中国、EV充電スタンド急拡大 乱立に課題も

36Kr
スタートアップGlobe
2020/4/23 2:00
保存
共有
印刷
その他

ここ1カ月、電気自動車(EV)のインフラとして、中国の各地方政府は続々と充電スタンド建設プロジェクトへの支援を強化、企業も投資にうごめき始めた。北京市政府などの補助金支給策発表をきっかけに充電スタンド業界はあたかも一晩で黄金期に入ったかのようだ。だがすでに、車両通行量のほとんどない地域にまで充電スタンドが設置されるなど、補助金をあてにしたスタンド乱立の問題も顕在化している。赤字体質から脱却できない業界は、中国政府の支援によって春を迎えられるのだろうか。

米テスラの充電ステーション(図虫提供)

米テスラの充電ステーション(図虫提供)

北京市政府はこのほど、一部の公共充電施設への補助金支給に加え、ポール型充電設備メーカーにも1台につき年間20万元(約300万円)を上限に、1kWあたり年間で最高106元(約1600円)の報奨金を出すと発表した。

さらに、車載バッテリーの国内トップメーカー「CATL(寧徳時代新能源科技)」は、「百城新能源科技(BACN)」と合弁会社を新設、株式の49%を使ってEV充電・バッテリー交換設備の建設と運営を行うという。中国の配電網最大手「国家電網(State Grid)」も2020年は充電ネットワーク構築に50億元(約760億円)を投資する予定だ。業界関係者は、中国では今後10年間で6300万台の充電スタンドの需要があり、これが1兆元(約15兆円)規模の市場を生み出すと予測する。ただそこに至るまでの道筋は平たんではなさそうだ。

国家電網の充電ステーション(同)

国家電網の充電ステーション(同)

統計によると、中国のEV向け充電スタンドの設置台数は2012年にはわずか1万8000台だった。 2014年、国は2020年までに充電施設1万2000カ所を増設し、2025年までに3万6000カ所まで増やす目標を設定した。以来、国有資本も民間企業もこぞって参入し、業界は荒々しく成長し始めた。

「2019~2020年度中国における充電インフラ発展に関する年度報告書」は、2019年時点でEV向け充電ステーションは3万6000カ所となり、2025年までの建設目標を達成したことを示している。

しかし、EV充電スタンドの乱立による問題も顕在化している。支援政策が始まった当時、一部の企業は多額の助成金を目当てに車通りのほとんどない僻地にまで充電スタンドを設置した。その結果、資源配分は不均衡になり、全体的な利用率を押し下げている。EV業界のカンファレンス組織「中国電働汽車百人会(China EV100)」の「充電服務報告(充電サービスに関するレポート)」の調べでは、2018年の全国公共充電設備の稼働率は10%未満だ。

さらに、EV向け充電スタンドは設備集約の事業で、多額の資金が必要なうえにその回収期間が長いという特徴がある。ある中国国内メーカーの関係者は、この事業の資金回収期間(貨幣の時間価値を考慮しない回収期間法で計算)は平均5.74~9.57年であると述べている。2017年時点で中国では300社ほどがEV向け充電スタンドを製造していたが、2019年までに約半数が閉鎖または事業撤退し、30%が損益分岐点ラインで苦闘している。

中国EVメーカーの小鵬汽車などは独自にEVスタンドを設置する(同)

中国EVメーカーの小鵬汽車などは独自にEVスタンドを設置する(同)

充電スタンドの運用方法も設置企業によって異なる。現在、同業界は主に3つの陣営に分かれている。(1)国家電網、中国南方電網(China Southern Power Grid)などの国家資本(2)「特来電新能源(TELD)」「星星充電(Star Charge)」などのバッテリーメーカー(3)独自に充電ポールを設置する小鵬汽車(Xpeng Motors)やテスラなどのEVメーカー――の各陣営だ。全体的な競争の枠組みはほぼできあがっているが、事業者ごとに充電から支払いまでのプロセスがバラバラで、業界全体で運用管理を一本化するのは困難だ。

現在、新型コロナウイルス感染症の流行で充電スタンドの売上高は大幅に減り、保守要員も不足、有望な設置場所の開拓や借地料負担など、各社にとっての大きな圧力がのしかかる。

それでも、EV向け充電スタンドは拡大も強化も可能な事業であることに疑いの余地はない。

新エネルギー車普及に充電設備が欠かせないことは誰の目にも明らかだ。充電施設を高密度に敷設することは、現段階で「電欠不安」を解決する直接的かつ最も効果的な方法であり、新エネルギー車産業発展の上限を左右するものでもある。業界先駆者のテスラは早い段階でこれを見抜き、2015年以降、中国全土に自社充電ステーション「スーパーチャージャー」を建設している。

専門機関は2030年までに中国のEV販売台数が1500万台、保有台数は8000万台を超えると予測する。そのうち純電気自動車(BEV)は6480万台に達する可能性がある。車両1台につき充電スタンドが1基必要だと計算すると、今後10年間の充電スタンドの伸びしろは非常に大きいということだ。

充電設備を集中的に建設するには、送電網や回路の改造など、業界のサプライチェーンの範囲を大幅に超えた投資も必要だ。消費の促進とGDPの拡大にもつながるだろう。

しかし、政府による新インフラ整備促進という追い風があるとしても、2014年に政府目標を設定したことだけでは片手落ちなのは鮮明だ。このため、政府による支援は補助金だけでなく、用地や充電専用駐車スペースの優遇措置など、産業の発展を全面的に推進する必要がある。ハードウェアを設営した後はビッグデータによる運営・メンテナンスなどのシステム作りも重要になってくる。これらをすべて行なって初めて、EV向け充電スタンドは産業として根付くのだ。

「36Kr ジャパン」のサイトはこちら(https://36kr.jp/)

中国語原文はこちら(https://36kr.com/p/5306313)

 日本経済新聞社は、中国をはじめアジアの新興企業の情報に強みをもつスタートアップ情報サイト「36Kr」を運営する36Krホールディングスに出資しています。同社の発行するスタートアップやテクノロジーに関する日本語の記事を、日経電子版に週2回掲載します。
保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]