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DeNAの2軍選手育成 リモート技術をフル活用

新型コロナウイルスの感染拡大で開幕が度々延期されているプロ野球。緊急事態宣言が全国に発令されるなか、チーム全体での練習はできず、「自主練習」という名目で各選手が細々と調整している。このような状況下、横浜DeNAはIT(情報技術)企業を親会社に持つチームらしく、会社員のリモートワークに使われるツールをフル活用して若手の育成を続けようとしている。

「足の上げ方がマシンと手投げでちょっと違うかな」「インパクトで顎を上げるのがちょっと早い。打球を追いすぎないことを意識して」――。4月18日の練習後、DeNAのドラフト1位ルーキーの森敬斗はノートパソコンの前に座り、コーチから矢継ぎ早に飛ぶアドバイスに時折うなずきながらメモを取った。

ビデオ会議システムを介してコーチから来たアドバイスをメモする森(球団提供)

森が向かい合っていたパソコンはビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を介して複数の2軍コーチとつながっている。ただ、コーチの多くはその日の練習に参加していない。練習の映像を自宅で確認して森にアドバイスを送っていたのだ。

舞台は神奈川県横須賀市に昨年オープンしたDeNAの2軍施設「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA(通称・ドック)」。1軍が本拠地とする横浜スタジアムの大きさを再現したメーン球場に加え、室内練習場や選手寮などを備えている。

チームが沖縄キャンプを実施していた今春、ドックのメーン球場に15台、室内練習場に11台の固定カメラが設置された。以前から予定されていたのだが、当初の目的は選手とコーチが試合や練習の映像を振り返ることだった。それが、新型コロナの感染拡大に対応する形で急きょ使い方が変わった。

現在、感染予防の観点からドックに出勤できる2軍コーチは1日1人のみに制限されている。そこで2軍のコーチとスタッフ陣は毎朝オンラインミーティングを開き、その日選手に意識してほしい事柄を共有する。練習に参加するコーチがそれを選手に伝え、自主練習の様子は固定カメラなどで撮影・配信される。他のコーチは自宅のパソコンやタブレット端末で見守り、練習後にZoomなどを介して選手を指導している。

固定カメラに加え、球団スタッフも練習の様子を撮影。映像はリアルタイムで配信される(球団提供)

1軍選手には実績と自己管理のノウハウがあり、基本的にコンディション調整は各人に任せておけばいい。一方、2軍にいる若い選手はまだ成長途上。1年先、2年先を見据えれば「このような状況でも球団として育成の手を止めることはできない」(DeNAの桑原義行ファーム運営グループリーダー)。

厳しい制約があるなか、Zoomやビジネスチャットの「Slack(スラック)」といった親会社も導入しているITツールを活用することで若手の成長をサポートしようと工夫を凝らす。

森は「質問などを(コーチに)すぐ聞きにいける環境ではない。課題や目標を決め、それに対してどのようにアプローチできたのかなど、今まで以上に一日一日を大切にするようになった」と話す。

限られた環境、選手の意識変わる

文字通り手取り足取りという従来型の指導スタイルがいつ戻ってくるかは分からない。時間も限られた自主練習を少しでも実りあるものにしようと、選手の意識は徐々に変わってきている。大村巌ファーム打撃コーチも「選手が自身の目的、実行、反省、課題のサイクルに対して考えるようになり、内面的な成長を感じる」と手応えを口にする。

壁谷周介チーム戦略部長は「スポーツ界の固定観念にとらわれず、いまだからできることを、リモート(ツール)を活用して最大限に実施する」と力を込める。

距離という壁をリモートツールが本当に打ち破ることができるのならば、例えば1軍と2軍の関係性はより密なものになっていくかもしれない。DeNAの取り組みはまだ緒についたばかりだが、平時の選手育成のあり方にも一石を投じる可能性を秘めている。

(木村慧)

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