ホンダ・ヤマハ発動機 世界各地でバイク生産再開延期

2020/4/22 16:30
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アジア各国は二輪車であふれている(台湾・台北市、撮影:日経クロステック)

アジア各国は二輪車であふれている(台湾・台北市、撮影:日経クロステック)

日経クロステック

「生産と開発の両方が停滞しそうだ。毎日もどかしさを感じている」――。ある大手二輪車メーカーの開発担当マネジャーは、ため息交じりにこう打ち明けた。

新型コロナウイルスの感染者が世界で230万人に達し、死者は16万人を超えた(4月20日時点)。部品供給の停滞や工場の稼働停止、開発の遅延など、日本の"お家芸"とも呼べる二輪車産業は、この「見えない敵」によってダメージを受け続けている。各社に取材したところ、二輪車メーカー特有の"弱点"が見えてきた。

■アジア軸足に課題

二輪車で世界首位のホンダは、新型コロナの影響を受けて世界で数十万台規模の減産に動いたようだ。旗艦工場と位置付ける日本の熊本製作所は、4月13~14日の短期的な稼働停止にとどめた。しかし、同社は年間で約2115万台を生産し、そのうち8割以上は日本・中国を除くアジアで造っている(2018年実績)。

二輪車メーカーは比較的柔軟に生産台数を調整できるため、いったん減産にかじを切り、新型コロナの終息後に増産する手もある。ただ、アジアでの感染拡大が長期化した場合、頼りの新車市場は縮小を避けられない。

「工場の再稼働がまた延期になってしまった」――。ホンダの広報担当者は悲しげに語った。4月16日、新たに6カ国で工場再稼働を延期するとの情報が、日本のホンダ本社に飛び込んできた。

インド市街を走るホンダの二輪車(出所:ホンダのインド法人)

インド市街を走るホンダの二輪車(出所:ホンダのインド法人)

主力のアジアをはじめ、欧州や南米で工場の稼働再開を遅らせる。アジアでは、インドの工場の稼働停止期間を19日間遅らせ、5月3日までとした。感染拡大を防ぐために同国政府が発令した「外出禁止令」に対応する。ホンダはインドに4カ所の工場を構えており、合計で年間640万台の二輪車を生産できる。インドでは3月23日から1カ月半近く生産ラインを止めることになり、単純計算で70万台以上の生産機会を失う。

同じくアジアでは、パキスタンの工場も再稼働を16日間遅らせ、4月30日までストップする。ホンダは同国の2カ所に工場を構えており、合計で年間135万台を生産できる。

欧州では、スペインとイタリアの工場だ。スペイン工場は稼働停止期間を10日間遅らせて4月24日まで、イタリア工場は同7日間延ばして4月30日まで工場を止める。欧州は中型車両の生産拠点となるため、生産可能台数はそれぞれ年間10万台を下回る規模だ。

南米では、アルゼンチンとペルーの工場で再稼働を遅らせ、4月24日まで生産を停止する。それぞれ、当初の計画よりも12日間遅らせる。アルゼンチンでは年間14万台、ペルーでは年間3万5000台の二輪車を生産可能だという。

再稼働の延期を決めた6カ国以外にも、ベトナム(4月22日まで)やインドネシア(4月26日まで)、マレーシア(4月28日まで)やフィリピン(4月30日まで)で工場の稼働を止め、計10カ国に影響が出ている(4月20日時点)。一方で、新型コロナの感染者が初めて確認された中国では生産を再開済みだ。ただ、再度の感染拡大も考えられるため安心はできない。ホンダの広報担当者は「今は各国の状況を慎重に見極めたい」と話す。

新型コロナは他の二輪車メーカーにも牙をむく。世界3位のヤマハ発動機は、イタリア工場の稼働を3月16日から止めている。また、インドネシア工場は4月3~19日まで稼働を停止していた。5月からは、二輪車の完成車工場を含む国内8カ所の工場を一定期間止め、数千台規模で生産台数を調整する見込み。同社のある技術系従業員は「グローバルで生産計画の再検討が必要となる」と不安げに話した。

スズキや川崎重工業も工場の稼働を一部やめている。両社とも、国内工場を4月中に段階的に止め、インドやフィリピン、タイやインドネシアといったアジア各国の工場で稼働を停止した。特に川崎重工業は、4月20日時点で「(アジアでは)工場の再稼働のめどは立っていない」(同社の広報担当者)とし、影響の大きさを物語っている。

■開発状況の把握に遅れ

生産が滞り、次なる懸念は開発への影響だ。「二輪車は四輪車に比べて開発の現地化が進んでいる」(ホンダの広報担当者)とし、各国の開発拠点が担う役割が大きい傾向にある。特にアジアでは二輪車を生活の"足"として使っており、性能や使い勝手などを各国の消費者の声をくみ取って決める。各国で企画から開発まで一貫して進めた方が効率的というわけだ。

今回はそれが弱点となった。開発の現地化を進めたことで、各国の開発状況を日本拠点が把握しきれていない。外出禁止令が発令されている国と比較すれば日本はまだ身動きが取れるため、日本拠点が開発に大きく関与していれば、現地に代わって開発を進められる。しかし、現地の開発拠点がリードしている現状では、その打開策が通用しないようだ。このまま現地の動きが止まれば、長期的には開発スケジュールの再検討は避けられない。新型コロナを発端とした二輪車メーカーの苦悩はしばらく続きそうだ。

(日経クロステック 窪野薫)

[日経クロステック 2020年4月21日掲載]

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