光を上手に使いながらストレスを解消し、健康な生活を目指してみてはいかがだろう。

【「光」を味方にして体内リズムを整える5つのルール】
(1)起床時には意識して朝日を浴びること

(2)朝食は大豆製品や乳製品、魚卵、レバー、バナナなどを意識してとる

(3)日中はできるだけ明るい窓際で作業して光不足を補う

(4)就寝30分前には、照明を暖色系の電球色の光に変える

(5)就寝前のゲームや、ベッドの中でのスマホ操作はNG
安河内朗さん
九州大学名誉教授 日本生理人類学会会長。1976年九州芸術工科大学卒業後、大学院などを経て同大工業設計学科助手。1982年~90年労働省産業医学総合研究所、86年理学博士(京都大学)取得。90年九州芸術工科大学助教授、99年同教授、九州大学統合後の2005~18年九州大学大学院芸術工学研究院長に加え、08~10年九州大学副学長、09~18年同大主幹教授、学部長を経て現職。専門は生理人類学、人間工学。
結城未来
エッセイスト・フリーアナウンサー。テレビ番組の司会やリポーターとして活躍。一方でインテリアコーディネーター、照明コンサルタント、色彩コーディネーターなどの資格を生かし、灯りナビゲーター、健康ジャーナリストとして講演会や執筆活動を実施している。

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