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広島が12球団最強? 堅実経営で非常時の耐性トップ

新型コロナウイルスの感染拡大でプロ野球の開幕は6月以降にずれ込むことになった。見込んでいた売り上げが立たない一方、選手年俸など支出の続く現状は球団経営に深刻な影を落とす。経営に関わる数字は多くがベールに包まれているが、会社法により官報などでの開示が義務付けられている貸借対照表は巨人と中日を除く10球団が公表している。非常時における各チームの耐性を探った。

開幕の見通しが立たないプロ野球。オープン戦と同じ無観客となれば経営には大打撃だ。写真はZOZOマリンスタジアム=共同

プロ野球は現金商売

球団経営に関する著書がある金融アナリストの伊藤歩さんは「プロ野球は現金商売。何よりもキャッシュフローが回るかどうかが生命線だ」と説く。球団はシーズンに先立ち、年間指定席やファンクラブ会員費、スポンサーからの広告費などまとまったお金を得る。開幕後もチケットや球場での飲食など継続的に日銭が入り、これらを月割りの選手年俸や社員の給料など運営経費に充てていく。

支払いに先立って売り上げが立つ"現金商売"は資金繰りの心配が少ないのが強みだ。ただ、運転資金をそれほど必要としないビジネスモデルは非常時への備えも薄くなりやすい。命綱の収入が途絶えると、資金繰りは急速に苦しくなる。今回のコロナ禍では代表的な現金商売の外食店も悲鳴を上げているが、その構造は多かれ少なかれ、球界にも通じる。

実際、各球団の体力はどれほどか。企業の短期的な支払い能力を示す指標に「流動比率」がある。短期借入金など1年以内に返済する負債に対し、現預金や有価証券など換金性の高い「流動資産」がどれだけあるかを指す。120%以上で健全、200%以上で理想とされる。「在庫」なども含む流動資産はキャッシュと同一視できず、決算期の違いによる季節要因などでも変動するが、球団ごとの傾向を知る上では一定の参考になる。

直近の決算で最も高いのは広島で211%。内訳は不明だが、2019年12月末時点で保有する「流動資産」は73億円。翌シーズンの年間指定席や広告料がまだ入らず、資産が縮小する傾向のある12月にしてはかなりの高水準といえる。そもそも年俸総額が推定30億円前後と低水準で支出は少なめだ。負債が少なく、倒産のしにくさを示す「自己資本比率(総資産に占める自前の資産の比率)」も2位で、6割超に上る。

キャッシュをたっぷり持つ阪神

広島は松田元オーナーらの一族が大株主で、他球団のように親会社に大企業がいるわけではない。12球団で唯一、応援に華を添えるチアリーダーも募集していないことからもわかるように、経費を抑えたチーム運営が特徴だ。頼れる親会社の不在は不安材料だが、球団単体でみれば、身の丈に合った堅実経営が耐性の高さにつながっていると考えられる。

流動比率187.6%で広島に次ぐのは阪神。流動資産は165億円(2019年3月末時点)と10球団随一の水準で、潤沢なキャッシュをうかがわせる。

流動比率が最も低いのはソフトバンクで32.2%(19年2月末時点)だ。高額な外国人選手たちを含めて70億円前後という球界最高峰の年俸に加え、本拠地の自前化や改修など積極的な投資を続けてきただけに負債も多く、自己資本比率は23.2%にとどまる。

会社法の定める「大会社」に該当するため、12球団で唯一開示が義務付けられている損益計算書によると1カ月当たりの平均経費は25億円前後に上る。ここには現金の支出を伴わない「減価償却費」も含まれ、試合がなければ球場警備費や遠征費などもなくなるため、毎月これだけのキャッシュが出ていくということではない。それでも毎月5億円を超える選手年俸、他球団以上に手厚いコーチ陣や社員、本拠地の光熱費など規模に応じた経費はかかる。一方、流動資産は53億9600万円。収入が途絶えたままだと遠からず苦しくなる恐れがある。

12球団で唯一、親会社のない広島。財務状況は優等生だ=共同

スポーツマネジメントが専門の武藤泰明早大教授は「裕福なソフトバンクでも楽観できない状況。もっと危ないチームもあるのでは」と危惧する。17日には交流戦の中止が決まった。開幕の見通しはいまだに立たず、開幕できても入場制限は避けられない。

親会社の支援が必要な事態も

日本野球機構(NPB)の斉藤惇コミッショナーは無観客試合の可能性にも言及しており、チケットや飲食でどれほどの現金を得られるかは定かでない。ペナントレースは最大125試合となるため、試合ごとについている冠スポンサーからの協賛金は減る。パ・リーグの球団関係者は「さらに試合数が減るようなら球場の看板広告やスポンサーフィーの値引き要請などが出てくることも考えられる」と話す。

プロ野球は04年の球界再編騒動を機に多くの球団が親会社への依存を改め、独立採算路線で企業力を高めてきた。しかし、今回のコロナ禍は各球団の財力では手に余る非常事態だ。年俸削減交渉とともに、親会社による救済も現実的な選択肢になりつつある。

(吉野浩一郎)

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