中国、中小銀行の再編加速へ 当局「コロナ打撃大きく」
成長失速で資金不足の恐れ

習政権
2020/4/22 14:42
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【北京=原田逸策】中国の金融監督当局は22日、中小銀行の再編を加速する方針を明らかにした。新型コロナウイルスの影響で主な取引先の中小零細企業の売り上げが急減し、資産の健全性や手元資金に不安があるからだ。4月初めには西北部が地盤の甘粛銀行で預金の取りつけ騒ぎが起きた。金融システム全体が動揺するのを防ぐため、中小銀行の再編で不安を封じ込める狙いだ。

包商銀行の国有化以降、中小銀行への経営支援が相次いだ(2019年5月、内モンゴル自治区包頭市)

「新型コロナの中小銀行への打撃は明らかだ」。銀行保険監督管理委員会(銀保監会)の曹宇副主席は22日の記者会見でこう認めたうえで「すでに関係部門と計画案をまとめた。今年は中小銀行の改革、再編に力を入れる。とくに市場を活用した再編を進めたい」と語った。

中小銀行は日本の地銀にあたる都市商業銀行、農協に似た農村商業銀行や農村信用社など。全体で4千以上あり、総資産は計77兆元(約1200兆円)にのぼる。

2019年5月に内モンゴル自治区を地盤とする包商銀行を実質国有化して以降、中国では中小銀行への経営不安が広がった。遼寧省の錦州銀行、山東省の恒豊銀行などは大手銀行や政府系ファンドから資本支援を受けた。包商銀も地元政府や他行の出資を受け入れて「蒙商銀行」として再出発する。曹氏の発言はこうした再編をさらに加速する考えを示したものだ。

中小零細企業や農家が主な取引先のため、新型コロナの打撃で資産が劣化しやすい。大株主が銀行を私物化する「機関銀行化」も深刻で、昨年の調査では大株主との取引などで3千件超の規則違反が見つかった。

中国の経済成長が失速し、中小の金融機関が資金不足に陥るおそれもある。企業の売上高や個人の給料が急減し、運転資金や生活費をまかなうために預金を引き出すからだ。金融機関は国債など保有する優良資産を換金しても手元資金不足を解消できない。

中国人民銀行(中央銀行)が昨年11月に中小銀行を中心に全国1171行を調べた試算では、成長率が4.15%を下回る場合、全体の13%にあたる159行で手元資金が足りなくなる。

20年1~3月の国内総生産(GDP)の実質成長率は前年同期比マイナス6.8%と四半期で初のマイナス。国際通貨基金(IMF)は20年通年でも1.2%の低成長を見込む。20年の成長率は4%を大きく下回りそうで、実際の打撃は試算より大きい。

包商銀の破綻処理では個人預金は全額保護したが、企業などの大口預金は一部カットした。中小銀行は市場で大口預金を売って資金調達するが、預金の「安全神話」が崩れたことで市場が緊張すれば調達は難しくなる。

人民銀行は4月、市中銀行から強制的に預かるお金の比率を示す「預金準備率」を中小銀行だけを対象に大幅に下げた。中小銀行の手元資金を増やす狙いもあり、人民銀行の劉国強副総裁は4月の記者会見で「リスク状況は密接に監督している」と語った。

一部の中小銀行では経営が揺らぎ始めている。

西北部の甘粛省を地盤とする甘粛銀で4月初め、預金の取りつけ騒ぎが起きた。株価が急落したのを受けて不安が広がり、一部の支店に預金者が並んだ。人民銀行金融安定局の黄暁竜副局長は4月の記者会見で「甘粛省政府が非常に重視している」と述べ、省主導で再編を進める方針を示した。

包商銀が国有化された当時、銀行関係者の間で出回った「危険な銀行リスト」には甘粛銀行も入っていた。経営不安がささやかれる銀行は中国の長江より北の地域に集中する。なかでも東北地方と西北部は景気低迷が長引き、地元の銀行が健全な経営を保つのが難しく、今後も経営不振の銀行が相次ぎそうだ。

追い打ちをかけそうなのが、新型コロナの景気対策の柱である中小零細企業向け融資の拡大だ。当局は融資を増やせば査定評価が上がる仕組みを導入し、融資拡大を強く求める。人民銀行によると3月末の残高は12.4兆元(約180兆円)と1年間で24%増えた。

さらに当局は取引先が求めれば、利息や元本の返済猶予に柔軟に応じるよう銀行を指導しており、3月末までに計8800億元の返済が繰り延べられた。中小銀行を対象に債権の焦げつきに備える「引当金」を一時的に減らすことも認めた。

新型コロナで中小零細企業の倒産確率は上昇しており、野放図な融資拡大や返済猶予は将来に禍根を残しかねない。自己資本が薄い中小銀行の経営にとって、新たな不安材料になりそうだ。

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