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巨人・岡本 「無」の境地でコロナ乗り越える

編集委員 篠山正幸

「僕はなにも考えません。『無』ですね。毎日できることをやっていくだけです。何も変わりませんよ」。巨人の若き主砲、岡本和真(23)は新型コロナウイルスによって、調整日程などにしわよせが来ているにもかかわらず、泰然としているという。心技ともに充実し、この先、どこまで大きくなるのか。プロ野球開幕のめどが立たない憂鬱な日々のなかでも、夢を与えてくれる存在だ。

冒頭のコメントは4月8日、巨人から広報されたもの。取材もままならない報道陣に向けて、球団が選手の動きや談話を提供してくれている。多くの選手のコメントのなかでも、岡本の語りには特に味がある。

本当はなにも考えないということほど、難しいこともないはずだ。一昨年、昨年と安定した成績を残し、この春も順調に調整を進めていた。15試合出場したオープン戦で45打数16安打の打率3割5分6厘、打点10をマークした。

3月13日の楽天戦で則本昂の速球を捉え、バックスクリーン左に運んだ一撃は圧巻だった=共同

自身、これほど開幕が楽しみなシーズンもなかったのではないだろうか。にもかかわらず「無」であるという。もともとの人物の大きさもあれば、4番として、年齢からは想像もつかないほどの経験を重ねて培われた落ち着きもあるだろう。

技術的にもさらに進歩を遂げているようだ。オープン戦の本塁打は3本。圧巻だったのは3月13日、楽天・則本昂大から、東京ドームのバックスクリーン左に打ち込んだ一発だ。

四回の第2打席。則本昂の初球を仕留めた。もし効果音をつけるならジェット音、というくらいの打球だった。原辰徳監督も「あれだけの打球はそうそうみられない」と感嘆するばかり。

殺気まとう、一発必中のスイング

「打ったのはストレート。いい投手なので、いいストレートがくるのはわかっていたが、一振りで仕留めることができたのは良かった」と話した。一発必中のスイングは、背筋が寒くなるような殺気をまとい、さらに一段高いステージに上りつつあることを確信させた。

則本昂によると、直球の仕上がり具合を確かめるために、あえて投げ込んだ面があったようだ。ただ、ある程度織り込み済みの一発であれ、日本を代表するような投手が、自分の球の判別基準としたこと自体、プロ球界における岡本の現在の立ち位置を示している。

原監督はもう、全幅の信頼を置いている。「いい投手から打って、本人も順調に来ていると思っているだろう。バッティングのメカニックも全然変わった。体つきももちろんだし、見た感じも違う」。見た感じ、とは「風格」のニュアンスにも受け止められた。

「平時」のルーティンが成り立たず、選手にはやりにくい日々が続く。それでも「毎日、できることをやっていくだけ」という通り、岡本はじっくり練習ができているらしい。

2日連続でスローボールを打ち込んだ14日には「バッティング投手のボールを打った際に、慌てて打ちにいってしまう感じがあったので……。だいぶ"待つ"感じが出てきた」と説明した。

自主練習中も岡本は練習に集中し、心身ともに充実しているようだ=球団提供

岡本の練習の真意を理解するにはプロの詳しい解説が必要だが、一般的に、スローボールの打ち込みは「トップ」が決まらず、バタバタと打ちにいってしまっているときに、十分な「タメ」を作り、球を待てるようにするために行うことが多いようだ。

同じくスローボールを打った16日には「"待ち"の状態から、今度は一気に"攻め(打ち)"に出れるようにしていく」とのコメントがあった。課題が解消されつつあるのは間違いない、と思われた。自分で自分の状態を正確に把握していないと、この自己修復はできない。

急成長し続ける岡本。東京ドームの一発を、ファンにナマでみてもらえなかったのが惜しまれるが、野球が始まったあかつきには、何度でも打ち直してみせてくれるに違いない。

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