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男たちの絆 権力が翻弄(演劇評)

光の領地「同郷同年」

背後にうごめく壮大な利権・権力を3人による会話劇で描き出した

光の領地の「同郷同年」は、未来への警鐘を込め、鋭く問題提起した作品(3月27日、大阪市の浄土宗應典院本堂で所見、くるみざわしん作、高橋恵演出)。劇作家で医師のくるみざわが主宰する劇団。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の提言を踏まえ、厳重な対策を講じた公演。

人口が減少、農業も行き詰まった町。薬局の待合室が舞台。兼業農家の田切(酒井高陽)、薬剤師の谷上(イシダトウショウ)、電力会社社員の中本(アンディ岸本)。幼馴染(おさななじみ)の3人は町再生のため、放射性廃棄物の最終処分場誘致を目指すが、失敗。田切は中本の会社に就職、他府県への誘致に成功し出世。谷上も薬局の経営難で、再び田切と組んで、町への誘致に乗り出す。だが他府県の処分場で事故が発生、汚染水が地下に流れ込む。中本は誘致に反対、退社する。

白熱した会話劇。追い詰められ、変貌する男達。危険性が不明瞭な中「事故は収束した」と断言する田切。「いつ」と問う中本。「首相が収束宣言した時」と田切。真偽を巡り対立、私利私欲も絡み誘致に傾く。

激しい応酬。力がせめぎ合い、空気のうねりまで見えるようだ。背後には、さらに圧倒的な、見えない力の存在が、気配として伝わる。彼らを束縛する力。権力と利権か。

最後に、勝負に負けた中本が死を選ぶ。誘致に成功、田切は政治家になるが、彼も翻弄されただけだった。繰り返される「同郷同年」という言葉。彼らの絆を示す言葉のはずだが、「一蓮托生(いちれんたくしょう)」とも聞こえる。

強靭(きょうじん)な信念の舞台。福島原発事故の「政治決断」に思いを巡らす、2017年初演作。コロナ禍の今見ると、そのモチーフが命に突き刺さる。命を滅ぼさない。それ以上に大事なことは、この世には、ない。――私達に未来を。

(大阪芸大短期大学部教授 九鬼 葉子)

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