「安全最優先」手探り、事故後入社5割超 尼崎脱線15年

2020/4/24 14:00
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JR福知山線脱線事故現場は慰霊施設になっている(6日、兵庫県尼崎市)

JR福知山線脱線事故現場は慰霊施設になっている(6日、兵庫県尼崎市)

兵庫県尼崎市で乗客106人と運転士が死亡したJR福知山線脱線事故は25日、発生から15年を迎える。JR西日本は、事故の背景にある社内風土の改革など安全対策を進めてきたが、新幹線で事故につながりかねない重大インシデントなどが発生。信頼回復に向け、安全対策を模索する。事故後に入社した社員は初めて5割超となり、記憶の伝承や事故の風化を防ぐ取り組みも課題となる。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、25日のJR西主催の追悼慰霊式は中止となる。事故後、初めてという。

脱線事故の背景には、ミスをした場合の懲罰的な教育を免れようと、運転士が安全よりもダイヤを保つことに腐心する企業風土もあったと指摘された。取り組んだのが社内風土の改革だ。

JR西はグループ会社を含めた全社員を対象にした安全研修を定期的に実施。2007年以降、延べ12万人以上に上る。さらに16年度から乗務員の人為的ミスの責任を問わない「非懲戒制度」を導入。ミスの隠蔽を防ぎ、事故防止に役立てる狙いがある。

事故後の06~18年度までに投じた安全投資額は1兆2千億円超。18~22年度の中期経営計画では安全投資額は5300億円と前の中計(13~17年度)に比べ400億円積み増した。

事故後に福知山線などで一段と高性能の自動列車停止装置(ATS)を導入したほか、異常時の対応能力などがさらに高い無線式の自動列車制御装置(ATC)を23年にも一部路線で導入する。人手不足が続く中、より一層の安全性向上を目指し、関西の鉄道会社の中では先行して自動運転の走行試験も開始。まずは踏切のない大阪環状線など2路線で将来的に導入を目指す。

だが、安全対策への効果を疑う事故が相次ぐ。10年には、脱線事故が発生した現場カーブで快速電車が速度超過し、ATSが作動。電車が緊急停止する事態となった。同社は公表せず、批判を浴びた。17年には新幹線の台車に亀裂が入ったまま走行を続けた重大インシデントが発生した。同社が18年に策定した安全指針で「安全最優先の判断や行動の徹底が不十分だった」と反省。遺族らにも、JR西の安全対策が不十分と映り、安全最優先の意識の徹底が改めて問われそうだ。

今後、再発防止のため風化防止も課題だ。JR西によると、社員2万7150人(20年4月時点)のうち、事故後の入社は約52%を占めた。15年の歳月は風化と向き合わざるを得ない現実を突きつける。

命を守る公共交通機関の安全対策は、鉄道各社全体に共通の課題だ。阪急電鉄や南海電気鉄道、近畿日本鉄道などもJR西日本と同様に新型のATSを既に導入。京阪電気鉄道も20年度中に全線に導入するなど、各社とも対策を進めている。

だが、公共交通機関の事故が全国で後を絶たない。18年度の鉄道事故は約630件と約20年間で約3割減少したものの、根絶には程遠い。関西大の安部誠治教授(公益事業論)は「ATSの整備などハード面の安全対策だけでは事故を防げない。事故につながりかねないヒューマンエラーを防ぐ対策も重要になる」と提言する。(安田龍也、金岡弘記)

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