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コロナで売れた 日本はマスク、中国はなぜゴーグル?

NIKKEI STYLE

日経クロストレンド

新型コロナウイルスの流行により各国で外出自粛・禁止が進んだ。そうした物理的な制限は、ネット通販の利用を加速させた。そこで電子商取引(EC)データ事業のNint(東京・新宿)のデータを基に2020年2月に日本と中国で特に売り上げが伸びたカテゴリーを分析すると、日中の消費行動の違いが明らかになった。

下表は、20年2月に中国の大手ECモール「天猫(Tmall)」で、大きく売り上げが増加した商品カテゴリーの一覧だ。ウイルス対策関連商品はいずれも驚異的な伸びを見せている。マスク(前年同月比で183倍)やハンドソープ(同37倍)などが売れているのは日本と同様だ。

加えて、防護服(同10倍)やゴーグル(同97倍)など、口だけでなく目や体全体を覆う対策商品が売れているのが中国の特徴だろう。「中国・武漢の医師が自身の感染経路を振り返り、目から感染した可能性があるとネットを通じて発信したことで、急速にゴーグルが売れた」とNintの吉野順子社長は言う。

中国はもともと、微小粒子状物質「PM2.5」の濃度が高く、その対策としてゴーグルなどが売れる傾向にはあった。そこに新型コロナウイルスの流行が加わり、より体を守ろうという意識が強く働き、防護服なども売れたようだ。

目からの感染の可能性は日本でも消費に影響が出始めている。日本眼科学会と日本眼科医会は20年4月1日、「新型コロナウイルス感染症の目に関する情報について」という文書を発表。目の結膜から新型コロナウイルスに感染する可能性があると注意を促した。そうした影響から「国内でも徐々に業務用のゴーグルが売れ始めている」(吉野氏)と言う。

併せて、殺菌グッズが伸びているのも中国の特徴だ。殺菌灯は前年同月比で売り上げが15倍に増加。消毒ボックスは同10倍以上売れた。特に売れたのが、フィリップスの殺菌灯だ。紫外線の殺菌作用を用いた商品で、新型コロナウイルスに対しても効果が期待されて売れた。「中国では家庭によっては全部屋に殺菌灯を設置している」(吉野氏)ほど。Nintのデータ上では2万3000個以上が売れた。集計期間が1月17日~2月13日となっているのは、例年売り上げが増加傾向にある旧正月前後を対象としたため。

続いて、日本で20年2月に大きく売り上げが伸びた商品カテゴリーの一覧だ。言わずもがなだが、ウイルス対策商品はいずれも大きく売り上げを伸ばしている。マスクの売り上げは「Amazon.co.jp」で前年同月比11倍、「楽天市場」でも8倍に増えた。

意外な商品では、パルスオキシメーターの売り上げが前年同月比で約7倍に増加した。パルスオキシメーターはクリップのような形状の機器に手の指を挟むだけで、脈拍や血中の酸素飽和度を測定して呼吸の状態を把握できる。自宅で手軽に検査できる機器として、売り上げが増加した。Amazon.co.jpでは売り上げが同3.6倍、楽天市場では同6.8倍に増えている。

日本ならではの特徴としては手芸用品が売れている。例えば、綿製のガーゼ生地は売り上げが前年同月比で4.2倍に増加した。市販のマスクが手に入りづらい状況から、自作の需要が高まり、材料の売り上げ増につながったようだ。「綿ダブルガーゼ生地」は楽天市場で前年同月比4.1倍の売り上げとなった。手芸用品はAmazon.co.jp、楽天市場ともに増加している。

「楽天市場」では防災グッズが好調

売れ行き商品がプラットフォームとしての特徴を表す傾向もある。非常食(前年同月比で2.9倍)、保存水(同2.4倍)といった防災グッズが楽天市場で売り上げが大きく増えた。外出自粛が日本でも広がる中、非常事態に備えた備蓄品が売れている。ところが、防災グッズはAmazon.co.jpでは大きく増えていない。これは、「楽天市場の方が防災グッズの商品販売数が豊富なためだ」と吉野氏は説明する。

一方、Amazon.co.jpで大きく売り上げが伸びたのがパソコン用マイクだ。売り上げは前年同月比で約2倍に増えている。日本でも在宅勤務が推奨されている。ウェブで会議などをするケースが増えているだろう。そのときにお互いの声が聞き取りやすいように、高性能なパソコン用マイク・スピーカーの需要が高まった。ヤマハの「ユニファイドコミュニケーションマイクスピーカーシステム」は同1.3倍に増加した。「家電製品に強いAmazon.co.jpの特徴と言えるだろう」(吉野氏)。

Nintは日本と中国のECモールのデータをロボットで回遊して、販売価格やランキング、クチコミなどを収集。商品別の販売額の予測モデルで解析して、データとして企業に提供する。中国では天猫(Tmall)のほか、「淘宝(タオバオ)」「京東商城(JD.com)」といった主に10の中国の有力ECモールのページのデータを収集。国内では楽天市場やAmazon.co.jpのデータを集めている。1日にクローリングするページ数は最大2億に上る。

(日経クロストレンド 中村勇介)

[日経クロストレンド 2020年4月15日の記事を再構成]

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