コロナで大暴落したREIT 株よりも有望に?
アイビー総研代表・関大介

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2020/4/27 2:00
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不動産を対象にした投資信託のREIT(不動産投信)。オフィスビルやマンションなどの不動産物件に投資し、賃料や不動産の売却益を得て、それらの収入から分配金を投資家に還元する。分配金を定期的に受け取るインカムゲインだけでなく、REIT自体の価格が上昇すれば、売却益によるキャピタルゲインを得ることもできる。インカムゲイン狙いの投資家に人気のある投資商品だ。

国内のREITの相場も、2月下旬に発生したコロナ・ショックで暴落した。ここで注目されるのは、株をはじめ他の投資商品に比べて、REITの下落幅が際立って大きかったことだ。日本のREITの総合的な値動きを示す東証REIT指数は、2月20日に年初来高値の2250.65を付けた。そこからわずか1カ月後の3月19日には1145.53まで暴落。下落率は約49.1%に達した。一方、日経平均株価の年初来高値(1月20日)からの年初来安値(3月19日)までの下落率は、約31.2%。両者の差は17.9ポイントも開いている。なぜREITの下落率はここまで大きくなったのだろうか。

■リーマン時とは暴落の起き方が異なる

私は、2001年9月に東京証券取引所がREITの取引市場を創設した時から、市場の分析などを手掛けてきた。その間、08年9月のリーマン・ショックの際に起きたREITの暴落も経験している。当時を振り返ると、リーマン・ショックによる暴落と今回の暴落とでは大きな違いがあると思う。

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リーマン・ショックは、それ自体が不動産を引き金に起きた金融危機であった。震源となったのは、信用力の低い人向けの住宅ローン(サブプライムローン)を束ねた証券化商品の焦げ付きと、それに伴う住宅バブルの崩壊だ。住宅をはじめ不動産の価格が急落したことに加え、スポンサー(支援企業)の信用力が低かったREITの破綻が、相場の暴落に拍車をかけた。

今回は、REITの投資先である不動産物件は、新型コロナ・ウイルスの感染拡大でインバウンド(訪日外国人客)が激減して深刻な影響を受けたホテルを除けば、収益は悪化してはいなかった。そもそもオフィスや住宅の賃料は、景気が悪化してもすぐには大きく変動しない。このように景気悪化の影響を受けにくい点が、REITの魅力の一つでもある。それにもかかわらず、REITの下落率が特に大きかった。このことに対して違和感を深めた投資家も多いだろう。

何が今回の暴落を引き起こしたのか。有力なのは、「イールド・ハンティング(利回り狩り)」の反動だ。利回り狩りとは、低金利の環境下で投資家が利回りのより高い商品を選ぶという現象を指す。世界的な金融緩和の拡大を背景に米国債などの利回りが低下し、19年の前半は高利回り商品の代表格であったREITに資金が集まりやすい状況になっていた。それが、REITの価格を押し上げた。

裏返せば、REITの価格を押し上げる材料は、金融緩和によってあふれた投資資金の流入だけだったと言える。こうしたマネーは、市場がパニック状態に陥れば、いち早く逃避する。資金の主な出し手が、腰の座っていない短期投資家であるからだ。加えて、比較的長期で投資している地方銀行などの機関投資家も、REITの価格下落に伴って損失確定の売り(ロスカット)を余儀なくされたようだ。これらが今回の暴落を演出したと考えられる。

■再暴落の可能性を視野に入れておく

今後はどうか。相場が再び大きく下落する可能性を視野に入れておく必要があると私は考えている。足元の相場はやや持ち直し、4月中旬時点で東証REIT指数は1500台半ばで落ち着いている。しかし、新型コロナの影響は世界的に広がり、景気が大幅に悪化して、その状態が長期化しそうな情勢になっている。

景気の悪化は、REITの約半分が投資しているオフィスビルの収益に悪影響を及ぼすことになりそうだ。例えば、東京のオフィスビルの賃料や空室率は14年以降、回復基調にあった。景気の拡大が続いたため、テナントの拡張・移転のニーズが強く、テナントが新築のビルに移転して空室になったフロアには別のテナントがすぐ入居するという好循環が続いていた。しかし景気が後退すれば、リーマン・ショック後と同様にオフィスビルの空室率が急上昇し、収益は急速に悪化していくとみられる。

ただし、3年以上の中長期でREITの保有を考える投資家にとっては、東証REIT指数が1500台という価格水準は割安感が強い。景気後退に伴う賃料の減額によって、投資家に還元される分配金が10%程度減ったとしても、この水準なら、分配金を価格で割って算出した分配金利回りは5%程度を確保できるためだ。

また、REITの代わりに、REITの指数に連動するETF(上場投資信託)を購入するという手もある。指数連動型のETFの信託報酬はREITに比べて大幅に少なく済むので、運用のコストを抑えられるという利点がある。最低購入価格もREITに比べて少額である指数連動型のETFを、購入時期を分散しながら一定額で購入していく。そうすれば、価格が下がっている時には多く購入し、価格が高くなった時には少なく購入することになるので、短期的な相場下落の影響を軽減することも可能になる。

■利回り狩りが再び起きる可能性も濃厚

REITの相場から逃げ出した短期投資家も、いずれは戻ってくるだろう。コロナ・ショックによる景気の悪化を食い止めるために、各国の中央銀行が金融緩和を再び拡大しているからだ。投資資金の調達がしやすくなる一方で、国債などの利付商品の利回りが一段と低下し、利回り狩りが再び広がる素地が整ってきている。既に物流施設やマンションなどの住居に投資するREITの一部には、短期投資家の資金が入り始めている。

ただし、短期投資家の資金がREIT相場に本格的に回帰するには、条件が2つある。まず新型コロナの感染が人的移動の制限を伴わない程度にまで収束すること。そして、米国の長期国債の利回りが2%を超える水準にまで上昇しないことだ。これらの条件が満たされれば、短期投資家の資金も本格的に流入し、REITの価格を再び押し上げるだろう。それを踏まえると、株よりも相場が大きく下落して割安感が強まっているREITは、他の投資商品と比較しても有望だと言える。

関大介(せき・だいすけ)
不動産証券化コンサルティング及び情報提供を行うアイビー総研代表。REIT情報に特化した「JAPAN-REIT.COM」(http://www.japan-reit.com/)を運営する。

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