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川村ラグビー選手会会長「今は感染しないことが第一」

日本ラグビーフットボール選手会の新会長に川村慎(NEC)が就いた。昨年行われた自国でのワールドカップ(W杯)で競技への注目がかつてないほど高まる中、新型コロナウイルス感染拡大の影響でトップリーグは中止に追い込まれた。選手の違法薬物の使用問題もあった。ラグビーにとって重要な時期に選手の代表として目指す道を聞いた。

かつてない盛り上がりを見せたトップリーグは新型コロナの感染拡大で中止に追い込まれた=共同

――コロナで選手にどういう影響が出ているか。

「各チームから選手に『こういう個人練習をやれ』というのはきているが、チームのクラブハウスも基本的には使えなくなった。民間のジムへ行くことも禁止されているチームが多く、できるトレーニングは限られているが、今はまず感染しないことが第一だ」

――トップリーグが実業団リーグのため、選手の大幅な減給やチームの存続危機という話はほとんどない。

「ただ、今季で契約が切れる選手は来季の契約に影響が出る可能性があり、すごく残酷。当分、試合がないし、このタイミングで引退しようという人もいれば、逆にあと1年頑張ろうという人もいる。引退試合がなくなった選手のための試合もできればいい」

外国人選手帰国をサポート

――4年前の選手会発足時から副会長を務めてきた。

「この4年間で色々な団体と意見を交換できるようになった。月に1度、日本ラグビー協会の人と話し合いをする機会を持っている。トップリーグの休止が決まる前にはニュージーランド(NZ)やオーストラリアなどの選手会からも依頼が来た。『コロナの影響で入国規制がかかる前に外国人選手が帰国できるように動いてくれないか』という内容だった。選手会から日本協会にアプローチし、3月中に選手が帰れるように認めてもらえたのは良かった」

――前任の廣瀬俊朗さん、畠山健介(米フリージャックス)と違い、代表経験のない選手の会長就任は初。

「各国の選手会の会長は代表選手がほとんど。僕たちとしても影響力のある選手に会長になってほしかったので、日本代表のベテラン選手らにお願いした。意義は理解してもらえたけれど『(代表活動などの)負担になるかもしれない』ということだった。今後、事務局の体制を整え、代表選手が安心して会長になれる体制をつくることがやるべき仕事の一つだ」

NECの試合でトライを決める川村慎(中央)。代表経験のない選手の会長就任は初だった

「現在は事務局長や弁護士、会計士の方たちにボランティアに近い形でサポートしていただいているので、まずは財源をしっかり確保したい。各国のように選手の肖像権から生まれた収入の何パーセントかを選手会に落としてほしいという話を、(協会が来年創設する)新リーグの設立準備室にしており、ポジティブな反応をもらっている」

――トップリーグが3月、選手の違法薬物使用問題でリーグを中断した時、副会長として遺憾の意を示す声明文を発表した。

「各チームの選手から『薬物問題だけを原因にリーグ中止というのはおかしいんじゃないか』『本当はコロナの影響もあるんでしょ』という声が多かった。『個人の薬物問題でリーグが中止になることがスタンダードになることを避けたい』という声もあった。選手にアンケートを取ると『中止の判断は正しくなかった』という声が60%以上。『妥当だ』という回答は15%ほどだった」

「その後は協会としっかりコミュニケーションがとれている。(リーグが行った)全選手への薬物検査も必要だったと理解している。選手会としても協会が本当に考えていることを事前に聞いて選手に周知していきたい」

研究所とも連携し選手支える

――薬物問題への選手会としての対応は。

「アスリートが過ちを犯す原因としてはストレス過多や試合に出られないメンタル面の不安定さが引き起こしているところがあるようだ。今、選手のメンタルを支えるためのプログラムを国立精神・神経医療研究センターと一緒につくっている。選手のキャリアやファイナンス(資産形成)、現役中のパフォーマンスの向上やメンタル面のサポートを包括する内容を考えている」

「NZなどではこうしたことをするプレーヤー・デベロップメント・プログラムというものがある。担当のマネジャーが各地域にいて、選手の悩みを解決する。NZではグラウンド内外での悩みを解決することでパフォーマンスが向上するという研究結果がある。ラグビーだけをやればパフォーマンスが上がるという時代ではない」

「これまでコンプライアンスやSNS(交流サイト)の発信の仕方などの研修をしてきたが、選手へのサポートは特に充実させたい。大ケガでラグビーをやめなければならない選手ための保険や基金のようなものも整備もしたい。協力してくれる企業を探したい」

新リーグはW杯で日本が優勝するためのリーグというコンセプトがぶれなければいい=共同

新リーグ、一丸になることが大事

――ラグビー協会が創設する新リーグについては。

「2019年W杯の日本代表のスタメンは社員選手が1人だった。代表をさらに強化するのなら組織、運営、選手のプロ化は自然なのではないか。一方で、日本のラグビー界は恵まれている。コロナの影響下でも、企業に所属している多くのトップリーガーは収入の不安を覚えず、引退後も社員の道をほぼ選択できる。近年の社会情勢の中、経済的にある程度、保証されていることは大きい。企業やOB、関係者が培ってきたレガシーをうまく生かし、さらなる飛躍を狙える体制を整えることが現在の協会の方向性と感じている」

「選手会としては、新リーグの準備のプロセスに参加させてもらい、選手側の話を聞いてもらえてありがたい。次の自国開催のW杯で日本が優勝するためのリーグにしたいというコンセプトがぶれなければいい。今回のW杯で、代表が勝てばこれだけ盛り上がるというのが証明された。協会も企業も選手も一丸となってそこを目指すのが一番大事。ただ、新リーグの体制によって選手人生の岐路に立つ人がたくさんいる。協会には随時、情報を公開してもらいたいし、選手会としても協力を惜しまず情報共有をしていきたい」

(聞き手は谷口誠)

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