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イスラエル、ネタニヤフ政権「延命」へ 野党と連立合意

強権化、民主主義揺さぶる

【イスタンブール=木寺もも子】イスラエルのネタニヤフ政権が5期目に入る見通しとなった。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、20日に中道野党連合と連立政権樹立に合意した。1年超に及んだ政治の混乱はひとまず収束するが、汚職裁判の被告となったネタニヤフ首相は司法への介入を図るなど強権化が目立つ。同氏の「延命」は中東ではまれな民主主義を誇ってきたイスラエルの国家像を揺さぶっている。

地元メディアによると、右派与党リクードを率いる暫定首相のネタニヤフ氏はリクードを含む国会議員53~59人の支持を固めている。ガンツ元軍参謀長がトップの中道野党連合「青と白」陣営(19議席)が加われば国会(120議席)の過半数を上回る。

ネタニヤフ首相(右)とガンツ氏は首相職を1年半後に引き継ぐことで合意した=ロイター

ネタニヤフ氏が続投し、2021年10月、副首相兼国防相となるガンツ氏に首相職を譲る。その後は副首相に回る合意を結んだ。19年4月以降、3度の総選挙でいずれも正式な政権発足に至らないという混乱を脱し、4度目の総選挙は回避できる見通しとなった。

新型コロナ対策で距離を保ったまま反ネタニヤフデモに参加する人々(19日、テルアビブ)=AP

挙国一致内閣で合意した背景には、新型コロナへの危機意識がある。感染者は1万3000人を超え、外出禁止などの影響で4月の失業者数は一時帰休を含め100万人を超え、失業率は24%に達した。ネタニヤフ政権の打倒を掲げてきたガンツ氏の方針転換につながった。

ネタニヤフ氏の首相在任期間は計14年を超えた。建国の父ベングリオンを抜き、同国史上最長だ。ただ、長期政権下で対テロなどを名目とする強権化と右傾化が加速している。一例が司法への露骨な介入だ。

ネタニヤフ氏は収賄、詐欺、背任の3つの罪で起訴されており、新型コロナの流行拡大を理由に3月に予定されていた自身の初公判を延期させた。イスラエル法には起訴された閣僚に辞任を求める規定があるが、首相については明文化されていない。今後、最高裁がネタニヤフ氏の続投を違法と判断する可能性があり、連立合意には辞任を余儀なくされた際には解散・総選挙を実施することも盛り込まれた。

連立協議では、最高裁判事の任命を巡る拒否権をネタニヤフ氏に与えるかが焦点となった。この要求はガンツ氏側が退けたが、代わりに検察トップなどの任命に拒否権を持つことが認められた。ネタニヤフ氏は自らを起訴した検察への圧力材料とする可能性がある。

来週にも発足する新内閣では、リクード側と「青と白」側が閣僚ポストなどを均等に分け合うが、「青と白」はネタニヤフ氏との合流の是非を巡って分裂、議席数は半減した。妥協を余儀なくされたガンツ氏に対し、政権内の力学はネタニヤフ氏の優位に傾くとの指摘がある。禅譲が合意通りに行われるかは予断を許さない。

ネタニヤフ氏は刑事被告人が首相職にとどまることを禁じる法案を野党が提案した際には新型コロナ対策を名目に国会の閉鎖を試みた。情報機関の対テロ技術を転用、警察による市民の携帯電話の位置情報の追跡を認め、国民への「監視」を強めている。

「民主主義が死んでいく」。19日、商都テルアビブでは感染防止対策として数千人の参加者が数メートル間隔で並び、続投に反対する異例のデモが繰り広げられた。

ネタニヤフ氏への評価は国を二分するが、イスラエルの経済成長をけん引してきたハイテクやスタートアップ関係者らエリート層の間では強権化に対する警戒が特に強い。ネタニヤフ政権の継続は、欧米型の民主主義国として発展してきたイスラエルの転換点となる可能性がある。

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