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為替相場を予想してみよう ニュースと数字の読み方

全国学生対抗円ダービー2020

外国為替相場を示すボード(東京・日本橋)

外国為替相場(がいこくかわせそうば)と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか? ニュースで「円安・ドル高になった」と聞いて、通貨の値段が上下するのを不思議に思ったことがある人も多いでしょう。家族旅行を計画するときに「今年は円高だから海外に行こう」と相談したことがある人もいるかもしれません。

ここでは外国為替市場(略して外為市場=がいためしじょう)のあらましと予想の仕方について、できるだけ簡単に解説します。日本の円や米国のドルといった通貨は、その国の中では買い物のための道具ですが、外為市場では「国の経済力を表す指標」として値段がつきます。そして外為市場にはオンラインショッピングをする個人から国境を越えて貿易する企業、銀行まで様々な参加者がいます。

以下では「外国為替とは何か」「どんな要因で動くのか」といった基本的な背景を抑えた上で、具体的な予想の方法も紹介します。皆さんが全国学生対抗円ダービーへの参加を通じ、経済や政治に関わるニュースや数字に少しでも親しんでもらえたらと思います。

▼全国学生対抗円ダービーの応募はこちらから。詳しい条件は関連記事「第20回 円・ドルダービー 全国学生対抗戦」をご覧ください。

<1.外国為替市場の基本>

為替は「遠くの相手とのお金のやりとり」

まず「為替(かわせ)」という耳慣れない言葉の意味から確認しておきましょう。為替は簡単に言うと、「離れた場所にいる相手と、お金を実際には移動させずにやりとりする仕組み」を指します。なかなか難しいですね。しかし実際に用いられる場面は案外、身近なところにもあります。

カードやスマホ決済などを経由して遠くにいる人に支払いができるのはなぜ?

インターネットで買い物をしたことがある人は多いでしょう。ネットで商品を買うと、クレジットカードやコンビニの伝票を使ってお金を支払いますよね。実はこれも為替取引の一種です。皆さんが実際に現金を持っていかなくても、カードや伝票を通じて遠くにいる人にお金を支払うことができるのは、為替が機能しているからなのです。

為替は銀行などの金融機関の存在によって成り立ちます。ネット通販の例では、皆さんがカードで支払いを約束すると、その人の持つ銀行口座から、商品を送ってくれる業者の口座へとお金が移動します。為替はある銀行の口座から別の銀行の口座へとお金が移動する仕組みとみなすこともできます。

ネット通販と外国為替

さて外国為替でも、為替の基本的な仕組みは変わりません。日本にいるあなたが米国の通販サイトでしか売っていないTシャツを買うとしましょう。あなたは米国までお金を持って行けませんから、自分の銀行口座から米国のTシャツ業者の銀行口座にお金を振り込むことで取引を成立させることができます。

外為市場によって異なる通貨を持つ世界各国が取引できている

しかし1つ大きな問題があります。あなたは日本で使える円を持っていますが、米国の会社は自国で使えるドルで支払いを求めてくるからです。Tシャツを買うためには円をドルに替えなくてはなりません。

ここで登場するのが外為市場です。あなたが口座を持つ日本の銀行は外為市場を通じて円をドルに替え、米国の銀行にドルを振り込みます。そして外為市場でついた円やドルの値段を外為相場と呼ぶのです。「市場」は交換の場、「相場」は市場でついた値段と覚えておけばいいですね。

さて外為相場は日々刻々と変化しています。通販サイトで40ドルという表示が出ていたTシャツは、1ドル=110円なら日本円で4400円(=110×40)ですが、1ドル=120円になれば4800円(=120×40)に値上がりしてしまいます。(逆に1ドル=100円になればどうでしょう? 計算してみて下さい!)どうして同じ1ドルの値段が上がったり下がったりするのでしょうか。この理由を考え、1ドルが1~2カ月先にいくらになるかを予想することこそ、皆さんが参加する学生対抗円ダービーです。

為替の値動きは普段とは逆

さて円ダービーに参加する上で、基本的なことをもう少しおさらいしておきましょう。

注意が必要なのは、外為相場の上がり下がりは通常のモノの値段とは逆に表示されることです。先ほどのTシャツの例のように、1ドル=110円だった相場が、1ドル=120円になったとしましょう。このとき110円だった1ドルが120円に値上がりしているので、「10円のドル高になった」と考えます。これは裏返すと円の値段が下がったということなので、「10円の円安になった」といいます。数字は110円から120円に増えたのに、外為市場では「円が安くなった(円安)」と考えることに慣れておきましょう。

為替相場はありとあらゆる理由で変動する

円相場の動きは新聞、テレビ、インターネットなどで知ることができます。例えば日本経済新聞では、朝刊1面左下の「MARKETS」欄に前日の終値(おわりね)を掲載しているほか、「マーケット総合面」で詳しい解説を読むことができます。日経電子版では「為替・金利」のコーナーで刻々と変化する円相場の状況を追うことができます。

<2.為替相場を動かす要因>

需要と供給から考える

ここからは円やドルの値段が変化する理由を考えてみましょう。円相場を動かす要因はいろいろなものがありますが、まずは基本的な「需要と供給」という考え方から紹介します。

マスクは世界で奪い合いになり、値段が上がっている(バンコクの街頭)=小高顕撮影

モノやサービスの値段が「買いたい人の数(需要)」と「市場に出回る量(供給)」で決まるという考え方は、教科書などで目にしたことがあるかもしれません。買いたい人が増えれば値段は上がりますし、少なくなれば値段は下がります。市場に出回る量の増減によっても値段は上下します。

最近では新型コロナウイルスの感染拡大を受け、マスクの値段が上がりました。多くの人が感染を防ぐためマスクを欲したのに対し、生産が追いつかなかったためです。逆に外国人観光客などの「供給」が急減した結果、ホテルなどの宿泊料が下がる現象も起きました。

マスク11.3%上昇、宿泊料1.4%下落 23区3月物価
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57303090X20C20A3EAF000/

外為市場の需給

実は外為市場でも、通貨に対して需要と供給の原理が働いています。

まずは貿易がわかりやすい例です。例えば日本から米国への自動車の輸出が増える時に、通貨への需要はどう変化するでしょうか。

輸出する自動車が増えると為替相場はどう動くのか(横浜港)

日本の輸出企業は米国企業に自動車を売った代金を、最終的には円で受け取らなければなりません。ドルを持っていても日本国内では仕入れの代金や従業員への給料を払えないからです。つまり輸出が増えるときには、日本企業がドルを円に替える、つまり円を買う需要が膨らむことになります。このため日本の輸出が輸入を上回る(貿易黒字が増える)局面では円の需要が増え、相場は円高・ドル安に動きやすくなるのです。

投資も相場を動かします。生命保険会社などの機関投資家やヘッジファンドは、私たちから預かったお金を運用して増やすため、国境を越えて株式や債券を売買します。投資家は例えば日本の株価が下がると見れば、日本企業の株を売って米国企業の株を買おうとするでしょう。このとき貿易でモノが売り買いされるのと同じで、投資家は株式を買うドルを手に入れるために円を売ります。円の売りが増えれば円安が進む要因となるのです。

このように貿易や資産運用にかかわる企業や投資家の行動により、外為市場の需給は変化するのです。

為替が動くワケ 政策が左右、外貨運用はリスクも
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58155300W0A410C2PPD000/
個人投資家も外国為替証拠金取引(FX)を通じて外為相場を動かしている

企業や機関投資家だけでなく、個人投資家も外国為替証拠金取引(FX)を通じて外為相場を動かしています。特に日本の個人は「ミセス・ワタナベ」と呼ばれ、市場への影響力が強いことが海外でも知られています。

FX取引、3月は異例の1000兆円超 逆張りチャンスが頻発
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL16HF6_W0A410C2000000/

金利――中央銀行に注目する

金利とは誰かにお金を貸したとき、1カ月後や1年後につく利息のことですね。あなたが友達に1万円を貸すとき、1年後に1万1000円で返してもらいたいと思ったとしたら、あなたの友達への貸出金利は年利10%となります。

金利は外為相場を短期的に動かす最大の要素といえます。なぜなら金利は1カ月や1年後のお金の価値を表しているからです。たとえば米国の金利が3%で、日本の金利が1%なら、あなたは日米どちらの銀行に余分なお金を預けたいと思いますか? 銀行に払う手数料や細かい条件を抜きに考えれば、米国と答える人が普通でしょう。

外為市場でもこれと同じく、お金は金利が高い国に流れる傾向があります。日本では低金利が続いており、預金をしてもほとんど利息は付きません。これに対し、外国の通貨で外貨預金をすれば、もっと高い金利がつくことが少なくありません。日本円でお金を預けるより外貨で預金する方が得だと考える個人や企業が増えれば、円が売られてその国の通貨が買われる、つまり円安となるのです。

米FRBの本部(ワシントン)=ロイター

各国の金利が決まる上で重要な役割を果たしているのが中央銀行の金融政策です。日本の日銀や米国の米連邦準備理事会(FRB)は各国の市場に出回るお金の量を増減させることで金利の水準に影響を及ぼしています。お金の量を増やす金融政策を「緩和」といい、減らす政策を「引き締め」と呼んでいます。中銀が金融緩和をするとその国のお金の量は増え、お金を借りやすくなるので金利は下がることになります。

たとえば日銀が金融緩和をしたとすれば、日本の金利は下がります。対してFRBの金融政策が変わらなければ、日本の金利が下がった分、米国への投資が有利になりますね。したがって日銀の金融緩和は円を売ってドルを買う取引を増やし、円安につながる傾向があります。

追加緩和観測で円が一時107円台 決定会合前倒しで
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56818440W0A310C2MM0000/

物価――インフレは円安要因に

物価はモノやサービスの価格全体のことで、消費者物価指数などで測ります。一般に物価が上がる「インフレーション(インフレ)」が起きるとその国の通貨は下落し、デフレが進む局面では通貨価値は上昇します。なぜでしょう。例えば、モノの価格が高くなるということは、同じ100円で買えるモノの量が減ることを意味します。つまり裏返すと、インフレで物価が上がっているときは、お金の「モノを買う力(購買力)=お金の価値」が下がっているのです。デフレのときは「お金の価値」が上がっているので円高になりやすいと言えます。

購買力平価の指標としてマクドナルドのビッグマックが用いられることも

さらに物価から為替相場を占う場合、「各国の物価水準をそろえて比較する」という発展した考え方もあります。日本と米国でモノの値段は異なりますが、日本と米国で同じくらいの量や品質のモノを買える為替レートを仮定するという方法です。そして仮定した為替レートに比べ、現在の円相場が円高ならば円安に動くと考え、逆に想定レートより円安ならば円高に動くと考えます。この仮定レートは長期的な為替相場の水準を決める有力な指標として「購買力平価」と呼ばれています。大学生以上のチームは一度は調べてみるのがいいでしょう。

購買力とは 賃金やハンバーガー…物差し多様
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO53150460Q9A211C1EA2000/

<3.いかに予想するか>

ニュースの先を読む

さてここからは実際に円相場を予想する方法を解説していきましょう。予想のやり方は大きく分けて、「ニュースやイベントから予想する」「数字やデータをもとに予想を立てる」という2つの方法があります。

まずはニュースやイベントに注目するやり方です。円ダービーでは1~2カ月後の為替相場を予想するわけですから、ただ日々のニュースを拾っていても意味がありません。大切なのは「為替相場を動かすようなニュース」を集め、どのように動くかについて仮説を立てることです。

たとえば各国の中銀が次にどう動くかを考えるのは為替相場を予想する上でとても大切です。日銀もFRBも年に8回、重要な政策をきめるための会合を予定しています。日銀の場合は金融政策決定会合、FRBの場合は米連邦公開市場委員会(FOMC)と呼んでいます。会合が近づいてくるとその場で何が決まるかについて多くのニュースが出てくるようになります。まずはダービーの予想期間に会合が予定されているかどうか、日銀やFRBのウェブサイトで確認してみるのがいいでしょう。

日銀の金融政策決定会合=共同

新型コロナウイルスの感染拡大による市場の混乱を受け、中銀は予定していなかった緊急会合も開いています。こうした会合も為替相場にとって大きな意味を持ちます。金融政策に関わる記事は少し難しいですが、わからない言葉を調べたりしているうちに経済への知識は飛躍的に増すことでしょう。

米欧中銀、信用収縮回復へ 金融市場が逼迫
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO57049020Q0A320C2MM8000/

データで先を読む

次に為替相場を予想するために数字(データ)を使うというやり方があります。

統計やデータを役立てるのです。先に為替相場は政治経済のあらゆる要素から影響を受けると紹介しましたが、金利にしても物価にしても株価にしても、経済指標の動きはデータとして官庁や日銀などのウェブサイトで公表されています。

経済産業省のホームページにはビッグデータやAIを活用した経済指標がある

そうしたデータを予想に用いる第一歩は、為替相場と「似た動き」をする指標を見つけることです。似た動きをするということはどういうことでしょう。まずわかりやすいのは、為替相場と同じ時期に同じような方向に動いている指標です。日経平均株価や実質金利といった指標がこれに当てはまります。同じ時期に為替相場と全く逆の動きをしている指標にも注意が必要です。為替相場と何度も反対の動きを繰り返している指標を見つければ、その指標の動きも為替相場を読み解く上で参考になるからです。

こうした「似た動き」に注目する考え方は、統計学を勉強したことがある人ならば「相関」という言葉でおなじみでしょう。過去の学生対抗円ダービーでは、ユニーク賞の受賞者の多くが相関を見つける方法を採用しました。受賞者の中には米国の防衛費や東京ディズニーランドの来園者数など、プロの審査員も驚くような指標に注目した例もあります。皆さんも是非、独自のデータを予想に生かしてみて下さい。

なお主に大学生以上の参加者を対象に、相関を見る上での注意点を1つ挙げておきます。それは単に為替相場と同じような動きをしている指標を見つけるだけでなく、さらに突っ込んで「1カ月後の為替相場」への影響を調べてみるということです。具体的には統計学で習う回帰分析を用いる際は、1カ月先の為替相場との相性を確かめてみるべきでしょう。ユニーク賞でハイレベルな競争となった際には、こうした細かな点も審査の対象となります。

基本的なデータを見つける際には、日経新聞・電子版の「ビジュアル・データ」のコーナーが参考になります。金利や物価について最新のデータが更新されているので、1度のぞいてみるのもいいでしょう。

経済指標ダッシュボード
https://vdata.nikkei.com/economicdashboard/macro/

予想の仕方に「正解」はない

外国為替の予想は奥深い世界で、プロの間でもいまだに完成された方法はありません。みんな工夫を重ねながら、様々な方法を試しているのです。みなさんも、ぜひ独自の予想方法を編み出してください。

このニュースは為替にどのような影響を与えるのかを考えてみる

また、どんなニュースや指標に注目すればいいのか、それらがどう動くのか、知恵を絞って考えてみてください。中高生は、社会科だけでなく数学などで習った知識が活用できるかもしれません。大学生は経済学のほか、工学なども役に立つかもしれません。たとえ予想が的中しなくても、為替の動きを通して世界の動きが見えてくるはずです。

▼第20回円・ドルダービー 全国学生対抗戦への応募はこちらをクリックしてください。1回戦締め切りは5月末。中学校から大学までの学生が対象で、同じ学校に所属する3人以上でチームを組み、指導教員がつくのが条件。1人の教員が複数チームを担当してもかまいません。3人に満たない場合や教員がいない場合は失格。参加時の応募番号をなくしても失格になることがあります。予想方法や予想の根拠は、別途、電子メールで添付ファイルとして送ってください。電子メール=yendb@nex.nikkei.co.jp くわしい募集要項は関連記事「第20回 円・ドルダービー 全国学生対抗戦」をご覧ください。

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